国税庁が仮想通貨に関する税務上の取扱いについてFAQ(Ver2)を公表

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Author: Kensaku Kimura
投稿日: 2018-12-09
更新日: 2023-01-24

2017年のFAQに比べて内容がより広範囲に

2018年11月21日に国税庁は「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。

このようなまとまったFAQ形式で仮想通貨の税金計算について国税庁が公式に見解を示すことは昨年に引き続き、今年で二回目です。

今回の記事では2017年12月1日に公表されたVersion1のFAQと今回のVersion2とで変更されたところを見ていこうと思います。

一つ一つのFAQの内容を見ていく前に表紙と目次で大きく変わったところが3つあります。

  1. 表紙記載の当局の関与部署が増えた
  2. 題名が変わった
  3. FAQの項目が増えた

 

表紙記載の当局の関与部署が増えた

昨年と今年のFAQの表紙に記載されている国税庁の部署の比較です:

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Version1は個人課税課の1部署だったのがVersion2では6部署に増えています。

Version1は個人の所得税をメインにしていたのがVersion2ではその範囲が広がったと言えます。

 

題名が変わった

FAQの対象が個人の所得税から広がったことを受けてFAQの題名も変わっています。

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FAQの項目が増えた

FAQの対象の広がりを受けてFAQの項目もVersion1の9項目からVersion2では21項目に増えています。

また、Version2ではFAQの項目が分野別に分けられました。

分野として登場したのは次の6つです:

  1. 所得税・法人税共通関係
  2. 所得税関係
  3. 相続税・贈与税関係
  4. 源泉所得税関係
  5. 消費税関係
  6. 法定調書関係

以上を踏まえてVersion2のFAQで取り上げられている項目を紹介します:

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このFAQが(情報)となっているのはこの文書が法律や法令ではなく、あくまでも国税庁の見解だからです。

法律ではないものの国税局はこの文書の内容をもとに税金計算の妥当性を検証するわけです。

実務ではこのFAQに基づいて様々な会計、税務処理がなされるはずです。

この点はVer1から変わらずです。

この記事ではFAQの内容を一つ一つ見ていくとともに、Version1からの変更点を中心に気になる点があればコメントを入れていきます。

コメントは青文字で付し、それ以外はFAQの原文となります。

なお、オフィシャルの文書は下記のリンクで入手できます:

仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)(平成30年11月21日)(PDF/430KB)

 

所得税・法人税共通関係

1 仮想通貨を売却した場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)
3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。

5月20日0.2ビットコインを110,000円で売却した。

(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。

110,000円 [売却価額] – (2,000,000円 ÷ 4 ビットコイン) [1ビットコイン当たりの取得価額] × 0.2 ビットコイン [売却した数量] = 10,000円 [所得金額](注)

(注) その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その仮想通貨の売却価額と売却した仮想通貨の取得価額との差額となります。

【関係法令等】
所法36、37
法法22、22の2

 

コメント:

仮想通貨をFiat(法定通貨)に換金した際の益の計算方法に関しては特にコメントはありません。(Version1の時と同じコメント)

細かい用語の変更(例:BTC→ビットコイン)はありますが、一番大きい変更は支払手数料の取扱いについてです。

Version1では取引の際の支払手数料を取得原価に含めていました。

しかし、Version2では「売買手数料については勘案しない」としています。
仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「4 仮想通貨の取得価額」で取り上げられています。

 

2 仮想通貨で商品を購入した場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)
3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。

9月28日 162,000円(消費税等込)の商品を購入する際の決済に0.3ビットコインを支払った。なお、取引時における交換レートは1ビットコイン=540,000円であった。

(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。

162,000円 [商品価額(注2)] – (2,000,000円 ÷ 4ビットコイン) [1ビットコイン当たりの取得価額] × 0.3ビットコイン [支払った数量] = 12,000円(注1)[所得金額]

(注)
その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

上記の「商品価額」とは、その商品を日本円で購入する場合の支払総額(消費税等込)をいいます。

保有する仮想通貨で商品を購入した場合、保有する仮想通貨を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その仮想通貨の譲渡価額と譲渡した仮想通貨の取得価額との差額となります。

【関係法令等】
所法36、37
法法22、22の2

 

コメント:

益の計算方法に関しては特にコメントはありません。

が、「1 仮想通貨を売却した場合」と同様、売買手数料については勘案していないとVersion1から変更されています。

Version1の例では支払手数料込の数量が例に使われています。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

