特定自己発行暗号資産については原価法を許容
2023年12月25日に国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。
FAQ形式で仮想通貨の税金計算について国税庁が公式に見解を示すことは2017年に始まって以来、今回で8回目です。
今年は11項目の追加がありましたがその半分は2023年1月20日国税庁が公表した「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」の内容です。
今回公表されたFAQ Version 8の重要な変更点としては「特定自己発行暗号資産」に関する論点と2024年から登場する「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」の概念だと思います。
表紙記載の当局の関与部署はVersion2以降変化なし
Version2ではVersion1のときと比べてFAQの表紙に記載されている国税庁の部署が大幅に増加しました。
Version3,4,5,6,7,8で変更はありませんでした。
記録のために表は更新しています。
2017 (Ver1) | 2018-2019 (Ver2-3) | 2020-2022 (Ver4-7) | 2023 (Ver8) |
---|---|---|---|
仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報) | 仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) | 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) | 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報) |
FAQの項目数は45で11点追加
Version3では法人税関係の論点が独立の分野として追加され、論点が追加されました。
法人税関係の論点が6個追加され、それ以外にも新たな論点が追加された結果、FAQの項目はVersion2の21項目からVersion3では32項目に増えました。
Version4で新項目の追加はありませんでした。
Version5で新項目の追加が1つありました。
Version6で新項目の追加はありませんでした。
Version7で新項目の追加が1つありました。
Version8では新項目の追加が11点ありました。
Version8では法人税関係のセクションの中に暗号資産関係と電子決済手段関係の区分が新設されました
- 所得税・法人税共通関係
- 所得税関係
- 法人税関係
- 暗号資産関係
- 電子決済手段関係
- 相続税・贈与税関係
- 源泉所得税関係
- 消費税関係
- 法定調書関係
以上を踏まえてVersion8のFAQで取り上げられている項目を紹介します:
No | 項目 | 登場Ver | Ver6からの変更点 |
---|---|---|---|
1 所得税・法人税共通関係 | |||
1-1 | 暗号資産を売却した場合 | 1 | 継続(Ver3で原価の計算方法に重大な変更) |
1-2 | 暗号資産で商品を購入した場合 | 1 | 継続(Ver3で原価の計算方法に重大な変更) |
1-3 | 暗号資産同士の交換を行った場合 | 1 | 継続(Ver3で原価の計算方法に重大な変更) |
1-4 | 暗号資産の取得価額 | 1 | 継続 |
1-5 | 暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合 | 1 | 継続 |
1-6 | マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合 | 1 | 継続(Ver6でステーキングとレンディングが追加された) |
1-7 | 非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引 | 7 | 継続 |
2 所得税関係 | |||
2-1 | 暗号資産取引による所得の総収入金額の収入すべき時期 | 3 | 継続 |
2-2 | 暗号資産の所得区分 | 1 | 継続(Ver7で事業所得の判断基準に重大な変更) |
2-3 | 暗号資産の必要経費 | 2 | 継続 |
2-4 | 暗号資産の譲渡原価 | 3 | 継続 |
2-5 | 暗号資産の評価方法の届出 | 3 | 継続 |
2-6 | 暗号資産の評価方法の変更手続 | 3 | 継続 |
2-7 | 暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合 | 2 | 継続(Ver3で5%ルールが追加) |
2-8 | 年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算 | 2 | 継続 |
2-9 | 年間取引報告書の記載内容 | 2 | 継続 |
2-10 | 暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い | 3 | 継続 |
2-11 | 暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い | 1 | 継続 |
2-12 | 暗号資産の証拠金取引 | 1 | 継続 |
2-13 | 暗号資産の信用取引 | 3 | 継続 |
3 法人税関係 | |||
3-1暗号資産関係 | |||
3-1-1 | 暗号資産の譲渡損益の計上時期 | 3 | 継続 |
3-1-2 | 暗号資産の譲渡原価 | 3 | 継続 |
3-1-3 | 暗号資産の期末時価評価 | 3 | 継続(Ver3で明文化された未実現損益への課税は重大な影響あり) |
3-1-4 | 活発な市場が存在する暗号資産 | 8 | 新規(「法人が保有する暗号資産の期末時価評価についてFAQ」掲載の内容) |
3-1-5 | DEXにおいて取引される暗号資産 | 8 | 新規(「法人が保有する暗号資産の期末時価評価についてFAQ」掲載の内容) |
3-1-6 | ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価価格 | 8 | 新規(「法人が保有する暗号資産の期末時価評価についてFAQ」掲載の内容) |
3-1-7 | 貸付けをした暗号資産の期末時価評価 | 8 | 新規(「法人が保有する暗号資産の期末時価評価についてFAQ」掲載の内容) |
3-1-8 | 借入れをした暗号資産の期末時価評価 | 8 | 新規(「法人が保有する暗号資産の期末時価評価についてFAQ」掲載の内容) |
3-1-9 | 特定自己発行暗号資産に該当する暗号資産 | 8 | 新規 |
3-1-10 | 複数の事業者が共同発行する暗号資産 | 8 | 新規 |
3-1-11 | 暗号資産信用取引を行った場合 | 3 | 継続 |
3-1-12 | 暗号資産信用取引の譲渡損益の計上時期 | 3 | 継続 |
3-1-13 | 暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額 | 3 | 継続(Ver3で明文化された未実現損益への課税は重大な影響あり) |
3-2 電子決済手段関係 | |||
3-2-1 | 電子決済手段の取得時の課税関係 | 8 | 新規 |
3-2-2 | 電子決済手段の譲渡時の課税関係 | 8 | 新規 |
3-2-3 | 電子決済手段の期末時の課税関係 | 8 | 新規 |
3-2-4 | 外貨建電子決済手段の期末時の課税関係 | 8 | 新規 |
4 相続税・贈与税関係 | |||
4-1 | 暗号資産を相続や贈与により取得した場合 | 2 | 継続 |
4-2 | 相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法 | 2 | 継続 |
5 源泉所得税関係 | |||
5-1 | 暗号資産による給与等の支払 | 2 | 継続 |
6 消費税関係 | |||
6-1 | 暗号資産を譲渡した場合の消費税 | 2 | 継続 |
6-2 | 暗号資産の貸付けにおける利用料 | 5 | 継続 |
7 法定調書関係 | |||
7-1 | 財産債務調書への記載の要否 | 2 | 継続 |
7-2 | 財産債務調書への暗号資産の価額の記載方法 | 2 | 継続 |
7-3 | 国外財産調書への記載の要否 | 2 | 継続 |
3-1-4から3-1-8の項目は2023年1月20日に国税庁が公表している「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」に掲載されていた内容です。
弊事務所ではこの記事で取り上げています。
このFAQが(情報)となっているのはこの文書が法律や法令ではなく、あくまでも国税庁の見解だからです。
法律ではないものの国税局はこの文書の内容をもとに税金計算の妥当性を検証するわけです。
実務ではこのFAQに基づいて様々な会計、税務処理がなされるはずです。
この点はVer1から変わらずです。
この記事ではFAQの内容を一つ一つ見ていくとともに、Version6からの変更点を中心に気になる点があればコメントを入れていきます。
コメントは青文字で付し、それ以外はFAQの原文となります。
なお、オフィシャルの文書は下記のリンクで入手できます:
暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和5年12月)|国税庁 (nta.go.jp)
1 所得税・法人税共通関係
1-1 暗号資産を売却した場合
問
次の暗号資産取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。
(例)
4月2日 4,000,000円で4BTCを購入した。
4月20日 0.2BTCを210,000円で売却した。
(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。
答
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。
210,000円 [譲渡価額] – ( (4,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの取得価額(注1)] × 0.2BTC [売却した数量] ) [譲渡原価] = 10,000円 [所得金額](注2)
(注1) 総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。
(注2)その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。
保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その暗号資産の売却価額と売却した暗号資産の取得価額との差額となります。
【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6
コメント:
仮想通貨をFiat(法定通貨)に換金した際の益の計算方法に関しては特にコメントはありません。(Version1の時と同じコメントです)
が、とても重大な変更がVersion 3でありました。
それは個人について取得原価の原則的な評価方法が変更になった点です。
Version2までは原則法が移動平均法(継続適用を条件に総平均法も可能)だったのが、Version3からは原則法が総平均法とされ、移動平均法を使用するためには届け出が必要になりました。
Version2までは「移動平均法が相当」としていたのにも関わらずです。
理論的な根拠よりも政策面が優先されるいい例だと思います。
以前から申し上げているように、特別なケースを除いて、一般的には移動平均法の方が有利になります。
取得原価を計算する際に端数の四捨五入が認められているからです。
詳しくは「2-5 仮想通貨の評価方法の届出」でふれます。
Version 2 で行ったBTC→ビットコインの変更をまたBTC表記に戻している点は謎です。
根拠法令等もちょこちょこ変わっています。
Version1では取引の際の支払手数料を取得原価に含めていました。
しかし、Version2では「売買手数料については勘案しない」と変更し、Version3以降もそれを踏襲しています。
仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「1-4 暗号資産の取得価額」で取り上げられています。
1-2 暗号資産で商品を購入した場合
問
次の暗号資産取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。
(例)
4月2日 4,000,000円で4BTCを購入した。
10月5日 403,000円(消費税等込)の商品を購入する際の決済に0.3BTCを支払った。
なお、取引時における交換レートは1BTC=1,350,000円であった。
(注) 上記取引において暗号資産の売買手数料については勘案していない。
答
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。
403,000円 [商品価額(=ビットコインの譲渡価額)] – ( (4,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの価額](注1) × 0.3BTC [支払った数量] ) [譲渡原価] = 103,000円(注2)[所得金額]
(注)
総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。
その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります
【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6
コメント:
益の計算方法に関しては特にコメントはありません。
が、「1-1 暗号資産を売却した場合」と同様、売買手数料については勘案していないとVersion1からVersion2に更新された段階で変更されています。
Version1の例では支払手数料込の数量が例に使われています。
また、Version3で取得原価の原則的計算方法が個人に関しては移動平均法から総平均法に変わっている点も「1-1 暗号資産を売却した場合」と同様です。
以下のコメントはVersion1の時のものを転記しています。
しかし、ビットコインを日常的に使う場合、いちいち支払い時に損益計算をするのは現実的ではありません。
外貨であっても同じ取扱になりますが、海外旅行で使った外貨の為替差益を都度計算して申告している人は少ないでしょう。
一定金額以下であれば所得計算から除外できるようなde minimisルールが必要と考えます。
1-3 暗号資産同士の交換を行った場合
問
次の暗号資産取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。
(例)
4月2日 4,000,000円で4BTCを購入した。
11月2日 40XRPを購入する際の決済に1BTCを支払った。
なお、取引時における交換レートは1XRP=30,000円であった。
(注)
1上記取引において暗号資産の売買手数料については勘案していない。
2 上記取引は一時的に必要な暗号資産を取得した場合には該当しないケースである。
答
(30,000円 × 40XRP) [リップルの購入価額(=ビットコインの譲渡価額)] – ( (4,000,000円 ÷ 4BTC) [1BTC当たりの価額(注1)] × 1BTC [支払った数量] ) [譲渡原価] = 200,000円(注2) [所得金額]
(注)
総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。
その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。
保有する暗号資産を他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになりますので、「1-2 暗号資産で商品を購入した場合」と同様に、暗号資産Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があります。
【関係法令等】
所法36、37、48の2
所令119の2、119の5
法法61
法令118の6
コメント:
ここでも売買手数料については「勘案しない」とVersion1から2への更新時に変更されています。
仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「1-4 暗号資産の取得価額」で取り上げられています。
また、Version3で取得原価の原則的計算方法が個人に関しては移動平均法から総平均法に変わっている点も「1-1 暗号資産を売却した場合」と同様です。
以下のコメントはVersion1の時のものを転記しました。
Crypto-to-cryptoの交換に関する益に計算方法については特にコメントはありません。
世界でもCrypto-to-cryptoの交換はTaxable eventとして捉えている国がほとんどだと思います。
しかし、次の2点からもう少し工夫があればよかったと思ってしまいます。
まず、Crypto-to-cryptoの交換の都度、損益計算を求めるのは多くの場合に非現実的もしくは困難である点です。
上場株式やFXの場合だと取引が一つの業者で完結します。
売買損益の計算は簡単でほとんどの場合、業者の管理画面で簡単に確認できます。
複数の口座を使用している場合も基本的にはそれぞれの業者の損益を合計することで全体の損益を確定することができます。
しかし仮想通貨の場合は取引所間で仮想通貨の送信を自由にできます。
ある取引所で購入した仮想通貨を他の取引所に送信した場合、送信先の取引所はその仮想通貨の取得原価を知りません。
取得原価の情報がないため、損益計算が当然できません。
したがって、複数の取引所を使っている場合は単純に取引所ごとの損益データを合算しても全体の損益を確定することはできません。
取引が少ない場合や使用している取引所が少ない場合はスプレッドシートを使って頑張って損益を計算できます。
取引数や使用する取引所が多くなると損益計算はすぐに非現実的あるいは困難になります。
2点目の理由はもう少し概念的です。
ある資産からある資産に交換する場合、一度円を経由すると考えます。
そこで交換する資産の間に価格差があると損益が発生します。
上場株の取引で考えると分かりやすいです。
保有しているApple株を売却し、Google株を購入したとします。
Apple株からGoogle株には直接交換できず、一度Apple株を売却してお金を受け取り(ここで損益を認識)、そのお金でGoogle株を買ったと考えます。
しかし、仮想通貨の場合は直接 BTCとETHを交換できます。
