国税庁がNFTに関する税務上の取扱いについてFAQを公表

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Author: Kensaku Kimura
投稿日: 2023-01-16
更新日: 2023-02-06

NFTの税金計算に関する今までの疑問が一部明らかに

2023年1月13日に国税庁は「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。

このようなまとまったFAQ形式でNFTの税金計算について国税庁が公式に見解を示すことはおそらく初めてだと思います。

このFAQが(情報)となっているのはこの文書が法律や法令ではなく、あくまでも国税庁の見解だからです。

法律ではないものの国税局はこの文書の内容をもとに税金計算の妥当性を検証するわけです。

実務ではこのFAQに基づいて様々な会計、税務処理がなされるはずです。

この記事ではFAQの内容を一つ一つ見ていくとともに、気になる点があればコメントを入れていきます。

コメントは青文字で付し、それ以外はFAQの原文となります。

なお、オフィシャルの文書は下記のリンクで入手できます:

NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)(令和5年1月13日)(PDF/832KB)

 

NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)

目次

No 項目
所得税・法人税共通関係
1 NFTを組成して第三者に譲渡した場合(一次流通)
2 NFTを組成して知人に贈与した場合(一次流通)
3 非居住者がNFTを組成して、日本のマーケットプレイスで譲渡した場合(一次流通)
4 購入したNFTを第三者に転売した場合(二次流通)
5 第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合
6 役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合
7 商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合
8 ブロックチェーンゲームの報酬としてゲーム内通貨を取得した場合
相続税・贈与税関係
9 NFTを贈与又は相続により取得した場合
源泉所得税関係
10 NFT取引に係る源泉所得税の取扱い
消費税関係
11 NFT取引に係る消費税の取扱い1(デジタルアートの制作者)
12 NFT取引に係る消費税の取扱い2(デジタルアートに係るNFTの転売者)
財産債務調書・国外財産調書関係
13 財産債務調書への記載の要否
14 財産債務調書へのNFTの価額の記載方法
15 国外財産調書への記載の要否
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コメント:

目次を見ると暗号資産に関する税務上の取扱い(FAQ)と似たような構成になっています。

NFT自体は言ってしまえばデジタルな認定、権利書のようなものです。

税務処理もNFTだからどうというよりは認定書であるNFTが表す権利などに基づいて税務処理も解釈されると予想しながら一読しましたが、予想通りでした。

一部NFT利用者である納税者の経理負担を軽減するような簡便処理の認容も見られます。

例えば:

FAQ8 ブロックチェーンゲームの報酬としてトークンを受け取った場合の簡便計算法

FAQ10 NFT取引における源泉徴収義務を重要でない取引については免除する取扱い

などです。

しかし、上記の簡便処理は例外で、原則は既存の税ルールに則った税務処理が求められます。

その場合の一部の税務処理は明らかにNFT取引には適用が困難なものもありました。

例えば、例外的に源泉徴収義務の免除を認めるFAQ10ですが、重要な取引については原則通り、源泉徴収をNFTの購入者である事業者がしなければならない結論になっています。

当然ですが、現状のスマートコントラクトはそれぞれの国の税法の都合は考慮しませんので、源泉徴収分を控除した金額を送金したとしても取引は無効です。

このようにデジタルな時代に従来の税慣習をそのまま当てはめるやり方に限界が来ている印象を強く受けました。

 

1 NFTを組成して第三者に譲渡した場合(一次流通)

私は、デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTをマーケットプレイスを通じて第三者に有償で譲渡しました。これにより、NFTを購入した第三者は、当該デジタルアートを閲覧することができるようになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。

 

デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTを譲渡したことにより得た利益は、所得税の課税対象となります。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。

ご質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に係る取引に該当し、当該取引から生じた所得は、雑所得(又は事業所得)に区分されます。

この場合の雑所得の金額は、次の算式で計算します。

【算式】

雑所得の金額 = NFTの譲渡収入 ― NFTに係る必要経費

(注1)
NFTの譲渡収入をマーケットプレイス内で通貨として流通するトークンで受け取った場合には、そのトークンの時価が譲渡収入となります。
ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、譲渡したNFTの市場価額(市場価額がない場合には、譲渡したNFTの売上原価等)をそのトークンの時価と取り扱って差し支えありません。

(注2)
NFTに係る必要経費とは、NFTの譲渡収入を得るために必要な売上原価の額並びに販売費及び一般管理費の額などをいいます。
なお、NFTの売上原価は、そのNFTを組成するために要した費用の額となり、デジタルアートの制作費は含まれません。

(注3)
雑所得の金額が赤字の場合(損失が生じた場合)には、他の所得との損益通算はできません(雑所得内の通算は可能です。)。

 