しかし、ビットコインを日常的に使う場合、いちいち支払い時に損益計算をするのは現実的ではありません。

外貨であっても同じ取扱になりますが、海外旅行で使った外貨の為替差益を都度計算して申告している人は少ないでしょう。

一定金額以下であれば所得計算から除外できるようなde minimisルールが必要と考えます。

 

3 仮想通貨同士の交換を行った場合

次の仮想通貨取引を行った場合の所得の計算方法を教えてください。

(例)
3月9日 2,000,000円で4ビットコイン(A)を購入した。

11月2日 10リップル(B)を購入する際の決済に1ビットコインを支払った。なお、取引時における交換レートは1リップル=60,000円であった。

(注) 上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。

 

(60,000円 × 10リップル) [Bの購入価額(注2)] – (2,000,000円 ÷ 4ビットコイン) [Aの1単位当たりの取得価額] × 1ビットコイン [支払った数量] = 100,000円(注1) [所得金額]

(注)
その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

上記の「Bの購入価額」とは、この取引と同じ時点で同じ数量の仮想通貨Bを日本円で購入する場合の支払総額をいいます。

保有する仮想通貨を他の仮想通貨Bと交換した場合、仮想通貨Aで仮想通貨Bを購入したことになりますので、「2 仮想通貨で商品を購入した場合」と同様に、所得金額を計算する必要があります。

【関係法令等】
所法36、37
法法22、22の2

 

コメント:

ここでも売買手数料については「勘案しない」と変更されています。

仮想通貨取得の際に発生する手数料の取扱いは「4 仮想通貨の取得価額」で取り上げられています。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

Crypto-to-cryptoの交換に関する益に計算方法については特にコメントはありません。

世界でもCrypto-to-cryptoの交換はTaxable eventとして捉えている国がほとんどだと思います。

しかし、次の2点からもう少し工夫があればよかったと思ってしまいます。

まず、Crypto-to-cryptoの交換の都度、損益計算を求めるのは多くの場合に非現実的もしくは困難である点です。

上場株式やFXの場合だと取引が一つの業者で完結します。

売買損益の計算は簡単でほとんどの場合、業者の管理画面で簡単に確認できます。

複数の口座を使用している場合も基本的にはそれぞれの業者の損益を合計することで全体の損益を確定することができます。

しかし仮想通貨の場合は取引所間で仮想通貨の送信を自由にできます。

ある取引所で購入した仮想通貨を他の取引所に送信した場合、送信先の取引所はその仮想通貨の取得原価を知りません。

取得原価の情報がないため、損益計算が当然できません。

したがって、複数の取引所を使っている場合は単純に取引所ごとの損益データを合算しても全体の損益を確定することはできません。

取引が少ない場合や使用している取引所が少ない場合はスプレッドシートを使って頑張って損益を計算できます。

取引数や使用する取引所が多くなると損益計算はすぐに非現実的あるいは困難になります。

2点目の理由はもう少し概念的です。

ある資産からある資産に交換する場合、一度円を経由すると考えます。

そこで交換する資産の間に価格差があると損益が発生します。

上場株の取引で考えると分かりやすいです。

保有しているApple株を売却し、Google株を購入したとします。

Apple株からGoogle株には直接交換できず、一度Apple株を売却してお金を受け取り(ここで損益を認識)、そのお金でGoogle株を買ったと考えます。

しかし、仮想通貨の場合は直接 BTCとETHを交換できます。

一旦損益を確定させるという意志は多くの場合ユーザーにはありません。

これは基本的な場合ですが、仮想通貨は金融商品や法定通貨と違い、保有者に何かしらの権利を与えるものではありません。

言ってしまえば仮想通貨を保有するということはPrivate Keyというランダムな文字列を保有することです。

仮想通貨と仮想通貨を交換するということはある文字列とある文字列を交換しているにすぎません。

ミカンを持ってる人とリンゴを持ってる人が持ってる果物を交換するイメージに近いです。

その場合も税法を厳密に適用すれば課税対象のなるのかもしれませんが、起こっている事象を技術的に考えると個人的にはすっきりしない部分が残ります。

実務的な側面、概念的な側面、そして税金の補足、納税者への負担の観点からも、Fiatに交換した時に課税対象とするのが適当ではないかと思います。

 

4 仮想通貨の取得価額

国内の仮想通貨交換業者から、ビットコインを購入しましたが、その際に手数料を支払い ました。この場合の購入した仮想通貨の取得価額はどうなりますか。

(例)
9月1日 4ビットコインを2,000,000円で購入した。購入時に手数料540円(消費税
等込)を支払った。

 

上記(例)の場合の仮想通貨の取得価額は、2,000,540円になります。

購入した仮想通貨の取得価額は、その支払対価に手数料等の付随費用を加算した額となります。

 

