国税庁が仮想通貨に関する税務上の取扱いについてFAQ(Ver3)を公表

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Author: Kensaku Kimura
投稿日: 2019-12-19
更新日: 2023-02-04

2018年のFAQに比べて内容がより広範囲に、法人税関係が登場

2019年12月20日に国税庁は「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。

FAQ形式で仮想通貨の税金計算について国税庁が公式に見解を示すことは2017年に始まって以来、今年で三回目です。

そして今回のVersion3では個人的に重大と思う変更が2つありました。

その2つというのは:

  1. 個人について原則的な原価計算方法が移動平均法から総平均法に変更された(関連するFAQ1-3)
  2. 法人について期末に保有する仮想通貨と仮想通貨の証拠金取引の未決済ポジションの未実現損益が課税対象になった(関連するFAQ22と25)

今回の記事では2018年11月20日に公表されたVersion2のFAQと今回のVersion3とで変更されたところを見ていこうと思います。

一つ一つのFAQの内容を見ていく前に目次で大きく変わったところが1つあります。

  1. FAQの項目が増えた

 

表紙記載の当局の関与部署はVersion2から変わらず

Version2ではVersion1のときと比べてFAQの表紙に記載されている国税庁の部署が大幅に増加しました。

今年のVersion3では昨年と比較して変更はありませんでした。

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題名の変更は今年はなし

Version2ではFAQの対象が個人の所得税から広がったことを受けてFAQの題名も変わりました。

今年は題名の変更はありませんでした。

なお、資金決済法の改正があり「仮想通貨」の名称が「暗号資産」に変わりました。

来年のFAQではそれを反映した変更がありそうです。

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FAQの項目が増えた

Version3で特に注目すべきは法人税関係の論点が独立の分野として追加され、論点が追加になった点です。

法人税関係の論点が6個追加され、それ以外にも新たな論点が追加された結果、FAQの項目はVersion2の21項目からVersion3では32項目に増えています。

Version3で分野として登場するのは次の7つです:

  1. 所得税・法人税共通関係
  2. 所得税関係
  3. 法人税関係
  4. 相続税・贈与税関係
  5. 源泉所得税関係
  6. 消費税関係
  7. 法定調書関係

以上を踏まえてVersion3のFAQで取り上げられている項目を紹介します:

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このFAQが(情報)となっているのはこの文書が法律や法令ではなく、あくまでも国税庁の見解だからです。

法律ではないものの国税局はこの文書の内容をもとに税金計算の妥当性を検証するわけです。

実務ではこのFAQに基づいて様々な会計、税務処理がなされるはずです。

この点はVer1から変わらずです。

この記事ではFAQの内容を一つ一つ見ていくとともに、Version2からの変更点を中心に気になる点があればコメントを入れていきます。

コメントは青文字で付し、それ以外はFAQの原文となります。

なお、オフィシャルの文書は下記のリンクで入手できます:

仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和元年12月20日)(PDF/966KB)

 

所得税・法人税共通関係

1 仮想通貨を売却した場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)
4月2日 2,000,000円で4BTCを購入した。

4月20日 0.2BTCを110,000円で売却した。

(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。

110,000円 [譲渡価額] – ( (2,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの取得価額(注1)] × 0.2BTC [売却した数量] ) [譲渡原価] = 10,000円 [所得金額](注2)

(注1) 総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。

(注2)その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その仮想通貨の売却価額と売却した仮想通貨の取得価額との差額となります。

 

【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6

 

コメント:

仮想通貨をFiat(法定通貨)に換金した際の益の計算方法に関しては特にコメントはありません。(Version1,2の時と同じコメントです)

が、とても重大な変更がVersion 3でありました。

それは個人について取得原価の原則的な評価方法が変更になった点です。

Version2までは原則法が移動平均法(継続適用を条件に総平均法も可能)だったのが、Version3からは原則法が総平均法とされ、移動平均法を使用するためには届け出が必要になりました。

Version2までは「移動平均法が相当」としていたのにも関わらずです。

理論的な根拠よりも政策面が優先されるいい例だと思います。

以前から申し上げているように、特別なケースを除いて、一般的には移動平均法の方が有利になります。

取得原価を計算する際に端数の四捨五入が認められているからです。

詳しくは「11 仮想通貨の評価方法の届出」でふれます。

Version 2 で行ったBTC→ビットコインの変更をまたBTC表記に戻している点は謎です。

根拠法令等もちょこちょこ変わっています。

Version1では取引の際の支払手数料を取得原価に含めていました。

しかし、Version2では「売買手数料については勘案しない」と変更し、Version3でもそれを踏襲しています。

仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「4 仮想通貨の取得価額」で取り上げられています。

 