【参考:法人税の取扱い】
法人がデジタルアートを制作して、そのデジタルアートを紐づけたNFTを譲渡して適正な対価を得た場合、所得税と同様、その譲渡をして得た利益は法人税の課税対象となります。この場合における法人の所得の金額の計算上、その譲渡の日を含む事業年度の益金の額に算入すべき金額は、その適正な対価の額となります

 

【関係法令等】
所法27、35、36、37、69
法法22、22の2

 

コメント:

「NFTの売上原価は、そのNFTを組成するために要した費用の額となり、デジタルアートの制作費は含まれません。」とあり、一見デジタルアートを作るためにかかったコストは費用処理できないようにも見えます。

しかし、デジタルアートからの収入のためにかかったコストである制作費が費用処理できないと考えるのは不自然です。

雑所得の金額 = NFTの譲渡収入 ― NFTに係る必要経費

そして、「NFTに係る必要経費とは、NFTの譲渡収入を得るために必要な売上原価の額並びに販売費及び一般管理費の額などをいいます。」とあります。

デジタルアートの制作費はNFTの売上原価には含まれないけど「販売費及び一般管理費」に含まれると解釈すべきと考えました。

1 of 1のNFTアートなら売上と売上原価を明確に対応させられるし、1 of 1 でなくても制作費を組成したNFTに配賦するなどの方法で売上とコストを対応することはできると思うので、なぜ売上原価に含めないのか、その理屈は現時点では分かりません。

 

2 NFTを組成して知人に贈与した場合(一次流通)

私は、デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTを知人に無償で贈与しました。これにより、当該知人は、当該デジタルアートを閲覧することができるようになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。

 

デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTを知人に贈与しても、所得税の課税関係は生じません。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められないことから、所得税の課税関係は生じません。

(注)
NFTの贈与を受けた場合の贈与税の課税関係については、問9をご参照ください。

 

【参考:法人税の取扱い】
法人が、デジタルアートを制作して、そのデジタルアートを紐づけたNFTを贈与した場合、法人税の課税対象となります。

この場合、法人の所得の金額の計算上、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、そのNFTの贈与の時における価額(時価)となります。

なお、その贈与は法人税法上寄附となりますので、寄附金の額となるそのNFTの贈与の時における価額(時価)のうち法人税法の規定により計算した一定の金額を超える金額は、法人の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません。

 

【関係法令等】
所法36
法法22、22の2、37

 

コメント:

贈与を受けた場合は所得税法上の所得には該当しないが贈与税の検討が必要になります。

 

3 非居住者がNFTを組成して、日本のマーケットプレイスで譲渡した場合(一次流通)

私は、アメリカに居住する非居住者です。今般、デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTを日本のマーケットプレイスを通じて第三者に有償で譲渡しました。これにより、当該第三者は、当該デジタルアートを閲覧することができるようになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。

 

非居住者の方が、日本のマーケットプレイスでNFTを売却したとしても、原則として、日本の所得税の課税対象となりません。

 

解説

日本の所得税では、日本に居住する方は、全世界で稼得した所得が課税対象となり、日本に居住していない方(非居住者)は、日本で発生した所得(国内源泉所得)が課税対象となります。

ご質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に係る取引に該当し、当該取引から生じた所得は、原則として、国内源泉所得に該当せず、所得税の課税対象となりません。

(注)
著作権に係る取引についての源泉所得税の取扱いについては、問10を参照ください。

 

【関係法令等】
所法161

 

コメント:

特にコメントはありません。

 

4 購入したNFTを第三者に転売した場合(二次流通)

私は、デジタルアートの制作者からデジタルアートを紐づけたNFTを購入し、当該デジタルアートを閲覧することができました。今般、マーケットプレイスを通じて、当該NFTを第三者に有償で転売しました。これにより、私が有していた「デジタルアートの閲覧に関する権利」は、第三者に移転することになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。

 

デジタルアートを紐づけたNFTを転売したことにより得た利益は、所得税の課税対象となります。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。

ご質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、当該取引から生じた所得は、譲渡所得に区分されることになります。

(注)
そのNFTの譲渡が、棚卸資産若しくは準棚卸資産の譲渡又は営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡に該当する場合には、事業所得又は雑所得に区分されます。

この場合の譲渡所得の金額は、次の算式で計算します。

【算式】
譲渡所得の金額 = NFTの転売収入―NFTの取得費―NFTの譲渡費用―特別控除額

(注1)
NFTの転売収入をマーケットプレイス内の通貨として流通するトークンで受け取った場合には、そのトークンの時価が転売収入となります。
ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、転売したNFTの市場価額(市場価額がない場合には、転売したNFTの取得費等)をそのトークンの時価と取り扱って差し支えありません。

(注2)
NFTの取得費とは、そのNFTの購入代価と購入の際に要した費用の合計額となります。

(注3)
NFTの譲渡費用とは、譲渡に要した費用の額をいいます。

(注4)
総合課税の譲渡所得の特別控除の額は50万円です。
なお、譲渡益(譲渡収入から取得費及び譲渡費用を差し引いた後の金額)が 50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。