【参考】消費税の課税事業者(税抜経理方式を適用)である法人が、上記(例)の取引を行う場合の購入した仮想通貨の取得価額

上記(例)の場合の仮想通貨の取得価額は2,000,500円(注1,2)になります。

(注)
1 消費税法では、仮想通貨などの支払手段等の譲渡は非課税とされていますが、仮想通貨交換業者に対して取引の仲介料として支払う手数料は、仲介に係る役務の提供の対価に該当し、消費税の課税対象になります。

2 本件取引を行う者が消費税法上の課税事業者に該当し、かつ、税抜経理方式を適用している場合には、手数料に含まれる消費税等の額(40円=540円×8/108)と課税取引の対価の額(500円=540円- 40円)を区分し、課税取引の対価の額を仮想通貨の支払対価の額に加算した金額(2,000,500円= 2,000,000円+500円)が購入した仮想通貨の取得価額となります。

【関係法令等】
所法36、37
法法22
消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて(平成元年3月1日付直法2-1)1~3

 

コメント:

Version1では移動平均法と総平均法による取得価額の計算例に関する情報が提供されていました。

Version2では仮想通貨を取得した際の手数料の取扱いに論点が変わりました。

仮想通貨の取得の際に発生した手数料を取得価額に含める取扱いはVersion1から変わっていません。

情報として新たに加わったのは消費税の処理についてです。

手数料から消費税部分を抜き出して、取得価額は税抜の金額で計算することになりますが、使用する取引所のデータが綺麗でないとかなり複雑になりそうです。

実際に取得原価の計算をしていくと手数料の処理は複雑だということにすぐに気づきます。

手数料は取引所にとって様々な形式で取引データに表示されます:

(例)

  • 注文量とは別に発生するパターン
  • 注文量から控除されるパターン
  • 手数料が基軸通貨で発生するパターン
  • 取引通貨で発生するパターン
  • マイナス手数料(リベート)で発生するパターン
  • 取引所のトークンでリワードとして発生するパターン

これを一つ一つ整理してロジックを組んで計算するのはとても大変です。

 

5 仮想通貨の分裂(分岐)により仮想通貨を取得した場合

仮想通貨の分裂(分岐)に伴い、新たに誕生した仮想通貨を取得しましたが、この取得により、所得税又は法人税の課税対象となる所得は生じますか。

 

仮想通貨の分裂(分岐)により新たに誕生した仮想通貨を取得した場合、課税対象となる所得は生じません。

所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。

しかしながら、ご質問の仮想通貨の分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨については、分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。

したがって、その取得時点では所得が生じず、その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。

なお、その場合の取得価額は0円となります。

​​法人税についても同様に、分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨の取得価額は0円となり、分裂(分岐)に伴い新たな仮想通貨を取得したことにより所得の金額の計算上益金の額に算入すべき収益の額はないものと考えられます。

【関係法令等】
所法 36
法法 22

 

コメント:

Version2で法人税に関する記載が追加されたものの、内容自体はVersion1と同じです。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

FAQでは、分岐時点では相場が存在しておらず、価値を有していない点をもって、取得価額は0円とされ、結果的に取得時点では所得が生じていないとしています。

しかし、その前提として資産を取得した場合は、その取得時点における時価を基に所得金額を計算するとしています。

この前提を仮想通貨にそのまま当てはめてしまうのは危険です。

ブロックチェーンの分岐はその仕組み上、それなりの頻度で起きます。

ブロックが短時間で連続して採掘された場合などです。

上記の例では、最終的にネットワークのノードの多数が正当と認めたチェーンが存続し、分岐したチェーンは破棄されます。

したがって基本的には新しいコインが発生し、価値を持つというケースには発展しません。

しかし、ブロックチェーンの多くはオープンソースで誰でも自由に分岐できます。

納税者の知らないところで分岐が発生し、知らずに価値を持つ仮想通貨を取得するケースなどが考えられます。

また、新しい仮想通貨の発生時点でその仮想通貨自体の取引相場が存在していなかったとしても、その仮想通貨のデリバティブ市場で価格が形成されているケースも考えられます。

これらの問題点もFAQ3に対するコメントで指摘したとおり、Fiatへ交換したタイミングで課税対象とすることで所得計算の簡素化、納税者の保護につながると考えます。

 

6 仮想通貨をマイニングにより取得した場合

仮想通貨をマイニングにより取得した場合、その所得は所得税又は法人税の課税対象となりますか。

 