2 仮想通貨で商品を購入した場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)

4月2日 2,000,000円で4BTCを購入した。

10月5日 253,000円(消費税等込)の商品を購入する際の決済に0.3BTCを支払った。なお、取引時における交換レートは1BTC=850,000円であった。

(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。

253,000円 [商品価額(=ビットコインの譲渡価額)] – ( (2,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの価額](注1) × 0.3BTC [支払った数量] ) [譲渡原価] = 103,000円(注2)[所得金額]

(注)
(1) 総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。

(2) その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

保有する仮想通貨で商品を購入した場合、保有する仮想通貨を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その仮想通貨の譲渡価額とその仮想通貨の譲渡原価等との差額となります。

 

【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6

 

コメント:

益の計算方法に関しては特にコメントはありません。

が、「1 仮想通貨を売却した場合」と同様、売買手数料については勘案していないとVersion1からVersion2に更新された段階で変更されています。

Version1の例では支払手数料込の数量が例に使われています。

また、取得原価の原則的計算方法が個人に関しては移動平均法から総平均法に変わっている点も「1 仮想通貨を売却した場合」と同様です。

以下のコメントはVersion1と2の時のものを転記しています。

しかし、ビットコインを日常的に使う場合、いちいち支払い時に損益計算をするのは現実的ではありません。

外貨であっても同じ取扱になりますが、海外旅行で使った外貨の為替差益を都度計算して申告している人は少ないでしょう。

一定金額以下であれば所得計算から除外できるようなde minimisルールが必要と考えます。

 

3 仮想通貨同士の交換を行った場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)
4月2日 2,000,000円で4BTCを購入した。

11月2日 20XRPを購入する際の決済に1BTCを支払った。

なお、取引時における交換レートは1XRP=30,000円であった。

(注)
1上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

2 上記取引は一時的に必要な仮想通貨を取得した場合には該当しないケースである。

 

(30,000円 × 10XRP) [リップルの購入価額(=ビットコインの譲渡価額)] – ( (2,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの価額(注1)] × 1BTC [支払った数量] ) [譲渡原価] = 100,000円(注 2) [所得金額]

(注)
(1) 総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。

(1) その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

保有する仮想通貨を他の仮想通貨Bと交換した場合、仮想通貨Aで仮想通貨Bを購入したことになりますので、「2 仮想通貨で商品を購入した場合」と同様に、仮想通貨Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があります。

 

【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6

 

コメント:

ここでも売買手数料については「勘案しない」とVersion1から2への更新時に変更されています。

仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「4 仮想通貨の取得価額」で取り上げられています。

また、取得原価の原則的計算方法が個人に関しては移動平均法から総平均法に変わっている点も「1 仮想通貨を売却した場合」と同様です。

以下のコメントはVersion1と2の時のものを転記しました。

Crypto-to-cryptoの交換に関する益に計算方法については特にコメントはありません。

世界でもCrypto-to-cryptoの交換はTaxable eventとして捉えている国がほとんどだと思います。

しかし、次の2点からもう少し工夫があればよかったと思ってしまいます。

まず、Crypto-to-cryptoの交換の都度、損益計算を求めるのは多くの場合に非現実的もしくは困難である点です。

上場株式やFXの場合だと取引が一つの業者で完結します。

売買損益の計算は簡単でほとんどの場合、業者の管理画面で簡単に確認できます。

複数の口座を使用している場合も基本的にはそれぞれの業者の損益を合計することで全体の損益を確定することができます。

しかし仮想通貨の場合は取引所間で仮想通貨の送信を自由にできます。

ある取引所で購入した仮想通貨を他の取引所に送信した場合、送信先の取引所はその仮想通貨の取得原価を知りません。

取得原価の情報がないため、損益計算が当然できません。

したがって、複数の取引所を使っている場合は単純に取引所ごとの損益データを合算しても全体の損益を確定することはできません。

取引が少ない場合や使用している取引所が少ない場合はスプレッドシートを使って頑張って損益を計算できます。

取引数や使用する取引所が多くなると損益計算はすぐに非現実的あるいは困難になります。

2点目の理由はもう少し概念的です。

ある資産からある資産に交換する場合、一度円を経由すると考えます。

そこで交換する資産の間に価格差があると損益が発生します。

上場株の取引で考えると分かりやすいです。

保有しているApple株を売却し、Google株を購入したとします。

Apple株からGoogle株には直接交換できず、一度Apple株を売却してお金を受け取り(ここで損益を認識)、そのお金でGoogle株を買ったと考えます。

しかし、仮想通貨の場合は直接 BTCとETHを交換できます。

一旦損益を確定させるという意志は多くの場合ユーザーにはありません。

これは基本的な場合ですが、仮想通貨は金融商品や法定通貨と違い、保有者に何かしらの権利を与えるものではありません。

言ってしまえば仮想通貨を保有するということはPrivate Keyというランダムな文字列を保有することです。

仮想通貨と仮想通貨を交換するということはある文字列とある文字列を交換しているにすぎません。

ミカンを持ってる人とリンゴを持ってる人が持ってる果物を交換するイメージに近いです。

その場合も税法を厳密に適用すれば課税対象のなるのかもしれませんが、起こっている事象を技術的に考えると個人的にはすっきりしない部分が残ります。

実務的な側面、概念的な側面、そして税金の補足、納税者への負担の観点からも、Fiatに交換した時に課税対象とするのが適当ではないかと思います。

 

4 仮想通貨の取得価額

国内の仮想通貨交換業者から、仮想通貨を購入しましたが、その際に手数料を支払い ました。この場合の購入した仮想通貨の取得価額はどうなりますか。

(例)
10月2日 2BTCを2,000,000円で購入した。購入時に手数料550円(消費税等込)を支払った。

 

上記(例)の場合の仮想通貨の取得価額は、購入代価2,000,000円に手数料550円を加算した2,000,550円になります。

購入した仮想通貨の取得価額は、その取得方法により、それぞれ次のとおりとされています。

なお、取得原価は、購入手数料など仮想通貨の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を含む金額となります。

  1. 対価を支払って取得(購入)した場合:購入時に支払った対価の額
  2. 贈与又は遺贈により取得した場合(次の③の場合を除く): 贈与又は遺贈の時の価額(時価)
  3. 死因贈与、相続又は包括(特定)遺贈により取得した場合:被相続人の死亡の時に、その被相続人が仮想通貨について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する仮想通貨の評価額)
  4. 上記以外の場合:その取得時点の価額(時価)

(注) 上記以外の場合とは、例えば、仮想通貨同士の交換、マイニング(採掘)、分裂(分岐)などにより仮想通貨を取得した場合をいい、その場合の取得価額は、取得時点の価額(時価)になります。

なお、分岐により仮想通貨を取得した場合の取得価額は0円です(問5参照)。

 

【参考】消費税の課税事業者(税抜経理方式を適用)である法人が、上記(例)の取引を行う場合の購入した仮想通貨の取得価額

上記(例)の場合の仮想通貨の取得価額は2,000,500円(注1,2)になります。

(注)
1 消費税法では、仮想通貨などの支払手段等の譲渡は非課税とされていますが、仮想通貨交換業者に対して取引の仲介料として支払う手数料は、仲介に係る役務の提供の対価に該当し、消費税の課税対象になります。

2 本件取引を行う者が消費税法上の課税事業者に該当し、かつ、税抜経理方式を適用している場合には、手数料に含まれる消費税等の額(50円=550円×10/110)と課税取引の対価の額(500円=550円-50円)を区分し、課税取引の対価の額を仮想通貨の支払対価の額に加算した金額(2,000,500円= 2,000,000円+500円)が購入した仮想通貨の取得価額となります。

 

【関係法令等】
所法36、37 、40
所令119の6
法法61
法令118の5
消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて(平成元年3月1日付直法2-1)1~3

 

コメント:

Version1では移動平均法と総平均法による取得価額の計算例に関する情報が提供されていました。

Version2では仮想通貨を取得した際の手数料の取扱いに論点が変わりました。

仮想通貨の取得の際に発生した手数料を取得価額に含める取扱いはVersion1から変わっていません。

情報としてVersion 2で新たに加わったのは消費税の処理についてです。

Version 3では消費税の8%から10%の増加が例題に反映されているくらいで大きな変更はありません。

手数料から消費税部分を抜き出して、取得価額は税抜の金額で計算することになりますが、使用する取引所のデータが綺麗でないとかなり複雑になりそうです。

実際に取得原価の計算をしていくと手数料の処理は複雑だということにすぐに気づきます。

手数料は取引所にとって様々な形式で取引データに表示されます:

(例)

  • 注文量とは別に発生するパターン
  • 注文量から控除されるパターン
  • 手数料が基軸通貨で発生するパターン
  • 取引通貨で発生するパターン
  • マイナス手数料(リベート)で発生するパターン
  • 取引所のトークンでリワードとして発生するパターン

これを一つ一つ整理してロジックを組んで計算するのはとても大変です。

 

5 仮想通貨の分裂(分岐)により仮想通貨を取得した場合

仮想通貨の分裂(分岐)に伴い、新たに誕生した仮想通貨を取得しましたが、この取得により、所得税又は法人税の課税対象となる所得は生じますか。

 

仮想通貨の分裂(分岐)により新たに誕生した仮想通貨を取得した場合、その時点では課税対象となる所得は生じません。

所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。

しかしながら、ご質問の仮想通貨の分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨については、分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。

したがって、その取得時点では所得が生じず、その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。

なお、その場合の取得価額は0円となります。

​​法人税についても同様に、分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨の取得価額は0円となり、分裂(分岐)に伴い新たな仮想通貨を取得したことによりその事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入すべき収益の額はないものと考えられます。

【関係法令等】
所法 36
法法 22

 

コメント:

Version2で法人税に関する記載が追加されたものの、内容自体はVersion1と同じです。

Version3でも仮想通貨を受け取った時点では課税所得にならない(将来譲渡をした時にはなるかもしれない)ことが明確化されただけで大きな変更はありません。

以下のコメントはVersion1と2の時のものを転記したものです。

FAQでは、分岐時点では相場が存在しておらず、価値を有していない点をもって、取得価額は0円とされ、結果的に取得時点では所得が生じていないとしています。

しかし、その前提として資産を取得した場合は、その取得時点における時価を基に所得金額を計算するとしています。

この前提を仮想通貨にそのまま当てはめてしまうのは危険です。

ブロックチェーンの分岐はその仕組み上、それなりの頻度で起きます。

ブロックが短時間で連続して採掘された場合などです。

上記の例では、最終的にネットワークのノードの多数が正当と認めたチェーンが存続し、分岐したチェーンは破棄されます。

したがって基本的には新しいコインが発生し、価値を持つというケースには発展しません。

しかし、ブロックチェーンの多くはオープンソースで誰でも自由に分岐できます。

納税者の知らないところで分岐が発生し、知らずに価値を持つ仮想通貨を取得するケースなどが考えられます。

また、新しい仮想通貨の発生時点でその仮想通貨自体の取引相場が存在していなかったとしても、その仮想通貨のデリバティブ市場で価格が形成されているケースも考えられます。

これらの問題点もFAQ3に対するコメントで指摘したとおり、Fiatへ交換したタイミングで課税対象とすることで所得計算の簡素化、納税者の保護につながると考えます。

 

6 仮想通貨をマイニングにより取得した場合

仮想通貨をマイニングにより取得した場合、その所得は所得税又は法人税の課税対象となりますか。

 

仮想通貨をマイニングにより取得した場合、その所得は所得税又は法人税の課税対象となります。

いわゆる「マイニング」(採掘)等により仮想通貨を取得した場合、その取得した仮想通貨の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に参入され、マイニングに要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に参入されることになります。

 

【関係法令等】
所法27、35、36、37
法法22、22の2

 

コメント:

Version2では法人税の取扱いが追加されただけでVersion1から大きな変更はありませんでした。

Version 3 でも大きな変更はありません。

以下のコメントはVersion1と2の時のものを転記したものです。

一見妥当に見える結論ですが、少し考えると違和感があります。

マイニングというサービスを提供した対価としてビットコイン(仮想通貨)を受け取っている、そのように解釈すると受け取ったビットコインは所得になります。

しかし、マイニング自体はサービスではありませんし、サービスの提供先となり得る人や会社のような組織も存在しません。

ビットコインのマイニングとはコンピューターを使ってランダムな数字を生成し続けることを言います。

これがなぜマイニング(採掘)と言われるかというと、ゴールドのマイニングとの類似性があり、アナロジーとして分かりやすいからです。

ゴールドの採掘会社も石油の採掘会社もゴールドや石油の採掘自体を事業としているわけではありません。

採掘してそれを売却することを事業としているわけです。

課税所得も採掘時ではなく、売却時に認識します。

ビットコインのマイニングをコモディティのマイニングと同様に考えるのであれば、同じように採掘時ではなく、売却時に課税所得とするのが妥当と考えました。

 