(注5)
譲渡所得の金額が赤字となった場合(損失が生じた場合)には、他の所得との損益通算が可能です。
ただし、そのNFTが主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有していたものである場合には、他の所得との損益通算はできません(総合譲渡所得内の通算は可能です。)。

 

【参考:法人税の取扱い】
法人が、購入したデジタルアートを紐づけたNFTを適正な対価を得て転売した場合、所得税と同様、その転売をして得た利益は法人税の課税対象となります。
この場合における法人の所得の金額の計算上、その転売をした日を含む事業年度の益金の額に算入すべき金額は、その適正な対価の額となります。

 

【関係法令等】
所法 27、33、35、36、37、38、69
所令 178
法法 22、22 の2

 

コメント:

主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有していたNFTの場合は他の所得との損益通算ができないとされています。

現時点で多くのNFTはこれに該当するように思います。

 

5 第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合

私は、デジタルアートの制作者からデジタルアートを紐づけたNFTを購入し、当該デジタルアートを閲覧することができました。

今般、第三者の不正アクセスにより、購入したNFTが消失しました。この場合の所得税の取扱いを教えてください。

 

第三者の不正アクセスにより、購入したNFTが消失した場合の所得税の取扱いは、次のとおりです。

そのNFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産等に該当せず、かつ、そのNFT の消失が、盗難等に該当する場合には、雑損控除の対象となります。

そのNFTが事業用資産等に該当する場合には、その損失について、事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。

 

解説

(雑損控除)
所得税法上、災害又は盗難若しくは横領によって資産(生活に通常必要でない資産及び棚卸資産等を除きます。)に損失が生じた場合の当該損失については、雑損控除の対象とされています。

したがって、第三者の不正アクセスが盗難等に該当し、かつ、そのNFTが生活に通常必要でない資産又は事業用資産等に該当しない場合には、そのNFTの消失に係る損失は、雑損控除の対象となります。

(注1)
生活に通常必要でない資産とは、次の資産をいいます。
1 競走馬その他射こう的行為の手段となる動産
2 主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産
3 貴金属、書画、美術工芸品などで30万円を超える動産

(注2)
事業用資産等とは、棚卸資産又は業務の用に供される資産(繰延資産のうち必要経費に算入されていない部分を含みます。)及び山林をいいます。

(注3)
損失の額は、そのNFTが消失した時点の時価となります。 なお、時価が分からない場合には、そのNFTの購入金額として差し支えありません。

(必要経費)
所得税法上、事業用資産等の損失については、事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。

(注)
必要経費算入額は、そのNFTの帳簿価額となります。

 

【関係法令等】

所法51、72

 

コメント:

生活に通常必要でない資産“ではない”ことを説明できれば雑損控除の対象になります。

雑損控除で控除される金額は

(差引損失額)- (総所得金額等)x 10%

になります。

「差引損失額」は「損害金額」から「保険金などで補填される金額」を差し引いた金額です。

NFTに保険がかかっていることは稀でしょうから、消失した時のNFTの時価ということになるでしょう。

例えば、総所得金額500万円の人が時価200万円のNFTを不正アクセスにより消失したとします。

雑損控除の金額は

200万円 – 500万円 x 10% = 150万円

となります。

雑損控除の金額が大きくて、その年の所得金額から控除しきれないときは、3年間繰り越すことができます。

しかし、一番大事なのは不正アクセスされないようにPrivateKeyを慎重に管理することです。

  • 普段NFTを使うウォレットと他の暗号資産を保管するウォレットは分ける
  • 闇雲に取引をApproveしない
  • 闇雲にリンクは踏まない
  • サイト等にはブックマークから行く

など、セキュリティの基本を守りながら慎重に行動することが大事と考えます。

 

6 役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合

私は、役務提供の対価として、取引先の法人が発行するトークンを取得しました。このトークンは、取引先が販売する商品の購入する際に使用することができます。

この場合の所得税の取扱いを教えてください。

 

役務提供の対価として取引先の法人が発行するトークンを取得した場合、所得税の課税対 象となります。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。

役務提供の対価に係る所得区分は、次のとおりです。

  • 請負契約その他これに類する契約の場合は、事業所得又は雑所得に区分されます。
  • 雇用契約その他これに類する契約の場合は、給与所得に区分されます。

(注)
役務提供の対価の額は、そのトークンの時価となります。
ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、契約などによって定められた役務提供の対価の額を、そのトークンの時価と取り扱って差し支えありません。

 

【関係法令等】
所法 27、28、35、36

 

コメント:

特にコメントはありません。

 

7 商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合

私は、商品の購入の際に、購入先の法人が発行するトークンを無償で取得しました。このトークンは購入先で商品を購入する際に使用することができます。この場合の所得税の取扱いを教えてください。