一旦損益を確定させるという意志は多くの場合ユーザーにはありません。
これは基本的な場合ですが、仮想通貨は金融商品や法定通貨と違い、保有者に何かしらの権利を与えるものではありません。
言ってしまえば仮想通貨を保有するということはPrivate Keyというランダムな文字列を保有することです。
仮想通貨と仮想通貨を交換するということはある文字列とある文字列を交換しているにすぎません。
ミカンを持ってる人とリンゴを持ってる人が持ってる果物を交換するイメージに近いです。
その場合も税法を厳密に適用すれば課税対象のなるのかもしれませんが、起こっている事象を技術的に考えると個人的にはすっきりしない部分が残ります。
実務的な側面、概念的な側面、そして税金の補足、納税者への負担の観点からも、Fiatに交換した時に課税対象とするのが適当ではないかと思います。
1-4 暗号資産の取得価額
問
国内の暗号資産交換業者から、暗号資産を購入しましたが、その際に手数料を支払いました。
この場合の購入した暗号資産の取得価額はどうなりますか。
(例)
10月2日 2BTCを2,000,000円で購入した。購入時に手数料550円(消費税等込)を支払った。
答
上記(例)の場合の暗号資産の取得価額は、購入の代価2,000,000円に手数料550円を加算した2,000,550円になります。
暗号資産の取得価額は、その取得方法により、それぞれ次のとおりとされています。
なお、取得価格は、購入手数料など暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を含む金額となります。
- 対価を支払って取得(購入)した場合:購入時に支払った対価の額
- 贈与又は遺贈により取得した場合(次の③の場合を除く): 贈与又は遺贈の時の価額(時価)
- 相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により取得した場合被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)
- 上記以外の場合:その取得時点の価額(時価)
(注) 上記以外の場合とは、例えば、暗号資産同士の交換、マイニング(採掘)、分裂(分岐)などにより暗号資産を取得した場合をいい、その場合の取得価額は、取得時点の価額(時価)になります。
なお、分岐により暗号資産を取得した場合の取得価額は0円です(「1-5 暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合」参照)。
【参考】
消費税の課税事業者(税抜経理方式を適用)である法人が、上記(例)の取引を行う場合の購入した暗号資産の取得価額
上記(例)の場合の暗号資産の取得価額は2,000,500円(注1,2)になります。
(注)
1 消費税法では、暗号資産などの支払手段等の譲渡は非課税とされていますが、暗号資産交換業者に対して取引の仲介料として支払う手数料は、仲介に係る役務の提供の対価に該当し、消費税の課税対象になります。
2 本件取引を行う者が消費税法上の課税事業者に該当し、かつ、税抜経理方式を適用している場合には、手数料に含まれる消費税等の額(50円=550円×10/110)と課税取引の対価の額(500円=550円-50円)を区分し、課税取引の対価の額を暗号資産の支払対価の額に加算した金額(2,000,500円= 2,000,000円+500円)が購入した暗号資産の取得価額となります。
【関係法令等】
所法36、37 、40
所令119の6
法法61
法令118の5
経理通達2
コメント:
Version1では移動平均法と総平均法による取得価額の計算例に関する情報が提供されていました。
Version2では仮想通貨を取得した際の手数料の取扱いに論点が変わりました。
仮想通貨の取得の際に発生した手数料を取得価額に含める取扱いはVersion1から変わっていません。
情報としてVersion2で新たに加わったのは消費税の処理についてです。
Version3では消費税の8%から10%の増加が例題に反映されているくらいで大きな変更はありません。
Version4,5,6,7では特に変更はありませんでした。
手数料から消費税部分を抜き出して、取得価額は税抜の金額で計算することになりますが、使用する取引所のデータが綺麗でないとかなり複雑になりそうです。
実際に取得原価の計算をしていくと手数料の処理は複雑だということにすぐに気づきます。
手数料は取引所にとって様々な形式で取引データに表示されます:
(例)
注文量とは別に発生するパターン
注文量から控除されるパターン
手数料が基軸通貨で発生するパターン
取引通貨で発生するパターン
マイナス手数料(リベート)で発生するパターン
取引所のトークンでリワードとして発生するパターン
これを一つ一つ整理してロジックを組んで計算するのはとても大変です。
1-5 暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合
問
暗号資産の分裂(分岐)に伴い、新たに誕生した暗号資産を取得しましたが、この取得により、所得税又は法人税の課税対象となる所得は生じますか。
答
暗号資産の分裂(分岐)により新たに誕生した暗号資産を取得した場合、その時点では課税対象となる所得は生じません。
所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。
しかしながら、ご質問の暗号資産の分裂(分岐)に伴い取得した新たな暗号資産については、分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。
したがって、その取得時点では所得が生じず、その新たな暗号資産を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。
なお、その新たな暗号資産の取得価額は0円となります。
法人税についても同様に、分裂(分岐)に伴い取得した新たな暗号資産の取得価額は0円となり、分裂(分岐)に伴い新たな暗号資産を取得したことによりその事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入すべき収益の額はないものと考えられます。
【関係法令等】
所法 36
法法 22
コメント:
Version2で法人税に関する記載が追加されたものの、内容自体はVersion1と同じです。
Version3でも仮想通貨を受け取った時点では課税所得にならない(将来譲渡をした時にはなるかもしれない)ことが明確化されただけで大きな変更はありません。
Version4,5,6,7では特に変更はありませんでした。
以下のコメントはVersion1の時のものを転記したものです。
FAQでは、分岐時点では相場が存在しておらず、価値を有していない点をもって、取得価額は0円とされ、結果的に取得時点では所得が生じていないとしています。
しかし、その前提として資産を取得した場合は、その取得時点における時価を基に所得金額を計算するとしています。
この前提を仮想通貨にそのまま当てはめてしまうのは危険です。
ブロックチェーンの分岐はその仕組み上、それなりの頻度で起きます。
ブロックが短時間で連続して採掘された場合などです。
上記の例では、最終的にネットワークのノードの多数が正当と認めたチェーンが存続し、分岐したチェーンは破棄されます。
したがって基本的には新しいコインが発生し、価値を持つというケースには発展しません。
しかし、ブロックチェーンの多くはオープンソースで誰でも自由に分岐できます。
納税者の知らないところで分岐が発生し、知らずに価値を持つ仮想通貨を取得するケースなどが考えられます。
また、新しい仮想通貨の発生時点でその仮想通貨自体の取引相場が存在していなかったとしても、その仮想通貨のデリバティブ市場で価格が形成されているケースも考えられます。
これらの問題点もFAQ3に対するコメントで指摘したとおり、Fiatへ交換したタイミングで課税対象とすることで所得計算の簡素化、納税者の保護につながると考えます。
1-6 マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合
問
マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合の所得税又は法人税の課税関係はどのようになりますか。
答
マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずじる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。
いわゆる「マイニング」、「ステーキング」、「レンディング」など(以下「マイニング等」といいます。)により暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に参入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。
【関係法令等】
所法27、35、36、37
法法22、22の2
コメント:
Version 2 では法人税の取扱いが追加されただけでVersion1から大きな変更はありませんでした。
Version3,4,5でも大きな変更はありません。
Version6ではステーキングとレンディングが加えられましたが内容に大きな変更はありません。
ステーキングとレンディングには様々な形態があるので一概には言えませんが、スマートコントラクトにトークンを送付し、一定期間動かさないことを条件にトークンを受け取る(イールドと呼ばれたりします)ものが一般的です。
これらのほとんどは分散型であることを売りにしていますが、実際には数人規模のチームによって開発・運営されている場合が多く、実態は極めて中央集権的です。
マイニングをするにはトークンは必要ありませんが、ステーキングやレンディングをするためにはトークンが必要です。
ユーザーは開発・運営チームの努力による将来のリターンを期待してトークンを購入し、ステーキング・レンディングをするケースがほとんどです。
よって、米国ではしばしばこれらのサービスは証券に該当するという議論に発展するわけです。
個人的には数字をランダムに生成するビットコインのマイニングとステーキングやレンディングといったものは性質が違うように思います。
以下のコメントはVersion1の時のものを転記したものです。
一見妥当に見える結論ですが、少し考えると違和感があります。
マイニングというサービスを提供した対価としてビットコイン(仮想通貨)を受け取っている、そのように解釈すると受け取ったビットコインは所得になります。
しかし、マイニング自体はサービスではありませんし、サービスの提供先となり得る人や会社のような組織も存在しません。
ビットコインのマイニングとはコンピューターを使ってランダムな数字を生成し続けることを言います。
これがなぜマイニング(採掘)と言われるかというと、ゴールドのマイニングとの類似性があり、アナロジーとして分かりやすいからです。
ゴールドの採掘会社も石油の採掘会社もゴールドや石油の採掘自体を事業としているわけではありません。
採掘してそれを売却することを事業としているわけです。
課税所得も採掘時ではなく、売却時に認識します。
ビットコインのマイニングをコモディティのマイニングと同様に考えるのであれば、同じように採掘時ではなく、売却時に課税所得とするのが妥当と考えました。
1-7 非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引
問
私は、アメリカに居住していますが、保有する暗号資産を日本の暗号資産交換業者に売却しました。
この場合、日本での申告は必要でしょうか。
答
日本での申告の必要はありません。
日本の所得税では、日本に居住する方は、全世界で稼得した所得が課税対象となり、外国に居住する方(非居住者)は、日本で発生した所得(国内源泉所得)が課税対象となります。
そのうえで、国内源泉所得の対象となる資産の譲渡に係る所得(恒久的施設に帰属する所得を除きます。)は、次に掲げるものなどに限定されており、外国に居住する方(非居住者)が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡することにより生ずる所得は、所得税の課税対象とされていません。
① 国内にある不動産の譲渡による所得
② 国内にある不動産の上に存する権利等の譲渡による所得
③ 国内にある山林の伐採又は譲渡による所得
④ 内国法人の発行する株式等の譲渡による所得で一定のもの
⑤ 不動産関連法人の株式等の譲渡による所得
⑥ 非居住者が国内に滞在する間に行う国内にある資産の譲渡による所得
外国法人についても同様に日本での申告の必要はありません。
(注) 外国に居住する方(非居住者)や外国法人が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡することにより生ずる所得については、源泉徴収の対象ともされていません。
【関係法令等】
所法 161
所法 212
所令 281
法法 138
法令 178
コメント:
Version7で新たに登場した質問です。
特にコメントはありませんが、このような問い合わせが多いからFAQに追加されたのかは気になるところです。
日本のクリプト取引所の多くは流動性提供会社、通称LPやMMに流動性提供業務を委託しています。
そしてこれらのLPやMMは海外企業の場合が多いです。
LPやMMは委託者である日本の取引所において暗号資産の売買をするわけですから、その行為そのものがTax Liabilityに発展しないことについて当局から見解を得ておきたい気持ちは理解できます。
2 所得税関係
2-1 暗号資産取引による所得の総収入金額の収入すべき時期
問
暗号資産取引を行ったことにより生じた利益について、いつの年分の収入とすべきですか。
答
原則として売却等をした暗号資産の引渡しがあった日の属する年分となります。
ただし、選択により、その暗号資産の売却等に関する契約をした日の属する年分とすることもできます。
暗号資産取引により生じた損益については、原則として雑所得(その他雑所得)に区分され(「2−2 暗号資産取引の所得区分」参照)、雑所得(その他雑所得)の収入すべき時期は、その収入の態様に類似する、他の所得の収入すべき時期に準じて判定した日とされています。
したがって、暗号資産取引により生じた所得の総収入金額の収入すべき時期は、その収入の態様を踏まえ、資産の譲渡による所得の収入すべき時期に準じて判定します。
【関係法令等】
所法35、36
所基通達36-12、36-14
コメント:
Version3で新たに登場した質問です。
特にコメントはありません。
2−2 暗号資産の所得区分
問
暗号資産取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。
答
暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
暗号資産取引により生じた損益は、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められますので、原則として、雑所得(その他雑所得)に区分されます。
ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、次の所得に区分されます。
・暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として、事業所得
・暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として、雑所得(業務に係る雑所得)
なお、「暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」、例えば、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合は、事業所得に区分されます。
【関係法令等】
所法27、35、36
コメント:
Version2では書きぶりがVersion1から変わっているものの、内容はほぼ変わっていませんでした。
Version3,4,5,6でもほとんど変更はありませんでした。
しかし、Version7ではとても大きな変更がありました。
内容の本質は変わっていないので正確に言うと重大な表現の変更がありました。
Version7より前のFAQの内容を要約をすると:
暗号資産取引で利益が出た場合は「雑所得」、しかし暗号資産取引が事業と認められる場合は「事業所得」でした。
そして、「事業所得」として認められるかどうかについて具体的な要件等はなかったため、実態判断となっていました。
しかし、Version7で「事業所得」として認められるための具体的な要件が記述されました。
その要件とは:
帳簿書類を保存
収入金額が300万円を超える
です。
これは暗号資産について特別に設けられたルールというよりは、2022年10月7日付の「所得税基本通達の制定について」の一部改正の内容に整合させるための変更と考えるべきのようです。
この基本通達の改正趣旨は「事業所得と認められるかどうかの判定についての考え方を明らかにする」ことのようで、その背景には会社員の副業が近年増加傾向にあることが背景にあるようです。
働き方改革の恩恵をクリプトユーザーも受けることになったと言えそうです。
「事業所得」は多くの点で「雑所得」よりも納税者にとって有利です。
「事業所得」の要件を満たしそうな人は上記の要件が年度中に満たされていることを確認することがおすすめです。
なお、ここでいう収入金額とはグロスの売却額のことを指しています。
ネットの利益のことではないのでビットコインで言えば約1BTC、これを年度中に売却すれば金額要件は満たすことになります。
雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説(PDF/270KB) を見ると、雑所得が事業所得と認められるためには300万円超という金額要件よりも帳簿書類の保存要件の方が重要視されています。
帳簿書類の保存要件を満たしていれば、仮に収入金額が300万円を下回っていてもすぐに事業性が否認されるわけではありません。
しかし、不確実性をできるだけ取り除くという意味で300万円超の数値基準をクリアしているとより安心です。
2-3 暗号資産の必要経費
問
暗号資産の売却による所得を申告する場合、どのような支出が必要経費となりますか。
答
暗号資産の売却による所得の計算上、必要経費となるものには、例えば次の費用があります。
・その暗号資産の譲渡原価
・売却の際に支払った手数料
このほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産の売却のために直接必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。