所得税関係

7 仮想通貨取引による所得の総収入金額の収入すべき時期

仮想通貨取引を行ったことにより生じた利益について、いつの年分の収入とすべきですか。

 

原則として売却等をした仮想通貨の引渡しがあった日の属する年分となります。

ただし、選択により、その仮想通貨の売却等に関する契約をした日の属する年分とすることもできます。

仮想通貨取引により生じた損益については、原則として雑所得に区分されますが(問8参照)、雑所得に区分される所得の総収入金額の収入すべき時期は、その収入の態様に応じて、他の所得の総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日の属する年分とされています。

したがって、仮想通貨取引により生じた所得の総収入金額の収入すべき時期は、その収入の態様を踏まえ、資産の譲渡による所得の収入すべき時期に準じて判定します。

 

【関係法令】
所法35、36
所基通達36-12、36-14

 

コメント:

Version 3 で新たに登場した質問です。

特にコメントはありません。

 

8 仮想通貨の所得区分

仮想通貨取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。

 

仮想通貨取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。

仮想通貨取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、

その仮想通貨取引自体が事業と認められる場合(注1)

その仮想通貨取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(注2) を除き、雑所得に区分されます。

(注)
1 「仮想通貨取引自体が事業と認められる場合」とは、例えば、仮想通貨取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合などが該当し、この場合は事業所得に区分されます。

2 「仮想通貨取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」とは、例えば、事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として仮想通貨を使用した場合が該当します。

【関係法令等】
所法27、35、36

 

コメント:

Version2では書きぶりがVersion1から変わっているものの、内容はほぼ変わっていませんでした。

Version 3でもほとんど変更はありませんでした。

以下のコメントはVersion1と2の時のものを転記したものです。

「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」雑所得とされているので、客観的に立証できるのであれば、他の所得(事業所得や雑所得)として申告できるところがポイントだと思います。

一方で「原則」というワードは実務上はハードルになるはずです。

 

9 仮想通貨の必要経費

仮想通貨の売却による所得を申告する場合、どのような支出が必要経費となりますか。

 

仮想通貨の売却による所得の計算上、必要経費となるものには、例えば次の費用があります。

  • その仮想通貨の譲渡原価
  • 売却の際に支払った手数料

このほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。

仮想通貨の売却による所得は、原則として雑所得に区分されますので、その所得金額は、総収入金額から必要経費を控除することにより算出します(問8参照)。

この必要経費に算入できる金額は、①仮想通貨の譲渡原価その他仮想通貨の売却等に際し直接要した費用の額及び②その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額です。

なお、必要経費については、次の事項に注意してください。

① パソコンなど、使用可能期間が1年以上で、かつ、一定金額を超える資産については、その年に一括して必要経費に計上するのではなく、使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費(こうした費用を「減価償却費」といいます。)とする必要があります。

② 個人の業務には、一つの支出が家事上と業務上の両方に関わりがある費用(こうした費用を「家事関連費」といいます。)については、取引の記録に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合に限り、その区分した金額を必要経費に算入することができます。

 

【関係法令等】
所法37、45 、48の2
所令 96

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

Version3では特に大きな変更はありませんでした。

どんな費用が必要経費に算入できるかについては判断を伴います。

とりあえず領収書はとっておいて税理士に相談するのがいいと思います。

 

10 仮想通貨の譲渡原価

次のとおり、継続して同じ種類の仮想通貨を売買しました。

この場合の仮想通貨の売却に 関する譲渡原価について教えてください。

(例) 4月1日に初めてビットコインを購入して以降、内訳のとおり、数度にわたり購入と売却を行い、1年間の売却額(数量)の総額は、5,295,000円(5BTC)、購入額(数量)の総額は、4,037,800円(6.5 BTC)でした。

(内訳)
・ 4月1日 4BTCを1,845,000円で購入(保有数量4BTC)
・ 6月20日 2BTCを1,650,000円で購入(保有数量6BTC)
・ 7月10日 2BTCを2,400,000円で売却(保有数量4BTC)
・ 9月15日 0.5 BTC を 542,800 円で購入(保有数量4.5BTC)
・ 11月30日 3BTCを2,895,000円で売却(保有数量1.5BTC)