商品の購入の際に、購入先の法人が発行するトークンを無償で取得したことによる経済的利益は、所得税の課税対象となります。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。

トークンを無償で取得した場合の経済的利益は、法人からの贈与に当たることから、一時所得に区分されます。

(注)
一時所得の収入金額は、無償で取得したトークンの時価となります。
ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の 算定が困難な場合には、そのトークンの時価を0円として差し支えありません。

 

【関係法令等】
所法34、36

 

コメント:

特にコメントはありません。

 

8 ブロックチェーンゲームの報酬としてゲーム内通貨を取得した場合

私は、ブロックチェーンゲームをプレイし、その報酬として、ゲーム内通貨(トークン) を取得しました。この場合の所得税の取扱いを教えてください。

 

ブロックチェーンゲームで得た報酬は、原則として、所得税の課税対象となります。

 

解説

所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。

ただし、そのゲーム内通貨(トークン)が、ゲーム内でしか使用できない場合(ゲーム内の資産以外の資産と交換できない場合)には、所得税の課税対象となりません。

ブロックチェーンゲームの報酬は、雑所得に区分され、雑所得の金額は、次の算式で求めることとなります。

 

【算式】
雑所得の金額=ブロックチェーンゲームの収入金額-ブロックチェーンゲームの必要経費

(注1)
ブロックチェーンゲームの収入金額は、ブロックチェーンゲームで得たゲーム内通貨(トークン)の総額となります。
ゲーム内通貨(トークン)の評価は、ゲーム内通貨(トークン)の取得の都度行うこととなります。
ただし、ゲーム内通貨(トークン)ベースで増減額を管理し、月末又は年末に一括で評価することもできます。
なお、暗号資産に直接交換できないなどの理由により、ゲーム内通貨(トークン)の 時価の算定が困難な場合には、時価を0円として差し支えありません。
※ この場合のブロックチェーンゲームの報酬への課税時期は、「ゲーム内通貨(トークン)」を「暗号資産と交換できる他のトークン」に交換した時となります。

(注2)
ブロックチェーンゲームの必要経費は、ブロックチェーンゲームの報酬を得るために使用したゲーム内通貨(トークン)の取得価額の総額となります。
ゲーム内通貨(トークン)の取得価額については、

  • 購入したゲーム内通貨(トークン)については、購入価額
  • ブロックチェーンゲームで取得したゲーム内通貨(トークン)については、収入金額とした金額(具体的には(注1)で評価した金額)となります。

なお、ブロックチェーンゲームにおいては、ゲーム内通貨(トークン)の取得や使用が頻繁に行われ、取引の都度の評価は、煩雑と考えられることから、ゲーム内通貨(トークン)ベースで所得金額を計算し、年末に一括で評価する方法(簡便法)で雑所得の金額を計算して差し支えありません。

 

【簡便法】
その年の12月31日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額 – その年の1月1日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額 – その年に購入したゲーム内通貨(トークン)の総額 = ゲーム内通貨(トークン)ベースの所得金額

ゲーム内通貨(トークン)ベースの所得金額 × 年末の暗号資産への換算レート = 雑所得の金額

(注)
年の中途で、暗号資産に交換したゲーム内通貨(トークン)がある場合には、交換で取得した暗号資産の価額を雑所得の金額に加算します。

ゲーム内通貨(トークン)が暗号資産と交換できないなど時価の算定が困難な場合には、 雑所得の金額は0円として差し支えありません。

※ この場合、「ゲーム内通貨(トークン)」を「暗号資産と交換できる他のトークン」に交換した時点で、当該トークンの価額を雑所得として申告することとなります。

 

【関係法令等】

所法35、36、37

 

コメント:

特にありませんが、複雑な気持ちです。

税法を厳密に当てはめると課税対象となる取引は世の中にたくさんあります。

近所の人にミカンをもらったり、行きつけのレストランでおまけをもらったり。

しかしそれを文字にしてルール化した時点でそれに従わない行為はルール違反になってしまいます。

このFAQではゲームで得たトークンは原則課税対象となっています。

ほとんどの人はゲームで遊ぶ時、ゲームのルールには目を通しても、税法のルールには目を通しません。

文字にしてルールにしてしまうと多くの人に税務リスクを負わせることになりかねません。

暗号資産に関するFAQでも繰り返しコメントしていますが、デジタル資産の課税は法定通貨や他の現実の資産に交換した時にするのが現実的で納税者保護につながると思います。

 

9 NFTを贈与又は相続により取得した場合

NFTを贈与又は相続により取得した場合の贈与税又は相続税の取扱いを教えてください。

 

個人から経済的価値のあるNFTを贈与又は相続若しくは遺贈により取得した場合には、その内容や性質、取引実態等を勘案し、その価額を個別に評価した上で、贈与税又は相続税が課されます。