暗号資産の売却による所得は、原則として雑所得(その他の雑所得)に区分されますので、その所得金額は、総収入金額から必要経費を控除することにより算出します(「2ー2 暗号資産取引の所得区分」参照)。
この必要経費に算入できる金額は、暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額です。
必要経費については、次の事項に注意してください。
① インターネットやスマートフォン等の回線利用料については、一般的に、暗号資産取引に係る利用料とそれ以外の利用料を一括で支払うこととなりますが、このような支出については、暗号資産取引に係る利用料を明確に区分できる場合に限り、その明確に区分された金額を必要経費に算入することができます。
② パソコンなど、使用可能期間が1年以上で、かつ、一定金額を超える資産については、その年に一括して必要経費に計上するのではなく、使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費(こうした費用を「減価償却費」といいます。)とする必要があります。
なお、暗号資産取引に係る所得が、事業所得又は雑所得(業務に係る雑所得)に区分される場合には、その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額も必要経費に算入することができます。
【関係法令等】
所法37、45 、48の2
所令 96
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
Version3,4,5,6では特に大きな変更はありませんでした。
Version7では文言に一部変更はありましたが、必要経費に参入できる金額に
① 暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却に際し直接要した費用(直接費)
② その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用(間接費)
が含まれるという結論に変わりはないようです。
どんな費用が必要経費に算入できるかについては判断を伴います。
とりあえず領収書はとっておいて税理士に相談するのがいいと思います。
2-4 暗号資産の譲渡原価
問
次のとおり、継続して同じ種類の暗号資産を売買しました。
この場合の暗号資産の売却に関する譲渡原価について教えてください。
(例) 3月1日に初めてビットコインを購入して以降、内訳のとおり、数度にわたり購入と売却を行い、1年間の売却額(数量)の総額は、5,295,000円(5BTC)、購入額(数量)の総額は、4,037,800円(6.5 BTC)でした。
(内訳)
・ 3月1日 4BTCを1,845,000円で購入(保有数量4BTC)
・ 6月20日 2BTCを1,650,000円で購入(保有数量6BTC)
・ 7月10日 2BTCを2,400,000円で売却(保有数量4BTC)
・ 9月15日 0.5 BTC を 542,800 円で購入(保有数量4.5BTC)
・ 11月30日 3BTCを2,895,000円で売却(保有数量1.5BTC)
(注)上記取引において暗号資産の売買手数料については勘案していない。
答
上記(例)の場合、総平均法においては3,106,000円、移動平均法においては3,080,200円 が、譲渡原価となります。
複数の暗号資産を継続的に売買する方がその売却等に係る所得金額を計算する際には、譲渡原価の計算を行う必要があります。
譲渡原価は、暗号資産の種類(名称:ビットコインなど)ごとに、「1:前年から繰り越した年初(1月1日)時点で保有する暗号資産の評価額」と「2:その年中に取得した暗号資産の取得価額の総額」との合計額から、「3:年末(12月31日)時点で保有する暗号資産の評価額」を差し引いて計算します。
この「年末時点で保有する暗号資産の評価額」は、その保有する暗号資産の「年末時点で の1単位当たりの取得価額」に「年末時点で保有する数量」を乗じて求めますが、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。
上記(例)の場合の譲渡原価は、その評価方法の別に次のとおりとなります。
総平均法: 同じ種類の暗号資産について、年初時点で保有する暗号資産の評価額とその年中に取得した暗号資産の取得価額との総額との合計額をこれらの暗号資産の総量で除して計算した価額を「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする方法をいいます。
移動平均法: 同じ種類の暗号資産について、暗号資産を取得する都度、その取得時点において保有している暗号資産の簿価の総額をその時点で保有している暗号資産の数量で除して計算した価額を「取得時点の平均単価」とし、その年12月31日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」を「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする方法をいいます。
総平均法を用いた場合
以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は621,200円となり、「年末時点で保有する暗号資産の評価額」は931,800円になります。
したがって、譲渡原価は、3,106,000円になります(4,037,800円-931,800円)。
<計算式>
(1) 1年間に取得した同一種類(名称)の暗号資産の取得価額の総額 ÷
(2) 1年間に取得した同一種類(名称)の暗号資産の数量 =
(3) 年末時点での1単位当たりの取得価額
(注)前年から繰り越した暗号資産がある場合には、1と2にそれぞれにその価額、数量を加算します。
(1) 1年間に取得したビットコインの取得価額の総額 4,037,800円
(2) 1年間に取得したビットコインの数量 6.5BTC
(3) 年末時点での1単位当たりの取得価額(1÷2) 621,200円
(4) 年末時点で保有するビットコインの評価額(3×1.5BTC) 931,800円
移動平均法を用いた場合
以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は 638,400円となり、「年末時点で保有する暗号資産の評価額」は 957,600円になります。
したがって、譲渡原価は、3,080,200円になります(4,037,800円-957,600円)。
<計算式>
種類(名称)の異なる暗号資産を取得する都度、次の計算式により平均単価の見直しを行います。
(1) 取得時点で保有する同一種類(名称)の暗号資産の簿価の総額 ÷
(2) 取得時点で保有する同一種類(名称)の暗号資産の数量 =
(3) 取得時点の平均単価
(注)
1 前年から繰り越した暗号資産がある場合には、1と2にそれぞれにその価額、数量を加算します。
2 その年12月31日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」が「年末時点での1単位当たりの取得価額」となります。
(1) 取得時点の平均単価(3月1日)
(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 1,845,000円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 4BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 461,250円
(2) 取得時点の平均単価(6月20日)
(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 3,495,000円
(461,250円 × 4BTC) [取得の時に保有している暗号資産の簿価] + 1,650,000円 [6月 20 日購入額] = 3,495,000円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 6BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 582,500円
(3) 取得時点の平均単価(9月15日)
(1) 取得時点で保有するビットコインの簿価の総額 2,872,800円
(582,500円 × 4BTC) [取得の時に保有している暗号資産の簿価] + 542,800円 [9月15日購入額] = 2,872,800円
(2) 取得時点で保有するビットコインの数量 4.5BTC
(3) 取得時点の平均単価(1÷2) 638,400円
(4) 年末時点での1単位当たりの取得価額 638,400円
=9月15日取得時点の平均単価 638,400円
(5) 年末時点で保有するビットコインの評価額
638,400円 (年末時点での1単位当たりの取得価額) × 1.5BTC (年末時点で保有する数量) = 957,600円
※ 暗号資産の譲渡原価を含め、その売却等に係る所得金額の計算については、暗号資産交 換業者から送付される「年間取引報告書」を基に「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」を作成することで、簡便に行うことができます(「2−8 年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算」参照)。
「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」は、国税庁ホームページに掲載されています。
【関係法令等】
所法48の2
所令119の2
コメント:
これはVersion3で新規に登場した項目です。
移動平均法と総平均法の計算方法を説明しているだけなので特にコメントはありません。
2-5 暗号資産の評価方法の届出
問
初めて暗号資産を取得しましたが、その暗号資産の評価方法を選定する必要があると聞きました。
選定の具体的な手続を教えてください。
答
初めて暗号資産を取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
「2-4 暗号資産の譲渡原価」のとおり、暗号資産の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末(12月31日)時点で保有する暗号資産の評価額については、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。
これらの評価方法は、暗号資産の種類(名称)ごとに選定することとされており、
(1) 初めて暗号資産を取得した場合
(2) 異なる種類の暗号資産を取得した場合
には、その取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、その選定した評価方法など所定の事項を記載した届出書(所得税の暗号資産の評価方法の届出書)を提出する必要があります。
(注)
1 この取扱いは、令和元年の所得税法等の改正により措置されたものです。
2 評価方法の届出書の提出がない場合には、評価方法は「総平均法」になります。
3 「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の記載例は、次ページに掲載しています。
【関係法令等】
所法48の2
所令 119の2、119の3、119の5
所得税法施行令の一部を改正する政令(平成31年政令第95号)附則4
本様式は国税庁ホームページからダウンロードできます。
保有する暗号資産の種類が多く、届出書の「1 評価方法」に記載することができない場合は、 適宜の用紙に「1 評価方法」に該当する項目を記載の上、届出書と併せて提出してください。
コメント:
これはVersion3で新たに登場した項目です。
とても重大な変更がVersion3でありました。
それは個人について取得原価の原則的な評価方法が変更になった点です。
Version2までは原則法が移動平均法(継続適用を条件に総平均法も可能)だったのが、Version3からは原則法が総平均法とされ、移動平均法を使用するためには届け出が必要になりました。
Version2までは「移動平均法が相当」としていたのにも関わらずです。
以前から申し上げているように、特別なケースを除いて、一般的には移動平均法の方が有利になります。
取得原価を計算する際に端数の四捨五入が認められているからです。
正確な原価計算の観点からも直近の価格が原価に反映されやすい移動平均法の方が総平均法よりも優れています。
理論的な根拠よりも政策面が優先されるいい例だと思います。
では、移動平均法の届出をした方がいいかというと、それは様々な要因を考えて慎重に検討した方がいいという考えです。
なお、仮想通貨の種類ごとに評価方法が選択できるようになっているのもポイントです。
2-6 暗号資産の評価方法の変更手続
問
暗号資産の評価方法として総平均法を選定し、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出しましたが、その評価方法を移動平均法に変更したいと考えています。
変更の具体的な手続について教えてください。
答
評価方法を変更しようとする年において、その年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長に対し、移動平均法を用いる旨を記載した「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請 書」を提出して、その承認を受ける必要があります。
「2-5 暗号資産の評価方法の届出」のとおり、暗号資産の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末(12月31日)時点で保有する暗号資産の評価額については、「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法を選定するための「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
この選定した評価方法(評価の方法を届け出なかった方が「総平均法」を評価方法としていた場合を含みます。)を変更しようとする場合には、その変更しようとする年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長に対し、その変更しようとする評価方法など所定の事項を記載した申請書(所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書)を提出して、その承認を受ける必要があります。
(注)
1 「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出した年の12月31日までに承認又は却下の通知がない場合は、その日において承認があったものとみなされます。
2 変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときや変更しようとする評価方法によっては所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるとき は、その申請が却下される場合があります。
3 「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」の記載例は、次ページに掲載しています。
【関係法令等】
所法48の2
所令 101、119の2、119の4
所基通達 47-16 の2、48の2-3
本様式は国税庁ホームページからダウンロードできます。
変更しようとする暗号資産の種類が多く、申請書の「1 評価方法」に記載することができない場合は、適宜の用紙に「1 評価方法」に該当する項目を記載の上、申請書と併せて提出してください。
コメント:
Version 2 までは取得価額の計算方法の変更は納税者の判断に任されていました。
Version 3 からは取得価額の計算方法の変更は届出制になってしまいました。
以下はVersion1からのコメントです。
FAQでは移動平均法と総平均法(継続適用が条件)が認められており、移動平均法が「相当」とされています。(もともとVersion1と2では移動平均法が相当とされていました。それがVersion3で正確な原価計算の観点からは移動平均法に劣る計算法である総平均法が原則法とされてしまいました。)
しかし、原価の計算方法には移動平均法と総平均法以外にも相当とされるものはあります。
先入先出法、個別法などがそれです。
アメリカでは仮想通貨の取得原価の計算方法としては先入先出法がベースです。
取引記録の整備や取引の対象となった仮想通貨自体を特定できることを条件に個別法も認められています。
ビットコインなどUTXO (Unspent Transaction Output) をベースにした仮想通貨は取引の対象となった仮想通貨を個別に特定することができます。(Ethereumはアカウントベースであり、UTXOはなく、取引の対象となったETHを個別に特定することはできません)
取引の対象となった資産を個別に特定できる以上、個別法が最も正確に原価を表し、原価計算方法として最も相当する、と言えるはずです。
ビットコインは今までになかった全く新しい性質を持った資産です。
既存の資産に対する枠組みをそのまま当てはめるのではなく、今までの資産になかった性質を踏まえて取引の実態を表す処理を議論するのがいいと思います。
それ以外で気になった点としては「取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。」とされている点です。
原価が上がるとその分利益は少なく計算されるので端数は切り上げた方が有利という結論になります。
移動平均か総平均のどちらが有利かはケースバイケースです。
結果が明確な場合を除き、端数切上げのことを考えると移動平均をそのまま採用するのが良さそうです。
2-7 暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合
問
本年中に暗号資産取引を行いましたが、取引履歴を残していないため、暗号資産の取得価額や売却価額が分かりません。これらの価額を確認する方法はありますか。
答
次の区分に応じて暗号資産取引の取得価額や売却価額を確認することができます。
1 国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産取引
平成30年1月1日以後の暗号資産取引については、国税庁から暗号資産交換業者に対して、次の事項などを記載した「年間取引報告書」の交付をお願いしています(「2−9 年間取引報告書の記載内容」参照)。
・年中購入数量:その年の暗号資産の購入数量
・年中購入金額:その年の暗号資産の購入金額(取得価額)
・年中売却数量:その年の暗号資産の売却数量
・年中売却金額:その年の暗号資産の売却金額