(注)上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

上記(例)の場合、総平均法においては3,106,000円、移動平均法においては3,080,200円 が、譲渡原価となります。

複数の仮想通貨を継続的に売買する方がその売却等に係る所得金額を計算する際には、譲渡原価の計算を行う必要があります。

譲渡原価は、仮想通貨の種類(名称:ビットコインなど)ごとに、「1:前年から繰り越した年初(1月1日)時点で保有する仮想通貨の評価額」と「2:その年中に取得した仮想通貨の取得価額の総額」との合計額から、「3:年末(12月31日)時点で保有する仮想通貨の評価額」を差し引いて計算します。

この「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」は、その保有する仮想通貨の「年末時点で の1単位当たりの取得価額」に「年末時点で保有する数量」を乗じて求めますが、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。

上記(例)の場合の譲渡原価は、その評価方法の別に次のとおりとなります。

総平均法: 同じ種類の仮想通貨について、年初時点で保有する仮想通貨の評価額とその年中に取得した仮想通貨の取得価額との総額との合計額をこれらの仮想通貨の総量で除して計算した価額を「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする方法をいいます。

移動平均法: 同じ種類の仮想通貨について、仮想通貨を取得する都度、その取得時点において保有している仮想通貨の簿価の総額をその時点で保有している仮想通貨の数量で除して計算した価額を「取得時点の平均単価」とし、その年12月31日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」を「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする方法をいいます。

 

総平均法を用いた場合

以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は621,200円となり、「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」は931,800円になります。

したがって、譲渡原価は、3,106,000円になります(4,037,800円-931,800円)。

<計算式>
(1) 1年間に取得した同一種類(名称)の仮想通貨の取得価額の総額 ÷
(2) 1年間に取得した同一種類(名称)の仮想通貨の数量 =
(3) 年末時点での1単位当たりの取得価額

(注)前年から繰り越した仮想通貨がある場合には、1と2にそれぞれにその価額、数量を加算します。
(1) 1年間に取得したビットコインの取得価額の総額 4,037,800円
(2) 1年間に取得したビットコインの数量 6.5BTC
(3) 年末時点での1単位当たりの取得価額(1÷2) 621,200円
(4) 年末時点で保有するビットコインの評価額(3×1.5BTC) 931,800円

 

移動平均法を用いた場合

以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は 638,400円となり、「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」は 957,600円になります。

したがって、譲渡原価は、3,080,200円になります(4,037,800円-957,600円)。

<計算式>

種類(名称)の異なる仮想通貨を取得する都度、次の計算式により平均単価の見直しを行います。

(1) 取得時点で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の簿価の総額 ÷
(2) 取得時点で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の数量 =
(3) 取得時点の平均単価

(注)
1 前年から繰り越した仮想通貨がある場合には、1と2にそれぞれにその価額、数量を加算します。
2 その年12月31日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」が「年末時点での1単位当たりの取得価額」となります。

(1) 取得時点の平均単価(4月1日)

(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 1,845,000円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 4BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 461,250円

(2) 取得時点の平均単価(6月20日)

(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 3,495,000円
(461,250円 × 4BTC) [取得の時に保有している仮想通貨の簿価] + 1,650,000円 [6月 20 日購入額] = 3,495,000円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 6BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 582,500円

(3) 取得時点の平均単価(9月15日)

(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 2,872,800円
(582,500円 × 4BTC) [取得の時に保有している仮想通貨の簿価] + 542,800円 [9月15日購入額] = 2,872,800円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 4.5BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 638,400円

(4) 年末時点での1単位当たりの取得価額 638,400円
=9月15日取得時点の平均単価 638,400円

(5) 年末時点で保有するビットコインの評価額
638,400円 (年末時点での1単位当たりの取得価額) × 1.5BTC (年末時点で保有する数量) =
957,600円

※ 仮想通貨の譲渡原価を含め、その売却等に係る所得金額の計算については、仮想通貨交 換業者から送付される「年間取引報告書」を基に「仮想通貨の計算書(総平均法用・移動平均法用)」を作成することで、簡便に行うことができます(問14参照)。

「仮想通貨の計算書(総平均法用・移動平均法用)」は、国税庁ホームページに掲載され ています。

Link

 

【関係法令等】
所法48の2
所令119の2

 

コメント:

これはVersion3で新規に登場した項目です。

移動平均法と総平均法の計算方法を説明しているだけなので特にコメントはありません。

 