 

解説

相続税法上、個人が、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を贈与又は相続若しくは遺贈により取得した場合には、贈与税又は相続税の課税対象となることとされています。

この場合のNFTの評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の定めのない財産の評価))の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価する こととなります。

例えば、評価通達135((書画骨とう品の評価))に準じ、その内容や性質、取引実態等を勘案し、 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。

(注)
課税時期における市場取引価格が存在するNFTについては、当該市場取引価格により評価して差し支えありません。

 

〔参考〕
評価通達(抄)
(評価方法の定めのない財産の評価)
5 この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。

(書画骨とう品の評価)
135 書画骨とう品の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 書画骨とう品で書画骨とう品の販売業者が有するものの価額は、133((たな卸商品等の評価))の定めによって評価する。
(2) (1)に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して 評価する。

 

【関係法令等】
相法2、2の2
相基通達11の2-1
評価通達5、135

 

コメント:

処理についてコメントはありませんが、大事なのは万が一の時に備えて準備は入念にしておくことです。

NFTはセルフカストディが原則です。

ウォレットの保管場所、使用方法、など、万が一のことを想定して家族に無事にNFTが渡るよう、対策しておくことが重要です。

 

10 NFT取引に係る源泉所得税の取扱い

給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)である私は、マーケットプレイスを通じて、デジタルアート(著作物)の制作者から、デジタルアートが紐づけられたNFTを購入し、その購入代価を支払いました。

私は、制作者から当該デジタルアートに係る著作権の譲渡は受けておらず、当該デジタルアートをSNSのアイコンに使うことについて著作権法第 21 条に規定する複製権及び同法第 23条に規定する公衆送信権等に係る著作物の利用の許諾を受けました(当該デジタルアートをSNSアイコンに使うことを除く著作権に係る利用許諾は受けておりません)。

このような場合、私は、当該NFTの購入代価を支払う際に、「著作権の使用料」として、所得税を源泉徴収する必要がありますか。

(注)
このマーケットプレイスの利用規約上、当該デジタルアートに係る著作権は制作者に帰属することとされ、著作権に係る利用許諾は当該制作者のみが行うことができると明記されています。

なお、当該NFTの購入代価の内訳として、SNSのアイコンへの使用を認めることの対価は明記されていません。

 

所得税を源泉徴収する必要はありません。

 

解説

居住者に対して、「著作権の使用料」を国内において支払う者は、その支払の際に所得税を源泉徴収することとされています。ただし、給与の支払をしていない個人の方が、著作権の使用料を支払う場合には、所得税を源泉徴収する必要はありません。

また、非居住者又は外国法人に対して、国内において業務を行う者がその業務に係る「著作 権の使用料」や「著作権の譲渡対価」を国内において支払う際には、所得税を源泉徴収することとされています(租税条約の適用により、所得税を源泉徴収する必要がない場合もあります。)。

(注)
恒久的施設を有しない非居住者又は外国法人の有する「著作権の使用料」や「著作権の 譲渡対価」の国内源泉所得については、源泉徴収のみで課税関係が終了することとされて います(租税条約の適用により、源泉徴収されない場合もあります。)。

購入したNFTに係るデジタルアートをSNSのアイコンに使用することについて、著作権法第 21条に規定する複製権及び同法第23条に規定する公衆送信権等に係る著作物の利用の許 諾を受けることの対価は上記の「著作権の使用料」に該当することとなりますので、原則とし て、その支払の際に所得税を源泉徴収する必要があります。

ただし、ご質問の場合、当該NFTの購入代価の支払は、給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)の方が行っておりますので、当該NFTの購入代価の支払の際に、「著作権の使用料」として所得税を源泉徴収する必要はありません。

(注)
NFTの購入代価の支払を、給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)でない方が行う場合でも、ご質問のように、NFTの購入代価の内訳として、デジタルアートをSNSのアイコンに使うことについて著作権法第21条に規定する複製権及び同法第23条に規定する公衆送信権等に係る著作物の利用の許諾を受けることの対価が明記されていないためその対価部分を区分することが困難であり、かつ、その許諾の範囲はSNSのアイコンに使用することに限られているためその許諾が有償であるとしてもその対価部分は極めて少額であると認められる場合には、そのNFTの購入代価の支払の際に、「著作権の使用料」として所得税を源泉徴収する必要はありません。

 

【関係法令等】
所法 161、204、212

 

コメント:

設例では

著作物の利用の許諾を受けることの対価が明記されていないためその対価部分を区分することが困難であり、

かつ、

その許諾の範囲はSNSのアイコンに使用することに限られているためその許諾が有償であるとしてもその対価部分は極めて少額であると認められる場合には、

そのNFTの購入代価の支払の際に、「著作権の使用料」として所得税を源泉徴収する必要はありません。

としています。

重要性の低い取引について例外を設けるのはいいと思います。

しかし、対価部分の区分可能性あるいは対価部分の金額的重要性がある場合には源泉徴収の対象となります。

ブロックチェーンの取引で購入者の国の税法の事情によって勝手に送金金額を減らすことは現実的ではありません。

デジタル時代に従来の取引形態を前提にした税慣習が合わなくなってきているのを感じました。

 