お手元に年間取引報告書がない場合は、暗号資産交換業者に年間取引報告書の(再)交付
を依頼してください。
(注) 平成29年以前は、年間取引報告書が交付されない場合があります。その場合は下記2により、ご自身で暗号資産の取得価額や売却価額を確認してください。
2 上記1以外の暗号資産取引(国外の暗号資産交換業者・個人間取引)
個々の暗号資産の取得価額や売却価額について、例えば次の方法で確認してください。
・ 暗号資産を購入した際に利用した銀行口座の出金状況や、暗号資産を売却した際に利用 した銀行口座の入金状況から、暗号資産の取得価額や売却価額を確認する。
・ 暗号資産取引の履歴及び暗号資産交換業者が公表する取引相場(注)を利用して、暗号資産の取得価額や売却価額を確認する。
(注) 個人間取引の場合は、あなたが主として利用する暗号資産交換業者の取引相場を利用してください。
確定申告書を提出した後に、正しい金額が判明した場合には、確定申告の内容の訂正(修正申告又は更正の請求)を行ってください。
なお、売却した暗号資産の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認めら れます。
例えば、ある暗号資産を500万円で売却した場合において、その暗号資産の取得価額を売却価額の5%相当額である25万円とすることが認められます。
【関係法令等】
所基通達48の2-4
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
Version3では仮想通貨の取得価額が分からない場合に売却価額の5%とみなすことができる5%ルールが明記されました。
Version3では少し文言の変更があり、
「平成30年1月1日以後の仮想通貨取引については、国税庁から仮想通貨交換業者に対して、次の事項などを記載した「年間取引報告書」が交付されます(問15参照)。 」と、国税庁が仮想通貨交換業者に対して年間取引報告書を交付するような文章になっています。
これは間違いで正しくは「国税庁から仮想通貨交換業者に年間取引報告書の交付を依頼している」だと思います、とVersion3のコメントで書きましたが、やはりVersion4で修正されていました。
2-8 年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算
問
暗号資産交換業者A・Bから、次の年間取引報告書が送付されました。この年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算方法を教えてください。
答
年間取引報告書の太枠(赤字)部分及び太字点線枠(青字)部分について、国税庁ホームページに掲載している「暗号資産の計算書(総平均法用)」に入力すれば、簡便に所得金額を計算することができます。
上記の場合の暗号資産の所得金額は、2,189,000 円となります。
「暗号資産の計算書(総平均法用)」の計算例は次ページをご参照ください。
【関係法令等】
-
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
特にコメントはありません。
2-9 年間取引報告書の記載内容
問
暗号資産交換業者から年間取引報告書が送付される年間取引報告書には、何が記載されているのですか。
答
年間取引報告書の各欄には、次の事項が記載されています。
(1) 年始数量 :その年の1月1日現在の暗号資産の保有数量
(2) 年中購入数量:その年の暗号資産の購入数量
(3) 年中購入金額:その年の暗号資産の購入金額(取得価額)
(4) 年中売却数量:その年の暗号資産の売却数量
(5) 年中売却金額:その年の暗号資産の売却金額
(6) 移入数量:その年に購入以外で口座に受け入れた暗号資産の数量
(7) 移出数量:その年に売却以外で口座から払い出した暗号資産の数量
(8) 年末数量:その年の12月31日現在の暗号資産の保有数量
(9) 損益合計:その年の暗号資産の証拠金取引の損益の合計額
(10) 支払手数料:その年に暗号資産交換業者に支払った支払手数料の額
※ 暗号資産の売却・購入などを外貨で行った場合には、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額に基づき、各事項が記載されています。
なお、次の取引をした場合における各欄の表示内容は、次のとおりです。
1 暗号資産交換業者から無償で暗号資産の交付を受けた場合
「年中売却数量」: –
「年中売却金額」:交付を受けた暗号資産の価額(時価)
「年中購入数量」:交付を受けた暗号資産の数量
「年中購入金額」:交付を受けた暗号資産の価額(時価)
2 暗号資産で決済を行った場合
・ 暗号資産交換業者で円転して決済を行った場合
「年中売却数量」:円転した暗号資産の数量
「年中売却価額」:円転した暗号資産の価額(時価)
・ 暗号資産そのもので決済を行った場合
「移出数量」:決済で使用した暗号資産の数量
3 暗号資産交換業者で暗号資産Aと暗号資産Bを交換した場合
暗号資産Aの「年中売却数量」:交換した暗号資産Aの数量
暗号資産Aの「年中売却金額」:取得した暗号資産Bの価額(時価)
暗号資産Bの「年中購入数量」:取得した暗号資産Bの数量
暗号資産Bの「年中購入金額」:取得した暗号資産Bの価額(時価)
年間取引報告書の様式例は、次ページに掲載しています(暗号資産交換業者により、様式が異なる場合があります。)。
【関係法令等】
–
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
特にコメントはありません。
2-10 暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い
問
次のとおり、暗号資産を取得価額と同一価額で売却しましたので、売却による利益はありませんが、この売却額は、その時の暗号資産の相場(時価)と比べて低額なものとなっていました。
この売却による所得以外の所得はありませんが、確定申告は必要ですか。
(例)
・4月9日に450,000円で1BTCを購入した。
・5月20日に450,000円で1BTCを売却した。
なお、売却時における交換レートは1BTC=1,000,000円であった。
(注) 上記取引において暗号資産の売買手数料については勘案していない。
答
上記(例)の場合、雑所得の計算上、総収入金額は700,000円(時価の70%相当額)として計算しますので、所得金額を250,000円として申告が必要になります。
平成31年4月1日以降、個人が、時価よりも著しく低い価額の対価による譲渡(注1)により暗号資産を他の個人又は法人に移転させた場合には、その対価の額とその譲渡の時におけるそ の暗号資産の価額との差額のうち実質的に贈与したと認められる金額(注2)を雑所得等の総収入金額に算入する必要があります(注3)。
(注)
1「時価よりも著しく低い価額の対価による譲渡」とは、時価の70%相当額未満で売却する場合をいいます。
2 「実質的に贈与したと認められる金額」は、時価の70%相当額からその対価の額を差し引いた金額として差し支えありません。
3 上記により暗号資産の取得をした個人が、その暗号資産を譲渡した場合における当該暗号資産の取得価額は、その対価の額とその取得の時におけるその暗号資産の価額との差額のうち実質的に贈与したと認められる金額との合計額となります。
4 令和元年分以後の所得税について適用されます。
上記(例)の場合には、次のとおり、低額譲渡に該当するため、総収入金額に算入される金額は、700,000 円となります。
【計算式等】
低額譲渡に該当するかどうかの判定
(1) 売却価額 :450,000円
(2) 時価の70%相当額:1,000,000円 × 70% =700,000円
(3) (1)<(2)であることから、売却価額は、時価の70%相当額未満であり、低額譲渡に該当します。
総収入金額算入額
低額譲渡に該当する場合の総収入金額は、実際の売却価額に加えて、時価の70%相当額との差額を総収入金額に算入することとなります。
450,000円 [実際の売却価額] + (700,000円 – 450,000円) [時価の70%相当額との差額] = 700,000円 [総収入金額算入額]
所得金額の計算
700,000円 [総収入金額] – 450,000円 [譲渡原価] = 250,000円 [所得金額]
なお、平成31年4月1日以降、贈与(相続人に対する死因贈与を除く。)又は遺贈(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除く。) により暗号資産を他の個人又は法人に移転させた場合には、その贈与又は遺贈の時における暗号資産の価額(時価)を雑所得等の総収入金額に算入する必要があります。
(注)
1 上記により暗号資産の取得をした個人が、その暗号資産を譲渡した場合における当該暗号資産の取得価額は、その贈与又は遺贈の時における暗号資産の価額となります。
2 令和元年分以後の所得税について適用されます。
3 個人が暗号資産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税の課税対象となります。
詳しくは、「4-1 暗号資産を相続や贈与により取得した場合」をご覧ください。
【関係法令等】
所法40
所令87
所基通達40-2、40-3
コメント:
Version 3で新しく登場した項目です。
特にコメントはありません。
2-11 暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い
問
暗号資産取引による所得を計算したところ、損失が生じました。
この損失を給与所得などの他の所得から差し引く(通算する)ことができますか。
答
雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。
所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じた損失に限られます。
雑所得については、これらの所得に該当しませんので、雑所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても、他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。
【関係法令等】
所法69
コメント:
Version1,2,3,4と内容はほとんど同じです。
雑所得では損益通算できませんが、事業所得や譲渡所得に該当すれば損益通算できる場合があります。
2-12 暗号資産の証拠金取引
問
暗号資産の証拠金取引については、外国為替証拠金取引(いわゆるFX)と同様に申告分離課税制度の対象となりますか。
答
仮想通貨の証拠金取引による所得については、租税特別措置法に規定する申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります。
外国為替証拠金取引(いわゆるFX)は、金融商品取引法上の金融商品先物取引等に該当しますので、申告分離課税の対象となります。
暗号資産の証拠金取引は、FXと同様に金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により、申告分離課税の対象から除かれていますので、その取引により得た所得については、総合課税の対象になります。
【関係法令等】
所法35
措法41の14
コメント:
Version1,2,3,4と内容はほとんど同じです。
なお、金融商品取引法の改正があり、暗号資産のデリバティブは金融商品取引法の適用を受けることになりました。
今までクリプトの取引所は資金決済法が求める金融庁登録をすればよかったですが、証拠金取引やFXなどのサービスを提供するには第一種金融商品取引業の登録が必要になりました。
以下のコメントはVersion1,2,3のものを転記したものです。
個人的に税の特例には反対の立場です。
税率は低いに越したことはありませんが、一部の人だけを優遇する税の特例は公平とは言えません。
2-13 暗号資産の信用取引
問
次の暗号資産信用取引を行った場合の所得の金額の計算方法を教えてください。
(例)
・ 9月1日 1BTCを1,000,000円で売付けた。
・ 9月24日 1BTCを800,000円で買付けた。
(注) 上記取引において暗号資産の売買手数料等については勘案していない。
答
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。
【計算式】
1,000,000円 [売付け価額] – 800,000 円 (注1) [買付け価額] = 200,000円 [所得金額] (注2)
(注)
1 譲渡原価は、個別法により計算した金額となります。
2 その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。
暗号資産信用取引とは、暗号資産交換業者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買をいいます。
この暗号資産信用取引の方法により、暗号資産の売付け(買付け)をし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買付け(売付け)をして決済をした場合における所得金額は、暗号資産の譲渡により通常得るべき対価の額(売付け価額)(注1)とその買付けに係る暗号資産の対価の額(買付け価額)(注2)との差額となります。
なお、暗号資産信用取引を行った場合の所得については、その取引の決済の日の属する年分の所得となります。
(注)
1 売付けを行った者が、暗号資産交換業者から支払を受ける金利は売付け価額に含め、暗号資産交換業者に支払ういわゆる品貸料は売付け価額から控除します。
2 買付けを行った者が、暗号資産交換業者に支払う金利は買付け価額に含め、暗号資産交換業者から支払を受けるいわゆる品貸料は買付け価額から控除します。
【関係法令等】
所令119の7
所基通達 36・37 共-22
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3 法人税関係
3-1 暗号資産関係
3-1-1 暗号資産の譲渡損益の計上時期
問
暗号資産の売却、暗号資産での商品の購入又は暗号資産同士の交換といった暗号資産取引を行ったことにより生じた譲渡損益は、いつの事業年度の益金の額又は損金の額に算入すればよいですか。
答
暗号資産の売却等に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度に計上することになります。
暗号資産の売却(「1-1 暗号資産を売却した場合」のケース)、暗号資産での商品の購入(「1-2 暗号資産で商品を購入した場合」のケース)又は暗号資産同士の交換(「1-3 暗号資産同士の交換を行った場合」のケース)を行う取引は、いずれも暗号資産の譲渡に該当しますので、これらの取引に係る譲渡損益は、その譲渡に係る約定をした日の属する事業年度において益金の額又は損金の額に算入すること(いわゆる約定日基準)になります。
【関係法令等】
法法61
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
仮想通貨の譲渡損益は売却等の「契約をした日の属する事業年度に計上する」とあります。
しかし、仮想通貨の譲渡を契約した日と実際の仮想通貨の引渡しのタイミングが異なる場合も実務的には十分にありえます。
仮想通貨の引渡し日が到来しておらず、代金も未回収の時点で期末を迎えた場合、税金だけが発生するのは事業運営上問題になることが予想されます。
会計上は約定日だけでなく、契約内容を踏まえて契約当事者間の権利と義務に着目し、取引の実態を表すように処理します。
有価証券の譲渡損益も税法上は原則約定日基準となっている一方、引き渡し基準も例外的に認められています。
取引の実態を踏まえた会計・税務処理を許容すべきだと考えます。
3-1-2 暗号資産の譲渡原価
問
暗号資産の譲渡原価について教えてください。
答
暗号資産の譲渡原価は、次のとおり計算します。
譲渡原価=暗号資産の1単位当たりの帳簿価額×その譲渡をした暗号資産の数量
暗号資産の譲渡利益(損失)額は、その暗号資産の譲渡の時における有償によるその暗号資産 の譲渡により通常得るべき対価の額とその暗号資産の譲渡原価との差額とされています。
この譲渡原価は、暗号資産の1単位当たりの帳簿価額(注)にその譲渡をした暗号資産の数量 を乗じた金額となります。
(注) 1単位当たりの帳簿価額の計算は、移動平均法又は総平均法により算出することとされています(法定評価方法は、移動平均法です。総平均法を採用する場合には、所轄税務署長に届出等をしてください)。
なお、この算出方法は暗号資産の種類等ごとに選定することとされています。
【関係法令等】
法法61
法令118の6
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
個人の所得税では取得原価の原則的計算方法が今までの移動平均法からVersion3で総平均法に変わったのは問2-5のコメントで記載したとおりです。
法人に関しては原則法は移動平均法とし、総平均法は届出制になりました。
個人と法人とで原則的な計算方法がなぜ違うのか、現時点では分かりません。
個人的には移動平均が望ましいと考えている点については問2-5や2-6のコメントを参照ください。
3-1-3 暗号資産の期末時価評価
問
当社は、事業年度終了の時に暗号資産を保有していますが、期末に何らかの処理をする必要はありますか。
答
法人が事業年度終了の時において有する暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産(注1)(本問において「市場暗号資産」といいます。)に限るものとし、特定自己発行暗号資産(注2)を除きます。)については、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とする必要があります。
なお、その市場暗号資産を自己の計算において有する場合には、その評価額と帳簿価額との差額(本問において「評価損益」といいます。)は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
また、この評価損益は翌事業年度で洗替処理をすることになります。
なお、時価評価金額は、暗号資産の種類ごとに次のいずれかにその暗号資産の数量を乗じて 計算した金額とされています。
(1) 価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の売買の価格(※1)
(※1) 公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日でその事業年度終了の日の最も近い日におけるその最終の売買の価格となります。
(2) 価格等公表者によって公表されたその事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の交換比率×その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る上記1の価格(※ 2)