11 仮想通貨の評価方法の届出

初めて仮想通貨を取得しましたが、その仮想通貨の評価方法を選定する必要があると聞きました。

選定の具体的な手続を教えてください。

 

初めて仮想通貨を取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の提出が必要です。

「10 仮想通貨の譲渡原価」のとおり、仮想通貨の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末(12月31日)時点で保有する仮想通貨の評価額については、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。

これらの評価方法は、仮想通貨の種類(名称)ごとに選定することとされており、
(1) 初めて仮想通貨を取得した場合
(2) 異なる種類の仮想通貨を取得した場合
には、その取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、その選定した評価方法など所定の事項を記載した届出書(所得税の仮想通貨の評価方法の届出書)を提出する必要があります。

(注)
1 この取扱いは、令和元年の所得税法等の改正により措置されたものですが、その施行日(平成31年4月1日)の前から仮想通貨を保有している方についても、令和元年分の確定申告期限(令和2年3月16日)までに、「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の提出が必要となります。
2 評価方法の届出書の提出がない場合には、評価方法は「総平均法」になります。
3 「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の記載例は、次ページに掲載しています。

 

【関係法令等】
所法48の2
所令 119の2、119の3、119の5
所得税法施行令の一部を改正する政令(平成31年政令第95号)附則4

本様式は国税庁ホームページからダウンロードできます。

保有する仮想通貨の種類が多く、届出書の「1 評価方法」に記載することができない場合は、 適宜の用紙に「1 評価方法」に該当する項目を記載の上、届出書と併せて提出してください。

 

コメント:

これはVersion3で新たに登場した項目です。

とても重大な変更がVersion 3でありました。

それは個人について取得原価の原則的な評価方法が変更になった点です。

Version2までは原則法が移動平均法(継続適用を条件に総平均法も可能)だったのが、Version3からは原則法が総平均法とされ、移動平均法を使用するためには届け出が必要になりました。

Version2までは「移動平均法が相当」としていたのにも関わらずです。

以前から申し上げているように、特別なケースを除いて、一般的には移動平均法の方が有利になります。

取得原価を計算する際に端数の四捨五入が認められているからです。

正確な原価計算の観点からも直近の価格が原価に反映されやすい移動平均法の方が総平均法よりも優れています。

理論的な根拠よりも政策面が優先されるいい例だと思います。

では、移動平均法の届出をした方がいいかというと、それは様々な要因を考えて慎重に検討した方がいいという考えです。

なお、仮想通貨の種類ごとに評価方法が選択できるようになっているのもポイントです。

 

12 仮想通貨の評価方法の変更手続

仮想通貨の評価方法として総平均法を選定し、「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」を提出しましたが、その評価方法を移動平均法に変更したいと考えています。

変更の具体的な手続について教えてください。

 

評価方法を変更しようとする年において、その年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長に対し、移動平均法を用いる旨を記載した「所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請 書」を提出して、その承認を受ける必要があります。

「11 仮想通貨の評価方法の届出」のとおり、仮想通貨の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末(12月31日)時点で保有する仮想通貨の評価額については、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法を選定するための「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の提出が必要です。

この選定した評価方法(評価の方法を届け出なかった方が「総平均法」を評価方法としていた場合を含みます。)を変更しようとする場合には、その変更しようとする年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長に対し、その変更しようとする評価方法など所定の事項を記載した申請書(所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請書)を提出して、その承認を受ける必要があります。

(注)
1 「所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請書」を提出した年の12月31日までに承認又は却下の通知がない場合は、その日において承認があったものとみなされます。

2 変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときや変更しようとする評価方法によっては所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるとき は、その申請が却下される場合があります。

3 「所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請書」の記載例は、次ページに掲載しています。

 

【関係法令等】
所法48の2
所令 101、119の2、119の4
所基通達 47-16 の2、48の2-3

本様式は国税庁ホームページからダウンロードできます。

変更しようとする仮想通貨の種類が多く、申請書の「1 評価方法」に記載することができない場合は、適宜の用紙に「1 評価方法」に該当する項目を記載の上、申請書と併せて提出してください。

 

コメント:

Version 2 までは取得価額の計算方法の変更は納税者の判断に任されていました。

Version 3 からは取得価額の計算方法の変更は届出制になってしまいました。

以下はVersion1と2からのコメントです。

FAQでは移動平均法と総平均法(継続適用が条件)が認められており、移動平均法が「相当」とされています。(もともとVersion1と2では移動平均法が相当とされていました。それがVersion3で正確な原価計算の観点からは移動平均法に劣る計算法である総平均法が原則法とされてしまいました。)