11 NFT取引に係る消費税の取扱い1(デジタルアートの制作者)

私はデジタルアート(著作物)の制作を行っている個人事業者ですが、制作したデジタルアートを紐づけたNFTをマーケットプレイスを通じて日本の消費者に有償で譲渡しました。

これにより、私はNFTの譲渡を受けた日本の消費者に対して、当該デジタルアートの利用を許諾することとなります。この場合の消費税の取扱いを教えて下さい。

 

本取引は、デジタルアートの制作者(質問者)が、事業として、対価を得て日本の消費者に対して行う著作物の利用の許諾に係る取引であり、電気通信利用役務の提供として、デジタ ルアートの制作者に消費税が課されます。

 

解説

消費税法上、国内において事業者が事業として対価を得て行う「資産の譲渡」及び「資産の貸付け」並びに「役務の提供」に対して消費税を課するとされています(注1,2)。

本取引は、事業として対価を得て行われるものであり、かつ、電気通信回線を介して行われ る著作物(著作権法第2条第1項第1号に規定する著作物)の利用の許諾に係る取引と認められますので、「電気通信利用役務の提供」に該当します(消法21八の三)。

そして、電気通信利用役務の提供が国内において行われたものかどうかの判定(内外判定) は、役務の提供を受ける者の住所等(個人の場合には住所又は居所)が国内かどうかにより行 うこととなります(消法43三)。

したがって、本取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う電気通信利用役務 の提供として、当該役務の提供を行った者(デジタルアートの利用の許諾を行った質問者)に 消費税が課されることとなります(注 3,4)。

(注1)
給与所得者が行う取引であっても、対価を得て行われる資産の譲渡等が反復、継続、 独立して行われるものであれば、「事業として」の取引に該当します。

(注2)
無償による取引は原則として消費税の課税対象となりません。

(注3)
本取引における取引の相手方は日本の消費者であり、取引の相手方となる者が通常事 業者に限られるものとは認められませんので、デジタルアートの制作者(質問者)が国外事業者に該当する場合であっても、本取引は「事業者向け電気通信利用役務の提供」には該当せず、当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行ういわゆる「リバースチャージ方式」の対象にはなりません(消法21八の四)。

(注4)
当該役務提供を受ける者の住所等が国外の場合には消費税の課税対象外(不課税)と
なります。

 

〔参考〕
その課税期間の基準期間(※1)における課税売上高(※2)が1,000万円を超える(※3)事業者は、消費税の課税事業者となり、消費税の申告及び納付を行う必要があります。

※1 原則として、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度をいいます。

※2 課税売上高とは、消費税が課税される取引の売上金額(消費税及び地方消費税を除いた税抜金額)と、輸出取引などの免税売上金額の合計額です。返品、値引きや割戻し等に係る金額がある場合には、これらの合計額(消費税及び地方消費税を除いた税抜金額)を控除した残額をいいます。

なお、基準期間において免税事業者であった場合には、その基準期間中の課税売上高には消費税が含まれていませんので、基準期間における課税売上高を計算するときには税抜きの処理は行いません。

※3 その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(個 人事業者はその年の前年の1月1日から6月 30 日までの期間をいい、法人の場合は原則と して、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。)における課税売上 高が1,000万円を超える場合には、課税事業者となります)。

なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額によることもできます。

 

【関係法令等】
消法2、4、5、9、9の2、28、45
消令6、45
消基通達1-4-5、5-1-1、5-1-2、5-7-15の2、5-8-3、5-8-4

 

コメント:

事業者が行うNFTの販売は消費税の対象取引となります。

インボイス制度が導入された後は消費税の仕入控除を受けるために登録番号が記載された適格請求書が必要になります。

NFTはブロックチェーンで購入し、別途請求書を受け取る実務が定着するのか、展開が興味深いです。

これも税慣習がデジタル時代に対応できなくなってきた例だと思います。

 

12 NFT取引に係る消費税の取扱い2(デジタルアートに係るNFTの転売者)

私は、マーケットプレイスを通じてデジタルアートの制作者からデジタルアート(著作物)が紐づけられたNFTを購入した後、当該マーケットプレイスを通じて当該NFTを他者に有償で譲渡しました。

私は当初の当該NFTの購入により当該デジタルアートの利用許諾を受けており、その後当該NFTを他者に譲渡することにより、当該利用許諾に係る権利(利用権)を当該他者に譲渡することになります。