(※2) 公表された同日における最終の交換比率がない場合には、同日前の最終の交換比率が公表された日でその事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の交換比率に、その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る上記1の価格を乗じて計算した価格となります。
(注)
- 活発な市場が存在する暗号資産とは、法人が保有する暗号資産のうち次の要件の全てに該当するものをいいます。
- イ 継続的に売買価格等(※3)が公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
- (※3)売買価格等とは、売買の価格又は他の暗号資産との交換の比率をいいます。
- ロ 継続的に上記イの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
-
- ハ 次の要件のいずれかに該当すること。
-
-
-
- (イ) 上記イの売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
-
-
-
-
-
- (ロ) 上記ロの取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
-
-
- 特定自己発行暗号資産とは、法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産であって、その時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている一定のものをいいます。
-
- 一定のものとは、その発行の時から継続して次のイ又はロの要件のいずれかに該当する暗号資産をいいます。
-
- イ その暗号資産につき、他の者に移転することができないようにする技術的措置であって、次の要件の全てに該当するものがとられていること。
-
- (イ) その移転することができない期間が定められていること。
-
- (ロ) その技術的措置が、その暗号資産を発行した法人(その法人との間に完全支配関係がある他の者を含みます。)の役員及び使用人その他一定の者のみによって解除をすることができないものであること。
-
- ロ その暗号資産が信託で次の要件の全てに該当するもの(受益者等課税信託に限ります。)の信託財産とされていること。
-
- (イ) その信託の受託者が信託会社のみであり、かつ、その信託の受益者等がその暗号資産を発行した法人のみであること。
-
- (ロ) その信託に係る信託契約において、その信託の受託者がその信託財産に属する資産及び負債を受託者等(その信託の受託者及び受益者等をいいます。)以外の者に譲渡しない旨が定められていること。
-
- (ハ) その信託に係る信託契約において、その暗号資産を発行した法人によって、その信託の受益権の譲渡及びその信託の受益者等の変更をすることができない旨が定められていること。
【関係法令等】
法法61
法令118の7、118の8、118の9
法規 26の10
参考
令和6年度税制改正の大綱(令和5年 12 月 22 日閣議決定)では、暗号資産の評価方法等について、次の見直しを行うこととされております。詳細につきましては、今後、法令等により明らかにされます。
○ 法人が有する市場暗号資産に該当する暗号資産で譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の期末における評価額は、次のいずれかの評価方法のうちその法人が選定した評価方法(自己の発行する暗号資産でその発行の時から継続して保有するものにあっては、次の1の評価方法)により計算した金額とするほか、所要の措置を講ずる。
- 原価法
- 時価法
(注1)上記の「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」とは、次の
要件に該当する暗号資産をいう。
- 他の者に移転できないようにする技術的措置がとられていること等その暗号資産
の譲渡についての一定の制限が付されていること。 - 上記1の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を有する者等が上記1の制限が付されている旨の暗号資産交換業
者に対する通知等をしていること。
(注2)上記の評価方法は、譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の
種類ごとに選定し、その暗号資産を取得した日の属する事業年度に係る確定申告書
の提出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこととする。
なお、評価方法を選定しなかった場合には、原価法(上記1の評価方法)により計算
した金額をその暗号資産の期末における評価額とする。
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
法人が保有する仮想通貨に関する未実現損益が課税対象となるという重大なルールが明文化されてしまいました。
個人の所得税では未実現利益(損失)への課税はありません。
法人税では未実現利益(損失)が課税がされるという点で両者の間で大きな取扱いの差が生まれました。
未実現利益(損失)は文字通り実現していないのでキャッシュになっていません。
実現していない利益がどのような理屈で課税対象になるのか、かなり苦しい説明になると思います。
売買目的有価証券などと同様の処理、ということなのかもしれませんが、未実現利益(損失)への課税は2つの点で大きな問題と考えます。
1つ目は法人の事業活動を阻害してしまう点です。
法人は様々な理由で仮想通貨を保有します。
一つは国や中央銀行が行うインフレ政策から企業の資金を保護し、バランスシートの健全化を図る目的です。
法人が仮想通貨を保有するもう一つの理由は法人の事業活動の内容によっては仮想通貨が必要になるからです。
これには様々なパターンがありますが、例としてスマートコントラクトを使ったサービスを展開している法人のケースを紹介します。
スマートコントラクトとはブロックチェーン上で実行されるプログラムです。
このプログラムを実行するには一般的に仮想通貨が必要です。
スマートコントラクトを使ってサービス提供している法人は、プログラムを日常的に実行させるために一定の仮想通貨を営業上の理由で保有する必要があります。
上記のように営業上の理由で仮想通貨を保有する法人は、期末時価評価により発生する税務エクスポージャーをヘッジしなければなりません。
デリバティブ取引を行うなど、コスト、事務負担、新たなカウンターパーティーリスクの負担を強いられることになります。
2つ目の大きな問題点は資金効率の悪化です。
利益は再投資されることで複利効果を生みますが、未実現利益への課税は資金効率を大幅に低下させます。
法人かそうでないかによって資金効率の有利不利が発生するのは公平とは言えませんし、最適な経営判断が歪められる結果、意図せぬ影響が出る可能性があります。
資金効率の向上は経済成長のために不可欠ですし、その結果税収も上がります。
未実現利益への課税はこのような点で問題と考えます。
Ver8に参考情報として「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」という概念が新たに登場します。
「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」については原価法を適用可能となります。
要件として1年以上は該当する暗号資産を移転できないようにすることに加えて暗号資産交換業者に通知することが必要です。
移転制限の方法として技術的なロックアップやマルチシグが挙げられていますが、どれも不必要にリスク(バグやミスによる資産の紛失)を増加させる可能性があるため注意が必要です。
暗号資産交換業者に対する通知要件にも疑問をもちます。
有価証券は目的別の会計・税務処理を行いますが、ロックアップなど当然必要ありませんし、証券会社などに対する通知も不要です。
なぜ暗号資産に関してはロックアップと交換業者に対する通知が必要なのか、理論的にこれを説明できる人はいないはずです。
3-1-4 活発な市場が存在する暗号資産
問
期末時価評価の対象となり得る活発な市場が存在する暗号資産とはどのようなものです
か。
答
活発な市場が存在する暗号資産とは、法人が有する暗号資産のうち次の要件の全てに該当す
るものをいいます。
- 継続的に売買価格等(注)が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
(注) 売買価格等とは、売買の価格又は他の暗号資産との交換の比率をいいます。 - 継続的に上記1の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
- 次の要件のいずれかに該当すること。
イ 上記1の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
ロ 上記2の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
活発な市場が存在する暗号資産に該当するかどうかは、法人が有する暗号資産の種類、その
有する暗号資産の過去の取引実績、その有する暗号資産が取引の対象とされている暗号資産取引所又は暗号資産販売所の状況等を勘案し、個々の暗号資産の実態に応じて判断することになりますが、この判断に際して、例えば、合理的な範囲内で入手できる売買価格等が暗号資産取引所又は暗号資産販売所ごとに著しく異なっていると認められる場合や、売手と買手の希望する価格差が著しく大きい場合には、上記1及び2の観点から、通常、市場は活発ではないと判断されることになります。
また、上記3の要件は、上記1の売買価格等を公表する者が自己のみであり、かつ、その売
買価格等が主として自己の計算において行われた取引によって形成された価格である場合に
は、時価を自ら創出・操縦することによる利益調整が可能となることから、このような価格は法人税の観点から公正な価格とはいえないため、時価法の対象から除外するために設けられた要件となります。
したがって、暗号資産交換業者が有する暗号資産の場合には、その有する暗号資産について、自己の運営する暗号資産取引所又は暗号資産販売所の売買価格等以外の売買価格等が存在すれば、その暗号資産は上記3の要件に該当することになります。
また、その有する暗号資産について、自己の運営する暗号資産取引所又は暗号資産販売所の売買価格等のみが公表されている場合でも、その売買価格等が主として他の者の計算において行われた取引(取次ぎ又は代理)によるものである場合には、その暗号資産は上記3の要件に該当することになります。
なお、活発な市場が存在する暗号資産であっても、特定自己発行暗号資産に該当するものは、期末時価評価の対象となりません。
【関係法令等】
法法 61
法令 118の7
コメント:
ほとんどの仮想通貨は取引量が少なく、活溌な市場が存在すると言えるほどの流動性は存在しません。
取引所の取引画面でチカチカと見える取引も殆どはLP(Liquidity Provider)やMM(Market Maker)と言われる業者によるものです。
大量のコインを売却しようとするとLPやMMは注文を取り下げますので大きなスリッページが発生します。
仮想通貨の中では圧倒的に流動性のあるBTCですが、国内のマーケットだと2%のスリッページでさばけるのは数億円程度です。
期末に時価評価する場合は流動性ディスカウントを反映することが合理的と考えます。
3-1-5 DEXにおいて取引される暗号資産
問
当社が有する暗号資産A(当社が発行したものではありません。)は、DEXに上場しています。
本件DEXでは、自動マーケットメイカーによって現時点における当該暗号資産Aと市場暗号資産Bとの交換比率が明らかにされ、その明らかにされた交換比率に基づき、随時、当該暗号資産Aと市場暗号資産Bとの交換の取引が行われています。
この場合に、当該暗号資産Aは法人税法上の期末時価評価の対象となりますか。
答
暗号資産Aが活発な市場が存在する暗号資産に該当する場合には、期末時価評価の対象となります。
法人税法上、活発な市場が存在する暗号資産とは、法人が有する暗号資産のうち次の要件の全てに該当するものをいいます。
- 継続的に売買価格等(注)が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
(注) 売買価格等とは、売買の価格又は他の暗号資産との交換の比率をいいます。 - 継続的に上記1の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
- 次の要件のいずれかに該当すること。
イ 上記1の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
ロ 上記2の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
ところで、DEXとは、一般に中央に管理者のいない分散型取引所のことをいいますが、DEXが市場の範囲に含まれるのかについては疑問が生じるところです。
この点、いわゆる市場には、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれると考えられるところ、本件DEXでは、自動マーケットメイカーによって現時点における暗号資産の交換比率が明らかにされ、その明らかにされた交換比率に基づき、随時、暗号資産の交換の取引が行われており、本件DEXは市場の範囲に含まれると考えられます。
このため、本件DEXにおいて公表される交換比率が他の暗号資産取引所において公表される交換比率と著しく異なるといった特殊な事情が認められず、本件DEXにおいて継続的に暗号資産の交換の取引が成立しているのであれば、本件DEXにおいて取引の対象となる暗号資産は上記1から3までの要件を満たす限り活発な市場が存在する暗号資産となります。
また、活発な市場が存在する暗号資産であっても特定自己発行暗号資産に該当するものは期末時価評価の対象となりませんが、暗号資産Aは貴社が発行したものではないとのことですので、特定自己発行暗号資産に該当せず、期末時価評価の対象となります。
この場合において、通常は、本件DEXによって公表された事業年度終了の時における最終の交換比率に、その交換比率により交換される他の活発な市場が存在する暗号資産の事業年度終了の時における最終の売買価格を乗じて計算した金額が期末の時価評価金額になるものと考えられます。
【関係法令等】
法法61
法令118の7、118の8
コメント:
FAQ3-1-4に対するコメントと同じです。
DEXでしか取扱いのないクリプトの流動性はかなり低く、公表されるSpot価格と売却により実際に得られる金額には大幅な乖離が想定されます。
DEXが利用する価格形成メカニズムであるAMM(Automatic Market Maker)はその仕組み上、取引額が大きくなればなるほど大きなスリッページが発生します。
また、ブロックチェーン上の取引は常に第三者により監視されており、金額の大きい取引にについては先回りされ、不利な価格で取引が完結してしまうリスクが常にあります。
これは通称サンドウィッチアタックと呼ばれ、MEV(Miner Extractable Value)の一種です。
株取引などの既存金融でも同じようなことはHigh Frequency Traderによって行われていますが、取引額に対する比率で言えばDEX取引の方が影響は大きいです。
DEXで形成されている価格を参考に期末時価評価をする場合は、流動性ディスカウントに加えて、MEVなどのコストを反映するのも合理的と考えます。
3-1-6 ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価評価
問
当社は、当社が有する暗号資産A(当社が発行したものではありません。)について、ステーキングによる報酬を得るために、暗号資産を他に移転できないような仕組みであるロックアップを行っています。
この暗号資産Aに関しては、所定の条件を満たしてロックアップが解除されるまでは、当社は譲渡ができない状態になっております。
この場合、当社がロックアップしている暗号資産Aについては、法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価損益を益金の額又は損金の額に算入する必要がありますか。
なお、暗号資産Aは、暗号資産取引所に上場しており、十分な数量及び頻度で取引が行われ、継続的に売買価格等が公表されております。また、当社は、その暗号資産取引所を運営していません。
答
法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価額と帳簿価額との差額を益金の額又は損金の額に算入することとなります。
法人が事業年度終了の時において有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産(特定自己発行暗号資産を除きます。)を自己の計算において有する場合には、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
本件では、その有する暗号資産はロックアップにより譲渡できない状態となっていますが、ロックアップ期間中にステーキング報酬を得ることができます。また、その有する暗号資産の将来的な価格変動リスク等を貴社が負うため、自己の計算において暗号資産Aを有するものと考えられます。
その他、本件においては、暗号資産Aは、継続的に売買価格等が公表されている等の所定の要件を満たしますので、活発な市場が存在する暗号資産となり、また、貴社が発行したものではないことから特定自己発行暗号資産に該当せず、貴社は事業年度終了の時において有する暗号資産Aについて、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、その評価額と帳簿価額との差額は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
【関係法令等】
法法61
法令 118の7
コメント:
活溌な市場が存在することに着目して期末時価評価の対象との結論になっています。
しかし、多くの人はこの結論に違和感を感じるはずです。
理由は保有目的を度外視しているからです。
イーサリアムは以前ビットコインの同様PoW(Proof of Work)を採用しマイナーがブロック生成を行っていました。
2022年にProof of Stake(PoS)に移行し、その後はバリデーターがブロックの生成を担っています。
バリデーターになるためには32ETHをステーク(ロックアップ)する必要があります。