しかし、原価の計算方法には移動平均法と総平均法以外にも相当とされるものはあります。

先入先出法、個別法などがそれです。

アメリカでは仮想通貨の取得原価の計算方法としては先入先出法がベースです。

取引記録の整備や取引の対象となった仮想通貨自体を特定できることを条件に個別法も認められています。

ビットコインなどUTXO (Unspent Transaction Output) をベースにした仮想通貨は取引の対象となった仮想通貨を個別に特定することができます。(Ethereumはアカウントベースであり、UTXOはなく、取引の対象となったETHを個別に特定することはできません)

取引の対象となった資産を個別に特定できる以上、個別法が最も正確に原価を表し、原価計算方法として最も相当する、と言えるはずです。

ビットコインは今までになかった全く新しい性質を持った資産です。

既存の資産に対する枠組みをそのまま当てはめるのではなく、今までの資産になかった性質を踏まえて取引の実態を表す処理を議論するのがいいと思います。

それ以外で気になった点としては「取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。」とされている点です。

原価が上がるとその分利益は少なく計算されるので端数は切り上げた方が有利という結論になります。

移動平均か総平均のどちらが有利かはケースバイケースです。

結果が明確な場合を除き、端数切上げのことを考えると移動平均をそのまま採用するのが良さそうです。

 

13 仮想通貨の購入価額や売却価額が分からない場合

本年中に仮想通貨取引を行いましたが、取引履歴を残していないため、仮想通貨の取得価
額や売却価額が分かりません。これらの価額を確認する方法はありますか。

 

次の区分に応じて仮想通貨取引の取得価額や売却価額を確認することができます。

1 国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨取引

平成30年1月1日以後の仮想通貨取引については、国税庁から仮想通貨交換業者に対して、次の事項などを記載した「年間取引報告書」が交付されます(問15参照)。
・年中購入数量:その年の仮想通貨の購入数量
・年中購入金額:その年の仮想通貨の購入金額(取得価額)
・年中売却数量:その年の仮想通貨の売却数量
・年中売却金額:その年の仮想通貨の売却金額

お手元に年間取引報告書がない場合は、仮想通貨交換業者に年間取引報告書の(再)交付
を依頼してください。

(注) 平成29年以前は、年間取引報告書が交付されない場合があります。

その場合は下記2により、ご自身で仮想通貨の取得価額や売却価額を確認してください。

2 上記1以外の仮想通貨取引(国外の仮想通貨交換業者・個人間取引)

個々の仮想通貨の取得価額や売却価額について、例えば次の方法で確認してください。

・ 仮想通貨を購入した際に利用した銀行口座の出金状況や、仮想通貨を売却した際に利用 した銀行口座の入金状況から、仮想通貨の取得価額や売却価額を確認する。

・ 仮想通貨取引の履歴及び仮想通貨交換業者が公表する取引相場(注)を利用して、仮想通貨の取得価額や売却価額を確認する。

(注) 個人間取引の場合は、あなたが主として利用する仮想通貨交換業者の取引相場を利用してください。

確定申告書を提出した後に、正しい金額が判明した場合には、確定申告の内容の訂正(修正申告又は更正の請求)を行ってください。

なお、売却した仮想通貨の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認めら れます。

例えば、ある仮想通貨を500万円で売却した場合において、その仮想通貨の取得価額を売却価額の5%相当額である25万円とすることが認められます。

【関係法令等】
所基通達48の2-4

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

Version3では仮想通貨の取得価額が分からない場合に売却価額の5%とみなすことができる5%ルールが明記されました。

Version 3では少し文言の変更があり、

「平成30年1月1日以後の仮想通貨取引については、国税庁から仮想通貨交換業者に対して、次の事項などを記載した「年間取引報告書」が交付されます(問15参照)。 」と、国税庁が仮想通貨交換業者に対して年間取引報告書を交付するような文章になっています。

これは間違いで正しくは「国税庁から仮想通貨交換業者に年間取引報告書の交付を依頼している」だと思います。

 

 

14 年間取引報告書を活用した仮想通貨の所得金額の計算

仮想通貨交換業者A・Bから、次の年間取引報告書が送付されました。この年間取引報告書を活用した仮想通貨の所得金額の計算方法を教えてください。