なお、当該マーケットプレイスの利用規約上、当該デジタルアートに係る著作権は制作者に帰属し、著作物自体の利用の許諾は当該制作者のみが行うことができること、NFTの譲渡により著作物の利用権のみが移転することとされています。この場合の消費税の取扱いを教えて下さい。

 

本取引は、デジタルアートの制作者(著作権者)から当該デジタルアートの利用の許諾を受けた者(質問者)が、当該利用の許諾に係る権利(著作権法第63条第3項の利用権)を他者に譲渡する取引であり、国内の事業者が事業として対価を得て行うものであれば、当該国内の事業者に消費税が課されます。

 

解説

消費税法上、国内において事業者が事業として対価を得て行う「資産の譲渡」及び「資産の貸付け」並びに「役務の提供」に対して消費税を課するとされています(注1,2)。

本取引は、マーケットプレイスの利用規約上、当該デジタルアートに係る著作権は制作者に 帰属し、著作物自体の利用の許諾は当該制作者のみが行うことができること、NFTの譲渡に より著作物の利用権のみが移転することとされています。

このことから、質問者が著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)自体を譲渡するものではなく、また、著作権の利用許諾を行うものでもないと認められます。

そうすると、本取引は、デジタルアート(著作物)が紐づけられたNFTの譲渡に伴い、当 該デジタルアートの制作者(著作権者)から当該デジタルアートの利用の許諾を受けた者(質問者)が、当該利用の許諾に係る権利(利用権)を他者に譲渡するものと認められます。

そして、当該利用権の譲渡が行われる時における資産の所在場所が明らかでないことから、本取引が国内において行われたものかどうかの判定(内外判定)は、譲渡を行う者の当該譲渡に係る事務所等の所在地が国内かどうかにより行うこととなります(消法43一かっこ書、消 令61十)。

したがって、本取引が、国内において(譲渡に係る事務所等が国内に所在する事業者が)、事 業として対価を得て行うものであれば、当該事業者に消費税が課されることとなります(注3)。

(注1)
給与所得者が行う取引であっても、対価を得て行われる資産の譲渡等が反復、継続、 独立して行われるものであれば、「事業として」の取引に該当します。

(注2)
無償による取引は原則として消費税の課税対象となりません。

(注3)
仮に、マーケットプレイスの利用規約など当事者間の契約上、NFTの譲渡に伴い著作権を譲渡することとなっている場合には、著作権の譲渡として当該著作権の譲渡を行う者の住所地で内外判定を行うこととなり(消法43一かっこ書、消令61七)、譲渡の相手方が非居住者の場合には輸出免税の対象となります(消法71五、消令 172六)。 また、当事者間の契約上、NFTの譲渡に伴い、著作権の利用を許諾することとなっている場合には、問11と同様の課税関係となります。

 

【関係法令等】
消法2、4、5、7、9、9の2、28、45
消令6、17、45
消基通達1-4-5、5-1-1、5-1-2、5-1-3、5-7-6

 

コメント:

FAQ11のコメントと同じです。

 

13 財産債務調書への記載の要否

国内外のマーケットプレイスで購入したNFTを保有しています。

NFTは財産債務調書への記載の対象になりますか。

 

保有しているNFTが、12月31日において暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、財産債務調書への記載が必要になります。

 

解説

財産債務調書には、NFTの種類別(アート、音楽、スポーツ、ゲーム等)、用途別及び所在別(注)に記載してください。

なお、財産債務調書合計表においては、「財産の区分」欄の中の「その他の財産(上記以外)」欄に記載してください。

(注)
NFTの所在については、国外送金等調書規則第12条第3項第6号及び第15条第2項の規定により、その財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在となります。

NFTを購入したマーケットプレイスの所在が国内か国外かにかかわらず、財産債務調書への記載が必要になります。

 

【関係法令等】
国外送金等調書法6の2①
国外送金等調書令12の2⑧
国外送金等調書規則 12③六、15①②、別表第三

 

コメント:

財産債務調書の提出要件は以下のとおりです。

財産債務調書の提出が必要となる方は、

所得税等の確定申告書を提出しなければならない方

または

所得税の還付申告書(その年分の所得税の額の合計額が配当控除額および年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える場合におけるその還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、

次の1および2のいずれにも該当する方です。

1 その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超えること

各種所得金額の合計額は、申告分離課税の所得がある場合には、それらの特別控除後の所得金額の合計額を加算した金額です。
ただし、
(1)純損失や雑損失の繰越控除、
(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除、
(3)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除、
(4)上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、
(5)特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除、
(6)先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
を受けている場合は、その適用後の金額をいいます。

2 その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産またはその価額の合計額が1億円以上である国外転出特例財産を有すること(相続開始年に相続または遺贈により取得した財産については、合計額の判定から除くことができます。)