イーサリアムのネットワーク維持に貢献するために32ETHを拠出して起業したとします。
期末を迎えた時点でETHが値上がりしていたとします。
税金を払うためにはETHを売ることになりますが、バリデーターとしての必要量を下回ってしまうため、事業存続ができなくなります。
保有目的によって会計・税務処理が変わるのが株式です。
売買目的有価証券は短期売買を目的としているものであり、期末の時価評価の対象になります。
一方、投資目的有価証券や子会社株式は短期売買が目的ではなく、株式を通じて投資先に影響力行使するために保有されるものです。
その目的を考慮し、投資有価証券と子会社株式の未実現利益については税務上課税されません。
活発な市場が存在したとしてもです。
クリプトに関しても保有目的は法人それぞれです。
保有目的を考慮した税務処理を採用することで既存の税務上の取扱いとの整合性も得られると考えます。
3-1-7 貸付けをした暗号資産の期末時価評価
問
当社は、当社が有する暗号資産A(当社が発行したものではありません。)について、使用料を得るために相対による貸付けを行っております。
この暗号資産Aに関しては、貸付期間が終了するまでは、当社は譲渡ができない状態になっております。
この場合、当社が貸付けしている暗号資産Aについては、法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価損益を益金の額又は損金の額に算入する必要がありますか。
なお、暗号資産Aは、暗号資産取引所に上場しており、十分な数量及び頻度で取引が行われ、継続的に売買価格等が公表されております。
また、当社は、その暗号資産取引所を運営していません。
答
法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価額と帳簿価額との差額を益金の額又は損金の額に算入することとなります。
法人が事業年度終了の時において有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産(特定自己発行暗号資産を除きます。)を自己の計算において有する場合には、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
本件では、その有する暗号資産を貸し付けていますが、貸付期間中に使用料を得ることができます。
また、その有する暗号資産の将来的な価格変動リスク等を貴社が負うため、自己の計算において暗号資産Aを有するものと考えられます。
その他、本件においては、暗号資産Aは、継続的に売買価格等が公表されている等の所定の要件を満たしますので、活発な市場が存在する暗号資産となり、また、貴社が発行したものではないことから特定自己発行暗号資産に該当せず、貴社は事業年度終了の時において有する暗号資産Aについて、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、その評価額と帳簿価額との差額は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
【関係法令等】
法法61
法令 118の7
コメント:
他の設問と同様のコメントです。
価格変動の大きいクリプトを貸し付けた場合で期末をまたぐような場合はヘッジ取引など、タックス・プランニングを検討する必要があります。
3-1-8 借入れをした暗号資産の期末時価評価
問
当社は、暗号資産交換業者以外の者から相対により暗号資産Aを借り入れ、これを借入期間が終了するまで他社に貸し付けることにより使用料を得ています。
この場合、当社が借入れをしている暗号資産Aについては、法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価損益を益金の額又は損金の額に算入する必要がありますか。
なお、暗号資産Aは、暗号資産取引所に上場しており、十分な数量及び頻度で取引が行われ、継続的に売買価格等が公表されております。
また、当社は、その暗号資産取引所を運営しておらず、その暗号資産取引所で暗号資産Aの取引も行っておりません。
答
法人税法上の期末時価評価の対象とはなり得ますが、評価額と帳簿価額との差額を益金の額又は損金の額に算入する必要はありません。
法人が事業年度終了の時において有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産
(特定自己発行暗号資産を除きます。)については、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、また、その暗号資産を自己の計算において有する場合は、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
ここでいう「有する」とは、所有権の対象とならないようなものを包摂する広い概念であり、暗号資産を借り入れている貴社がその借入暗号資産の処分権を有していること等に鑑みると、貴社は暗号資産を有していると解される場合もあると考えられます。
本件においては、暗号資産Aは継続的に売買価格等が公表されている等の所定の要件を満たしますので、活発な市場が存在する暗号資産となり、貴社が暗号資産を有していると解される場合には、暗号資産Aについて、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とすることになります。
しかしながら、返還を要する暗号資産Aの将来的な価格変動リスク等を貴社が負わないこと
に鑑みると、一般的には自己の計算において暗号資産Aを有するとはいえないため、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要はありません。
【参考】
貴社が、他の者から信用の供与を受けて借り入れた暗号資産を譲渡した場合は、暗号資産信用取引となりますので、その譲渡をした日の属する事業年度終了の時までに暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買戻しをしていないときは、「3-11 暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額」のとおり、その時において買い戻して決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額を、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
【関係法令等】
法法61
法令 118の7
コメント:
参考情報の内容が気になります。
クリプト建てで借入をし、そのクリプトを現金などの他の資産に換金した場合、借入金に対するExposureが残ります。
具体例で見ましょう。
前提:借入時のクリプトの時価100 期末時点のクリプトの時価150
クリプトを借り入れたと同時に円に換金したとします。
1 借入時の仕訳:
クリプト 100 借入 100
2 円換金時の仕訳:
現金 100 クリプト 100
3 期末で借入れたクリプトの時価が上がった場合、次のような仕訳で借入金を増額させる必要があります:
借入時価評価損 50 借入 50
FAQ3-1-7により、貸付側は逆の仕訳をしているので整合します。
4 貸付側の仕訳
貸付 50 貸付時価評価益 50
しかし、参考の内容によると、期末までに換金したクリプトを買い戻していない場合は、期末に“買い戻したものとみなして”計算した損益相当額を計上する、とあります。
詳細は不明なので推測になりますが、以下のような仕訳が考えられます:
5 期末に値上がりしたクリプトを買い戻したとみなす仕訳:
クリプト 150 買い戻しみなし益150
3の仕訳で50の評価損を計上しているのでネットで100の益になってしまいます。
5の仕訳で認識した益は実際に買い戻しをした時にリバースされますのでその時に費用として認識されます。
6 実際にクリプトを買い戻した時の仕訳(時価はさらに200に上昇したと仮定):
買い戻しみなし益 150 クリプト 150
クリプト 200 現金 200
7 同時に借入を返済した場合の仕訳
借入時価評価損 50 借入 50
借入 200 クリプト 200
まとめると、
みなし買い戻しの規定がない場合の年度別課税所得:
1年目:50のマイナス
2年目:50のマイナス
通算100のマイナス
みなし買い戻しの規定を適用した場合の年度別課税所得:
1年目:100のプラス
2年目:200のマイナス
通算100のマイナス
貸付側の税務処理と整合するのは前者です。
みなし買い戻しの規定の狙いがどこにあるのか現時点では分かりませんが、貸付側の税務処理との整合性、追加の事務手続きによる負担を考えると既存の税務処理のままでよいと思いました。
なお、「3-11 暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額」と3-11にレファレンスされていますが、3-1-13の誤りだと思います。
3-1-9 特定自己発行暗号資産に該当する暗号資産
問
当社は、当社が発行し、かつ、発行の時から継続して有している暗号資産Aについて、秘密鍵を4個作成し、そのうち3個の秘密鍵がなければその暗号資産を移転することができなおい措置をその発行の時から継続してとっています。
また、そのうちの2個の秘密鍵が記載された書類を顧問税理士に預け、保管委託契約を締結しています(その2個の秘密鍵は、その預けられた書類にのみ記載されています。)。
契約上の保管期間は2年としており、保管期間が満了するまで預けた秘密鍵の返却を求めることはできません。
暗号資産Aには活発な市場がありますが、期末において時価評価をする必要はありますか。
当社の顧問税理士は、当社及び関係会社の役員及び使用人ではなく、また、これらの者との間に親族関係その他の私的な関係はありません。
答
貴社が有する暗号資産Aは、秘密鍵の保管期間が満了するまでは特定自己発行暗号資産に該当するため、保管期間中に到来する貴社の事業年度終了の時においては時価評価をする必要はありません。
法人が、事業年度終了の時において有する暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産については、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とし、また、その暗号資産を自己の計算において有する場合は、その評価額と帳簿価額との差額をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。
一方で、活発な市場が存在する暗号資産であっても、法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産に対し、その発行の時から継続して、他の者に移転することができないようにする技術的措置であって次の1及び2の要件のいずれにも該当する措置をとっている場合の暗号資産は特定自己発行暗号資産とされ、期末時価評価の対象となりません。
- その移転することができない期間が定められていること。
- その技術的措置が、その暗号資産を発行した法人(その法人との間に完全支配関係がある他の者を含みます。以下「発行法人等」といいます。)の役員及び使用人(以下「役員等」といいます。)その他一定の者(※)(以下、これらの者をまとめて「関係者」といいます。)のみによって解除をすることができないものであること。
(※) 一定の者とは、次の者をいいます。
イ 発行法人等の役員等の親族
ロ 発行法人等の役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
ハ 上記イ又はロ以外の者で発行法人等の役員等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
ニ 上記ロ又はハの者と生計を一にするこれらの者の親族
貴社は、暗号資産Aに係る秘密鍵のうち2個が記載された書類を、貴社の関係者ではない顧問税理士に保管委託していますが、契約上定められた保管期間が満了するまではその預けた秘密鍵の返却を求めることができないとのことです。
暗号資産Aは4個の秘密鍵のうち3個の秘密鍵がなければ移転させることができないとのことですから、秘密鍵のうちの2個がその保管委託された書類でしか確認することができない以上、顧問税理士との保管委託契約の期間中は、暗号資産Aは貴社の関係者のみでは移転することができない状態にあります。
また、契約上の保管期間、すなわち暗号資産Aを移転することができない期間は2年と定められていることから、貴社が暗号資産Aに対して行ったこれら一連の措置は上記1及び2の要件のいずれにも該当します。貴社は、これらの措置を発行の時から継続してとっていますので、暗号資産Aは特定自己発行暗号資産に該当し、期末における時価評価の対象となりません。
なお、秘密鍵の保管期間が満了した場合は、その時点で上記1の要件を充足しなくなることから、暗号資産Aは特定自己発行暗号資産に該当しないこととなります。
【関係法令等】
法法61
法令118の7
法規26の10
法基通達2-3-67の2
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
特定自己発行暗号資産という新たな概念が登場し、1年以上のロックアップをすれば期末時価評価ではなく原価法を採用できるというものです。
事例で秘密鍵を税理士に渡していますが、税理士が秘密鍵を無くした場合、暗号資産が動かせなくなるので自社発行だから(いつでも再発行できるから)採れるとても危険なスキームです。
3-1-10 複数の事業者が共同発行する暗号資産
問
当社は、他の複数の事業者と共同でプロジェクトを立ち上げる予定です。
当該プロジェクトに係る暗号資産を新たに発行するに当たり、共同事業者間の協定であらかじめ定められた量の暗号資産が、発行と同時に各事業者に割り当てられます。
発行時に当社が割当てを受けた暗号資産について、割当ての時から継続して譲渡制限を付されているものは、特定自己発行暗号資産となりますか。
答
貴社が割当てを受ける暗号資産のうち、割当ての時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている一定のものに該当するものは、特定自己発行暗号資産となります。
法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産であってその時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている一定のものは、特定自己発行暗号資産となります。
この一定のものとは、その発行の時から継続して次の1又は2の要件のいずれかに該当する暗号資産をいいます。
- その暗号資産につき、他の者に移転することができないようにする技術的措置であって、次の要件の全てに該当するものがとられていること。
イ その移転することができない期間が定められていること。
ロ その技術的措置が、その暗号資産を発行した法人(その法人との間に完全支配関係がある他の者を含みます。)の役員及び使用人その他一定の者のみによって解除をすることができないものであること。 - その暗号資産が信託で次の要件の全てに該当するもの(受益者等課税信託に限ります。)の信託財産とされていること。
イ その信託の受託者が信託会社のみであり、かつ、その信託の受益者等がその暗号資産を発行した法人のみであること。
ロ その信託に係る信託契約において、その信託の受託者がその信託財産に属する資産及び負債を受託者等以外の者に譲渡しない旨が定められていること。
ハ その信託に係る信託契約において、その暗号資産を発行した法人によって、その信託の受益権の譲渡及びその信託の受益者等の変更をすることができない旨が定められていること。
複数の事業者が共同で事業を行い、その事業に係る暗号資産を共同で発行する場合、一般的に、共同事業者間において締結する契約又は協定において、各事業者がその発行時に割当てを受ける暗号資産の数量が定められていることが考えられます。
このように、共同で事業を行う複数の事業者が共同で暗号資産を発行する場合に、その発行時に各事業者が契約又は協定に定められた数量の割当てを受けることは、割当てを受けたそれぞれの事業者において、自ら行う共同事業に係る暗号資産を発行したことと同視できることから、貴社が、共同事業者間の契約又は協定に従って発行と同時に割当てを受ける暗号資産については、その割当ての時から継続して有するもので、かつ、その時から継続して上記1又は2の要件のいずれかに該当するものは、特定自己発行暗号資産に該当することとなります。
【関係法令等】
法法 61
法令 118の7
法規 26の10
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
FAQ3-1-9に対するコメントと同じです。
3-1-11 暗号資産信用取引を行った場合
問
次の暗号資産信用取引を行った場合の所得の金額の計算方法を教えてください。
(例)
・9月1日 1BTCを1,000,000円で売付けた。
・9月24日 1BTCを800,000円で買付けた。
(注) 上記取引において暗号資産の売買手数料等については勘案していない。
答
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。
【計算式】
1,000,000円 [売付け価額] – 800,000 円 (注1) [買付け価額] = 200,000 円 [所得の金額]
(注)
1 譲渡原価は、個別法により計算した金額となります。
暗号資産信用取引とは、資金決済に関する法律第2条第7項に規定する暗号資産交換業を行う者(本問において「暗号資産交換業者」といいます。)から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買をいいます(以下同じです)。
この暗号資産信用取引の方法により、暗号資産の売付けをし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買付けをして決済をした場合における暗号資産の譲渡損益額は、暗号資産の譲渡により通常得るべき対価の額(売付け価額)(注2、4)とその買付けに係る暗号資産の買付けに係る対価の額(買付け価額)(注3、4)との差額になります。
(注)
2 暗号資産交換業者から支払を受ける金利に相当する額は、売付け価額に含めます。
3 暗号資産交換業者に支払う買委託手数料及びいわゆる品貸料は、買付け価額に含めます。
4 上記2及び3については、継続適用を条件として、その発生に応じて収益又は費用として益金の額又は損金の額に算入している場合は、それが認められます(ただし、売買委託手数料を除きます)。
また、これとは反対の暗号資産信用取引の方法により、暗号資産の買付けをし、その後にそ
の暗号資産と種類を同じくする暗号資産の売付けをして決済をした場合における暗号資産の
譲渡損益額も、暗号資産の譲渡により通常得るべき対価の額(売付け価額)(注 5、7)とその買付けに係る暗号資産の買付けに係る対価の額(買付け価額)(注 6、7)との差額になります。