ここでいう「財産の価額」とは財産の価額の総額をいい、財産の価額から債務の金額を差し引いた金額ではありません。

また、「国外転出特例対象財産」とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等ならびに同条第2項に規定する未決済信用取引等および同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいいます。

(注)
令和5年分以後の財産債務調書については、上記のほか、「その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者」の方が対象となります。

タックスアンサーへのリンク

 

14 財産債務調書へのNFTの価額の記載方法

NFTの価額は、どのように記載すればよいですか。

 

NFTの価額については、その年の12月31日における「時価」又は「見積価額」により記載します。

 

解説

財産債務調書に記載する財産の価額は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。

NFTについては、その年の 12 月 31 日におけるNFTの現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額を時価として記載します。

(注)
その年の12月31日における市場取引価格が存在するNFTについては、当該市場取引価格を時価として差し支えありません。

また、財産債務調書に記載する財産の価額は、その財産の時価による算定が困難な場合、見 積価額を算定し記載しても差し支えありません。

NFTの見積価額は、例えば、次のような方法により算定された価額をいいます。

  1. その年の12月31日における売買実例価額(その年の12月31日における売買実例価額がない場合には、その年の12月31日前の同日に最も近い日におけるその年中の売買実例価額)のうち、適正と認められる売買実例価額
  2. 1による価額がない場合には、その年の翌年1月1日から財産債務調書の提出期限までにそのNFTを譲渡した場合における譲渡価額
  3. 1及び2がない場合には、取得価額

 

【関係法令等】
国外送金等調書法6の2④
国外送金等調書令12の2②
国外送金等調書規則12⑤、15④

 

コメント:

特にありません。

 

15 国外財産調書への記載の要否

国外のマーケットプレイスで購入したNFTを保有しています。NFTは国外財産調書への記載の対象になりますか。

 

国外財産調書への記載の対象にはなりません。

 

解説

NFTは、国外送金等調書規則第12条第3項第6号の規定により、財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在により「国外にある」かどうかを判定する財産に該当します。

また、国外財産調書は、居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非永住者を除きます。)が提出することとされています。

したがって、居住者が国外のマーケットプレイスで購入したNFTは、「国外にある財産」と はなりませんので、国外財産調書への記載の対象にはならず、財産債務調書への記載の対象となります。詳しくは問13をご参照ください。

 

【関係法令等】
国外送金等調書法5
国外送金等調書令10⑦
国外送金等調書規則12③六

 

コメント:

なお、国外財産調書の提出義務の詳細は下記のとおりです。

対象者
国外財産調書の提出が必要となる方は、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産(相続開始年に取得した相続国外財産については、その合計額の判定から除くことができます。)を有する「非永住者以外の居住者」である方です。

ここでいう「居住者」および「非永住者」は、所得税法に規定する居住者および非永住者をいい、居住者であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況により判定します。

所得税法に規定する「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、「非永住者」とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

 

対象物
その年の12月31日において保有する国外財産が対象となります。

国外財産とは、「国外にある財産をいう」とされ、「国外にある」かどうかの判定は、財産の種類ごとに、その年の12月31日の現況で行います。

また、国外財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされており、その邦貨換算は、同日における「外国為替の売買相場」によることとされています。

タックスアンサーへリンク

 

まとめ

冒頭でも述べたようにNFT自体はデジタルな認定書、権利書のようなものです。

今回のFAQを見てもNFTの税務上の取扱いの整理はNFTだからどうというわけではなく、認定書であるNFTが表す権利などに基づいてされています。

そのように整理することで既存の税務ルールと整合する形にはなるでしょう。

しかし、NFTを通じた認定書・権利書のやり取りと既存の認定書、権利書のやり取りと決定的に違うところがあります。

既存の認定書・権利書のやり取りでは認定書・権利書の正統性が重要になり、認定書・権利書の正統性は取引相手の信頼性に依存します。

したがって取引相手は特定された人物あるいは組織となり、そことの金銭のやり取りがタックスポイントとなります。

しかしNFTを通じた認定書・権利書のやり取りはブロックチェーンを活用することで認定書・権利書の正統性を自ら確認することができます。

ビットコインを除くブロックチェーンのほとんどは中央集権的ですが、従来の商慣行に比べればトラストレス(取引の相手方を信頼する必要がない)に取引できます。

取引相手が誰であるかは重要ではなく、取引はスマートコントラクトにより定型化・非属人化が可能になります。

その結果、取引の相手方としての対象はグローバルに拡大し、取引の効率化も大幅に向上します。

しかしそれは一方で従来のタックスポイントの消失を意味します。

ビットコインやデジタル資産の有効活用は10x以上の効率化を生みます。

生産性向上は人間の本能であり、引き返すことは選択肢としてはありません。

生産性向上の阻害要因となるタックスポイントは可能な限り排除することが結果として生産性向上、納税額の増加、納税者保護につながると思います。

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Kensaku Kimura

Kensaku Kimura