(注)
5 他の者から支払を受けるいわゆる品貸料は、売付け価額に含めます。
6 他の者に支払う買委託手数料及び金利に相当する額は、買付け価額に含めます。
7 上記5及び6については、継続適用を条件として、その発生に応じて収益又は費用として益金の額又は損金の額に算入している場合は、それが認められます(ただし、売買委託手数料を除きます)。
なお、いわゆる暗号資産FX取引や暗号資産先物取引は、暗号資産信用取引ではなくデリバティブ取引に該当します。
【関係法令等】
法法61、61の5
法令118の6
法基通達2-3-62
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3-1-12 暗号資産信用取引の譲渡損益の計上時期
問
暗号資産信用取引を行ったことにより生じた譲渡損益は、いつの事業年度に計上すればよいですか。
答
それぞれ次の日の属する事業年度に計上することになります。
(1) 暗号資産の売付けをし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買付けをして決済するもの……その決済に係る買付けの契約をした日
(2) 暗号資産の買付けをし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の売付けをして決済するもの……その決済に係る売付けの契約をした日
暗号資産信用取引に係る譲渡損益の計上時期は、暗号資産の売付けをし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買付けをして決済するもの(上記答1)は、「3-1 暗号資産の譲渡損益の計上時期」の暗号資産取引の約定日基準の例外として、売付けの契約をした日ではなく、その決済に係る買付けの契約をした日の属する事業年度になります。
また、暗号資産の買付けをし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の売付けをして決済するもの(上記答2)は、「3-1 暗号資産の譲渡損益の計上時期」の暗号資産取引の約定日基準どおり、その決済に係る売付けの契約をした日の属する事業年度になります。
【関係法令等】
法法61
法規26の9
法基通達2-1-21の14
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3-1-13 暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額
問
当社は、暗号資産信用取引を行っていますが、事業年度終了の時に暗号資産信用取引で決済されてないものがあります。
期末に何らかの処理をする必要はありますか。
答
法人が暗号資産信用取引を行った場合で、事業年度終了の時において決済されていないものがあるときは、事業年度終了の時に決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額(本問において「みなし決済損益額」といいます。)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。
みなし決済損益額は、次の区分に応じてそれぞれ次の金額とされています(事業年度終了の時に決済されていない暗号資産信用取引に係る暗号資産に限ります)。
(1) 暗号資産信用取引の方法により暗号資産の売付けをしている場合
その売付けに係る対価の額 – (その暗号資産の期末時の時価評価額 × その暗号資産の数量)
(2) 暗号資産信用取引の方法により暗号資産の買付けをしている場合
(その暗号資産の期末時の時価評価額 × その暗号資産の数量) – その買付けに係る対価の額
なお、みなし決済損益額を計上した場合は、翌事業年度で洗替処理をします。
【関係法令等】
法法61
法令118の12
法規26の11
コメント:
Version 3で新たに登場した項目です。
問3-3の期末に法人が保有する暗号資産の未実現損失が課税対象になるのと似たような論点です。
問3-3の同様の弊害があると思います。
3-2 電子決済手段関係
3-2-1 電子決済手段の取得時の課税関係
問
当社は電子決済手段を金銭の払込みにより取得しました。
この場合の税務上の取得価額はどうなりますか。
答
電子決済手段の券面額に基づく価額が税務上の取得価額となります。
電子決済手段は、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、券面額に基づく価額と同額で償還を約するもの及びこれに準ずる性質を有するものとされており、要求払預金に類似する性格を有し、金銭債権に該当すると考えられます。
ところで、会計上、電子決済手段を取得した場合は、その受渡日にその電子決済手段の券面額に基づく価額をもって電子決済手段を資産として計上し、その電子決済手段の取得に際して払い込んだ金銭の額とその券面額に基づく価額との間に差額があるときは、その差額を損益として処理することとされています。
したがって、税務上も、電子決済手段はその券面額をもって取得価額とし、その払い込んだ金銭の額と取得した電子決済手段の券面額に基づく価額との間に差額があるときは、券面額に基づく価額に満たない部分の金額又は券面額に基づく価額を超える部分の金額は、電子決済手段を取得した事業年度の所得金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとなります。
なお、その券面額に基づく価額を超える部分の金額が寄附金の額に該当する場合には、その寄附金の額に一定の損金算入制限がかかります。
【関係法令等】
法法 22④、37
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3-2-2 電子決済手段の譲渡時の課税関係
問
当社は電子決済手段を第三者に譲渡しました。この場合の課税関係はどうなりますか。
答
電子決済手段を第三者に譲渡した場合において、第三者から受け取った対価の額と電子決済手段の帳簿価額に差額がある場合には、電子決済手段を移転した事業年度において、譲渡損益の額を所得金額の計算上益金の額又は損金の額に算入することになります。
具体的には、貴社が第三者から受け取った対価の額が電子決済手段の帳簿価額を超える場合にはその超える部分の金額を所得金額の計算上益金の額に算入し、第三者から受け取った金銭の額が電子決済手段の帳簿価額に満たない場合にはその満たない部分の金額を所得金額の計算上損金の額に算入することとなります。
なお、その帳簿価額に満たない部分の金額が寄附金の額に該当する場合には、その寄附金の額に一定の損金算入制限がかかります。
【関係法令等】
法法22④、22の2、37
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3-2-3 電子決済手段の期末時の課税関係
問
当社は電子決済手段を有していますが、期末に時価評価をする必要はありますか。
また、期末に有する電子決済手段に対して貸倒引当金を繰り入れた場合の税務上の取扱いはどうなりますか。
答
期末に有する電子決済手段について、時価評価をする必要はありません。
また、期末に有する電子決済手段に対する貸倒引当金の繰入額は、その電子決済手段が個別評価金銭債権に該当する場合を除き、所得金額の計算上損金の額に算入されません。
電子決済手段は、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、券面額と同額で償還を約するもの及びこれに準ずる性質を有するものとされており、要求払預金に類似する性格を有し、金銭債権に該当すると考えられます。
金銭債権については、税務上は期末時価評価の対象とはされていません。このため、貴社が期末に有する電子決済手段について、時価評価をする必要はありません。
また、資本金の額が1億円以下である等の一定の要件に該当する法人は、一定の金銭債権について、その貸倒引当金の繰入額を所得金額の計算上損金の額に算入することが認められています。
この点、預貯金や預け金に類するような債権は一括評価金銭債権(貸倒実績率に基づく貸倒引当金の繰り入れの対象となる、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権)には該当しないこととされているところ、電子決済手段は一括評価金銭債権に該当しないため、法人が期末に保有する電子決済手段が個別評価金銭債権(更生計画認可の決定に基づいて弁済を猶予される等の事実が生じていることによりその一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権)に該当しない限りは、その電子決済手段に対する貸倒引当金の繰入額は所得金額の計算上、損金の額に算入されません。
【関係法令等】
法法52①②
法人税基本通達 11-2-18
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
3-2-4 外貨建電子決済手段の期末時の課税関係
問
当社は外貨建電子決済手段(外国通貨で表示される電子決済手段をいいます。以下同じで
す。)を有していますが、期末における円換算の方法はどうなりますか。
答
外貨建電子決済手段の期末における換算方法は、期末時換算法又は発生時換算法のいずれかを選定することとされ、その期末における換算方法を選定しなかった場合には、発生時換算法により換算することとなります。
電子決済手段は、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、券面額と同額で償還を約するもの及びこれに準ずる性質を有するものとされており、要求払預金に類似する性格を有し、金銭債権に該当すると考えられるところ、外貨建電子決済手段に関しては、税務上、短期外貨建債権以外の外貨建債権に該当することになります。
短期外貨建債権以外の外貨建債権の期末における換算方法は、期末時換算法又は発生時換算法のいずれかを選定することができます。
ただし、その期末における換算方法を選定しなかった場合の法定の換算方法は発生時換算法とされていますので、期末時換算法を選定する場合には、「外貨建資産等の期末換算方法等の届出書」による届出又は「外貨建資産等の期末換算方法等の変更承認申請書」による変更の申請が必要となります。
【関係法令等】
法法61の9
法令122の4~122の7
コメント:
Version 8で新たに登場した項目です。
特にコメントはありません。
4 相続税・贈与税関係
4-1 暗号資産を相続や贈与により取得した場合
問
暗号資産を相続や贈与により取得した場合の課税関係はどうなりますか。
答
被相続人等から暗号資産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は
贈与税が課税されます。
相続税法では、個人が、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を相続若しくは 遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税の課税対象となることとされています。
暗号資産については、決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することが できる財産的価値」と規定されていることから、被相続人等から暗号資産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されることになります。
(注) 暗号資産の贈与等をした個人の課税関係
個人が、贈与(相続人に対する死因贈与を除く。)又は遺贈(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除く。)により暗号資産を移転させた場合には、所得税の計算上、その贈与又は遺贈の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があります。
詳しくは、「2-10 暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」をご覧ください。
【関係法令等】
相法2、2の2
相基通達11の2-1
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
処理に関して特にコメントはありません。
しかし、もっと大事なのは万が一の時に備えて準備は入念にしておくことです。
国内の取引所にビットコインを置いていた場合は口座の存在さえ家族が知っていれば引き渡しは無事に済むと思います。
国外の取引所の場合はそう簡単にはいきません。
そして、ビットコインはセルフ・カストディ、自分で管理が原則です。
取引所にビットコインを置いたままにすることは推奨されません。
取引所がHackされた場合はビットコインは戻ってきませんし、実際に取引所は何度もHack、あるいはビットコインを流出しています。
ウォレットの保管場所、使用方法、など、万が一のことを想定して家族に無事にビットコインが渡るよう、対策しておくことが重要です。
4-2 相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法
問
相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法について教えてください。
答
活発な市場が存在する暗号資産は、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換 業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。
暗号資産の評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の 定めのない財産の評価))の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。
この場合、活発な市場が存在する(注1)暗号資産については、活発な取引が行われることに よって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格(注2、3、4)によって評価します。
なお、活発な市場が存在しない暗号資産の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が
成立していないため、その暗号資産の内容や性質、取引実態等を勘案し、個別に評価します(注5)。
(注)
1 「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
2 「暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格」には、暗号資産交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含みます。
3 暗号資産交換業者(暗号資産販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、納税義務者が暗号資産を暗号資産交換業者に売却する価格(売却価格)で評価して差し支えありません。
4 納税義務者が複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合には、納税義務者の選択した暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価して差し支えありません。
5 例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが考えられます。
【関係法令等】
評価通達4-3、5
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
活発な市場とは十分な数量及び頻度で取引が行われている市場とされていますが、十分なが定義されていないのであまり役に立たない定義になっています。
取引所の取引画面を見ると画面がチカチカ動いていて、活発に取引が行われているように見えます。
しかし、ほとんどは業者(流動性提供者、Liquidity Provider)による取引です。
仮想通貨はまとまった金額を売ろうとすると価格は大きく下がります。
まともな流動性があってまとまった量を市場価格を動かさずにさばけるのはビットコインくらいです。
ある程度の金額規模の仮想通貨を評価する場合はこの流動性ディスカウントを反映できないか、専門家に相談するのがいいと思います。
5 源泉所得税関係
5-1 暗号資産による給与等の支払
問
当社は、従業員からの要望を受け、労働協約で別段の定めを設け、月々の給与等の一部を 取引所で売買可能な暗号資産で支払うことにしました。
この場合の給与に係る所得税の源泉 徴収をどのように行えばよいですか。
(例) 10月10日 従業員の9月分給与について、200,000円を現金で支払い、一部を当社が保有する暗号資産(給与支給時の取引価格は50,000円)で支払った。
答
従業員の給与の支給額は、現金200,000円と暗号資産の価額50,000円を合計した250,000円となりますので、250,000円を給与の支給額(月額)として源泉徴収税額を計算することになります。
給与は、金銭で支給されるのが一般的ですが、お尋ねのケースのように、労働協約で別段の 定めを設け、給与の一部を暗号資産で支給する場合、その暗号資産による支給分も給与所得の 収入金額に該当します。
したがって、源泉徴収義務者である貴社は、給与の支払の際、暗号資産の支給分も合わせて 源泉徴収税額の計算を行うことになります。
なお、現金以外の現物給与については、その経済的利益を評価する必要がありますが、暗号資産の場合は、その支給時の価額で評価することになります。
【関係法令等】
所法28、36、183
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これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
給与をビットコインで受け取る場合、法定通貨で決まっている給料を法定通貨でもらう代わりにビットコインでもらうのが一般的だと思います。
しかし、ビットコイン建てで報酬を決めている人も実際にいます。
1時間、0.01BTC、のようにです。
ビットコイン建てで物の価値を測る人が増えるほど、ビットコインは通貨として受け入れられていくようになります。
6 消費税関係
6-1 暗号資産を譲渡した場合の消費税
問
当社は、国内の暗号資産交換業者を通じて、保有する暗号資産を譲渡しました。
この場合 の消費税の課税関係を教えてください。
答
国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡には、消費税は課されません。
消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は非課税とされています。
国内の仮想通貨交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、この支払手段等の譲渡に該当し、消費税は非課税とな ります。
また、消費税の確定申告を一般課税により行う場合には、仕入控除税額を計算する際、当課 税期間の課税売上高、免税売上高及び非課税売上高を基に課税売上割合を算出することとなりますが、支払手段等に該当する当該暗号資産の譲渡については、課税売上割合の算出に当たって、非課税売上高に含めて計算する必要はありません。
(参考)
1 暗号資産交換業者に対して暗号資産の売買に係る仲介料として支払う手数料は、仲介に係る役務の提供の対価として支払うものですので、課税対象になります。 なお、暗号資産の売買を目的とした購入に係る手数料は、消費税の申告において個別対応方式を採用する場合、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ(いわゆる非課税売上げに対応する課税仕入れ)に該当することとなります。
2 平成29年6月以前に国内において行った暗号資産の譲渡は、消費税の課税対象となります。なお、消費税の課税事業者に該当する方が、平成29年6月以前に国内において行った暗号資産の購入に係る課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けるためには、取引の相手方の氏名等一定の事項 が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となりますが、暗号資産交換業者などの媒介者を介して行われる暗号資産の購入に関し、取引の相手方又は媒介者から請求書等の交付を受けられないなど、やむを得ない理由がある場合には、帳簿にその旨と媒介者の氏名等を記載して保存することとなります。
3 令和5年6月1日以後に国内において行われる電子決済手段の譲渡についても、上記と同様に、支払手段等の譲渡に該当しますので、消費税は非課税となります。
また、当該電子決済手段の譲渡についても、課税売上割合の算出に当たって、非課税売上高に含めて計算する必要はありません。
【関係法令等】
消法6①、30、別表1二
消令9④、48②
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
仮想通貨の譲渡が消費税の対象にならないのは本当に良かったと思います。
金(ゴールド)の譲渡には消費税がかかります。
その分日本の価格と海外の市場価格と差が生じます。
海外で金を買って日本で売れば消費税分の利益を得ることができます。
金の場合は日本に持ち込む際に税関で課税されますが、仮想通貨はボーダーレスです。
海外との価格差がどのような結果を生むかは分かりませんが、たとえ短期的だったとしても自然な価格形成を阻害する可能性がある要因が減ったのはいいことだと思います。
また、ビットコインは未来のお金になろうとしています。
譲渡の際に消費税がかかっていたのでは取引記録の維持が複雑になりすぎて決済手段として機能しません。
その点においても非課税として整理されたのはいいことだと思います。
6-2 暗号資産の貸付けにおける利用料
問
当社は、国内の暗号資産交換業者との間で暗号資産貸借取引契約を締結し、保有している暗号資産を貸し付けることにより、1年後の契約期間満了時に、当該貸し付けた暗号資産に一定の料率を乗じた金額を利用料として受領しました。
暗号資産交換業者が定める利用規約には、当社が暗号資産交換業者に対して暗号資産を貸し付け、契約期間が満了した後、当該貸し付けた暗号資産と同種及び同等の暗号資産が暗号資産交換業者から当社に返還されるとともに、当該返還に際して、利用料が支払われることが規定されています。
この場合の消費税の課税関係を教えてください。
答
利用料を対価とする暗号資産の貸付けには、消費税が課されます。
暗号資産交換業者が定める利用規約には、契約期間が満了した後、貸し付けた暗号資産と同種及び同等の暗号資産が暗号資産交換業者から貴社に返還されるとともに、利用料が支払われることが規定されていることから、ご質問の取引は事業者が対価を得て行う「資産の貸付け」に該当します。
また、ご質問の取引は、支払手段及びこれに類するもの(暗号資産)の譲渡、利子を対価とする金銭の貸付け及び有価証券の貸付けのほか、消費税法別表第二に掲げる非課税取引のいずれにも該当しません。
したがって、利用料を対価とする暗号資産の貸付けは、消費税の課税対象となります。
【関係法令等】
消法2①八、4①、6①、別表第1
消令9④
コメント:
Version5で新しく登場した項目です。
クリプトを貸し出してイールドを得る、いわゆるレンディングが流行っているのでそれに対応するFAQだと想定します。
一般的な感覚だと資産を貸し出すことによって得られるリターンは利息のように感じますが、FAQでは金銭の貸付などに相当しないから利息ではなく、”利用料”と整理しています。
米国でもクリプトのイールド商品は金銭の貸付ではなく証券(Security)であるという主張をSECがしています。
それ以上のコメントはありませんが、レンディングは十分に注意をしてから行った方がいいと個人的には思います。
ユーザーが得る利回りよりもクリプトを借りる方は高い利回りを得る必要があるわけで、とてもリスクが高いように思います。
預金感覚で貸し出すと最悪戻ってこない可能性があります。
取引所にクリプトを置いたままにしない方がいいのと同じでレンディングも同じように考えるべきと思います。
7 法定調書関係
7-1 財産債務調書への記載の要否
問
国内外の暗号資産取引所に暗号資産を保有しています。
暗号資産は財産債務調書への記載の対象になりますか。
答
暗号資産を12月31日において保有している場合、財産債務調書への記載が必要になります。
暗号資産を預けている暗号資産取引所の所在が国内か国外かについては、財産債務調書への記載の要否に影響はありません。
財産債務調書には、暗号資産の種類別(ビットコイン等の銘柄別)及び用途別(一般用及び事業用の別)に記載してください。
(注) 暗号資産の所在については、国外送金等調書規則第12条第3項第6号及び第15条第2項の規定により、その財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在となります。
【関係法令等】
国外送金等調書法6の2① ③
国外送金等調書令 12 の2⑧
国外送金等調書規則 12③六、15①②、別表第三
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
取引所にはなるべくビットコインを置いたままにしないほうがいいという点以外には特にコメントはありません。
なお、財産債務調書の提出要件は以下のとおりです。
財産債務調書の提出が必要となる方は、
所得税等の確定申告書を提出しなければならない方
または
所得税の還付申告書(その年分の所得税の額の合計額が配当控除額および年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える場合におけるその還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、
次の1および2のいずれにも該当する方です。
1 その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超えること
各種所得金額の合計額は、申告分離課税の所得がある場合には、それらの特別控除後の所得金額の合計額を加算した金額です。ただし、(1)純損失や雑損失の繰越控除、(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除、(3)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除、(4)上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、(5)特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除、(6)先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けている場合は、その適用後の金額をいいます。
2 その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産またはその価額の合計額が1億円以上である国外転出特例財産を有すること(相続開始年に相続または遺贈により取得した財産については、合計額の判定から除くことができます。)
ここでいう「財産の価額」とは財産の価額の総額をいい、財産の価額から債務の金額を差し引いた金額ではありません。
また、「国外転出特例対象財産」とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等ならびに同条第2項に規定する未決済信用取引等および同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいいます。
(注) 令和5年分以後の財産債務調書については、上記のほか、「その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者」の方が対象となります。
7−2 財産債務調書への暗号資産の価額の記載方法
問
暗号資産の価額は、どのように記載すればよいですか。
答
暗号資産の価額については、その年の 12 月 31 日における「時価」又は「見積価額」により記載します。
活発な市場が存在する(注1)暗号資産については、活発な取引が行われることによって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、財産債務調書を提出される方が取引を行っている暗号資産交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格(注2、3、4)を時価として記載します。
(注)
1 「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
2 「暗号資産交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格」には、暗号資産交換業者が財産債務調書を提出される方の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含みます。
3 暗号資産交換業者(暗号資産販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、財産債務調書を提出される方が暗号資産を暗号資産交換業者に売却する価格(売却価格)を記載して差し支えありません。
4 財産債務調書を提出される方が複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合には、財産債務調書を提出される方の選択した暗号資産交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格によって記載して差し支えありません。
時価による算定が困難な場合、その年の 12 月 31 日における財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額を見積価額として記載しても差し支えありません。
この場合の暗号資産の見積価額は、例えば、次のような方法により算定された価額をいいます。
① その年の12月31日における売買実例価額(その年の12月31日における売買実例価額が
ない場合には、その年の12月31日前の同日に最も近い日におけるその年中の売買実例価額)のうち、適正と認められる売買実例価額
② ①による価額がない場合には、その年の翌年1月1日から財産債務調書の提出期限までに その暗号資産を譲渡した場合における譲渡価額
③ ①及び②がない場合には、取得価額
【関係法令等】
国外送金等調書法6の2④
国外送金等調書令12の2②
国外送金等調書規則12⑤、15④
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
特にコメントはありません。
7-3 国外財産調書への記載の要否
問
国外の暗号資産取引所に暗号資産を保有しています。
暗号資産は国外財産調書の対象になりますか。
答
国外財産調書への記載の対象にはなりません。
暗号資産は、国外送金等調書規則第12条第3項第6号の規定により、財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在により「国外にある」かどうかを判定する財産に該当します。
また、国外財産調書は、居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非永住者の方を除きます。)が提出することとされています。
したがって、居住者が国外の暗号資産取引所に保有する暗号資産は、「国外にある財産」とはなりませんので、国外財産調書への記載の対象にはならず、財産債務調書への記載の対象となります。
詳しくは「7−1 財産債務調書への記載の要否」を参照してください。
【関係法令等】
国外送金等調書法5
国外送金等調書令 10⑦
国外送金等調書規則 12③六
コメント:
これはVersion2で新規に登場した項目です。
以下はVersion2の時のコメントを転記したものです。
取引所にはなるべくビットコインを置いたままにしないほうがいいという点以外には特にコメントはありません。
なお、国外財産調書の提出義務の詳細は下記のとおりです。
対象者
国外財産調書の提出が必要となる方は、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産(相続開始年に取得した相続国外財産については、その合計額の判定から除くことができます。)を有する「非永住者以外の居住者」である方です。
ここでいう「居住者」および「非永住者」は、所得税法に規定する居住者および非永住者をいい、居住者であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況により判定します。
所得税法に規定する「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、「非永住者」とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。
対象物
その年の12月31日において保有する国外財産が対象となります。
国外財産とは、「国外にある財産をいう」とされ、「国外にある」かどうかの判定は、財産の種類ごとに、その年の12月31日の現況で行います。
また、国外財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされており、その邦貨換算は、同日における「外国為替の売買相場」によることとされています。
まとめ
FAQも今回のリリースでVersion8になりました。
Versionが更新されるたびにFAQの項目は増えてきました。
Version2:Version1の9項目から21項目へ大幅に増加
Version3:21項目から32項目にアップ
Version4:変更なし
Version5:32項目から33項目にアップ
Version6: 変更無し
Version7: 33項目から34項目にアップ
Version8: 34項目から45項目にアップ
近年暗号資産の税金論点で問題視されるのが法人の場合の“未実現利益課税問題”です。
それに一部対応する形でVersion8で登場するのが特定自己発行暗号資産の概念です。
しかし対象が自己発行の暗号資産という点で問題解決になってません。
2024年には「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」という概念の登場によりビットコインなどの自己発行以外の暗号資産にも原価法採用への道が開けますが、ロックアップや暗号資産交換業者への通知を義務付けるなど、謎の要件が続きます。
理論的な議論ではなく場当たりな短絡的な対応が資産流出・紛失などの本末転倒な結果に結びつかないことを願います。
以下はVersion3のときのSummaryを転記しています。
Version3の以下の変更は個人的にはとても心配です。
- 個人について原則的な原価計算方法が移動平均法から総平均法に変更された(関連するFAQ1-3)
- 法人について期末に保有する仮想通貨と仮想通貨の証拠金取引の未決済ポジションの未実現損益が課税対象になった(関連するFAQ22と25)
移動平均法から総平均法への変更は金額への影響度合いというよりは税務処理が理論的根拠無く、いとも簡単に変えられてしまう点に困惑しています。
法人の期末時価評価は仮想通貨を使った事業を行おうとする会社にとっては重大な問題になります。
しかしVersion 7では結果的にクリプトユーザーにとってもプラスとなり得る変更がありました。
問2−2における事業所得の区分要件の明文化です。
要件が明文化されているので見解の相違となるリスクも限りなく少なく、要件を満たす人にとっては初めての”改良”と言えるかもしれません。
下記はVersion1と2の時のまとめを引用し、一部加筆しています。
ビットコインは今までになかった全く新しい性質を持った資産です。
そんなビットコインを分かりやすくするために既存の物がアナロジーとして使われます。
アナロジーは物事を分かりやすくするという効果はあるものの、必ずしも実態を正確に表しているとは限りません。
ビットコインは「コイン」と名称にありますが、実際にコインが存在するわけではなく、発行者も管理者もいません。
ビットコインを「送金」「交換」すると言いますが、何かが物理的に移動することはありません。
ビットコインを「ウォレット」に送ると言いますが、ウォレット自体にビットコインが存在するわけではありません。
アナロジーをそのまま会計や税金計算に当てはめてしまうと実態を表さない結果になるリスクがあります。
今回のFAQで言えば、特に以下の項目は実態を表すように再考すべきと考えます:
- 仮想通貨の原価計算方法は実態を表すものであれば認める
- 仮想通貨同士の交換を行った場合 => 法定通貨への交換時に課税対象とする
- 仮想通貨の分裂(分岐)により仮想通貨を取得した場合 => 法定通貨への交換時に課税対象とする
- 仮想通貨をマイニングにより取得した場合=> 法定通貨への交換時に課税対象とする
- 仮想通貨の所得区分 =>原則雑所得ではなく原則譲渡所得
- 未実現利益は課税対象としない
法定通貨への交換時に課税対象とすることは実態をより正確に表すとともに以下の効果があります:
- 課税所得計算の簡素化(納税者・当局、両方にとってメリット)
- 税金の捕捉率・捕捉効率の向上(当局にとってメリット)
- 新技術の研究・応用・改善の活発化(国全体にとってメリット)