仮想通貨をマイニングにより取得した場合、その所得は所得税又は法人税の課税対象となります。

所得税については、いわゆる「マイニング」(採掘)等により仮想通貨を取得した場合、その所得は、事業所得又は雑所得として課税対象となります。

この場合、マイニング等により取得した仮想通貨の取得価額に相当する金額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額に参入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費に参入されることになります。

法人税については、マイニング等により仮想通貨を取得した場合、その取得価額に相当する金額の収益(時価)については所得の金額の計算上益金の額に算入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上損金の額に算入されることになります。

なお、マイニング等により取得した仮想通貨を売却又は使用した場合の所得計算における取得価額は、仮想通貨をマイニング等により取得した時点での時価となります。

【関係法令等】
所法27、35、36、37
法法22、22の2

 

コメント:

法人税の取扱いが追加されただけでVersion1から大きな変更はありません。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

一見妥当に見える結論ですが、少し考えると違和感があります。

マイニングというサービスを提供した対価としてビットコイン(仮想通貨)を受け取っている、そのように解釈すると受け取ったビットコインは所得になります。

しかし、マイニング自体はサービスではありませんし、サービスの提供先となり得る人や会社のような組織も存在しません。

ビットコインのマイニングとはコンピューターを使ってランダムな数字を生成し続けることを言います。

これがなぜマイニング(採掘)と言われるかというと、ゴールドのマイニングとの類似性があり、アナロジーとして分かりやすいからです。

ゴールドの採掘会社も石油の採掘会社もゴールドや石油の採掘自体を事業としているわけではありません。

採掘してそれを売却することを事業としているわけです。

課税所得も採掘時ではなく、売却時に認識します。

ビットコインのマイニングをコモディティのマイニングと同様に考えるのであれば、同じように採掘時ではなく、売却時に課税所得とするのが妥当と考えました。

 

所得税関係

7 仮想通貨の所得区分

仮想通貨取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。

 

仮想通貨取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。

仮想通貨取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、

その仮想通貨取引自体が事業と認められる場合(注1)

その仮想通貨取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(注2) を除き、雑所得に区分されます。

(注)
1 「仮想通貨取引自体が事業と認められる場合」とは、例えば、仮想通貨取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合などが該当し、この場合は事業所得に区分されます。

2 「仮想通貨取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」とは、例えば、事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として使用した場合が該当します。

【関係法令等】
所法27、35、36

 

コメント:

書きぶりはVersion1から変わっているものの、内容はほぼ変わっていません。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」雑所得とされているので、客観的に立証できるのであれば、他の所得(事業所得や雑所得)として申告できるところがポイントだと思います。

一方で「原則」というワードは実務上はハードルになるはずです。

 

8 仮想通貨の必要経費

仮想通貨の売却による所得を申告する場合、どのような支出が必要経費となりますか。

 

仮想通貨の売却による所得の計算上、必要経費となるものには、例えば次の費用があります。

  • 売却した仮想通貨の取得価額
  • 売却の際に支払った手数料

このほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。

仮想通貨の売却による所得は、「7 仮想通貨の所得区分」のとおり、原則として雑所得に区分されますので、その所得金額は、総収入金額から必要経費を控除することにより算出します。

この必要経費に算入できる金額は、①総収入金額に対応する売上原価その他その収入金額を得るため直接に要した費用の額及び②その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額です。

なお、必要経費については、次の事項に注意してください。

  1. パソコンなど、使用可能期間が1年以上で、かつ、一定金額を超える資産については、その年に一括して必要経費に計上するのではなく、使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費(こうした費用を「減価償却費」といいます。)とする必要があります。
  2. 個人の業務には、一つの支出が家事上と業務上の両方に関わりがある費用(こうした費用を「家事関連費」といいます。)については、取引の記録に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合に限り、その区分した金額を必要経費に算入することができます。

【関係法令等】
所法37、45
所令 96

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

どんな費用が必要経費に算入できるかについては判断を伴います。

とりあえず領収書はとっておいて税理士に相談するのがいいと思います。

 

9 年間取引報告書を活用した仮想通貨の所得金額の計算

仮想通貨交換業者A・Bから、次の年間取引報告書が送付されました。この年間取引報告
書を活用した仮想通貨の所得金額の計算方法を教えてください。

年間取引報告書

 

年間取引報告書の太枠の赤字部分及び青字部分を、国税庁ホームページに掲載している「仮想通貨の計算書(総平均法用)」に入力すれば、簡便に所得金額を計算することができます。

上記の場合の仮想通貨の所得金額は、332,000 円となります。

仮想通貨の計算書(総平均法用)の計算例は次ページをご参照ください。

仮想通貨の計算書

【関係法令等】

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

使用する取引所が少ない人は所得金額の計算がラクになるかもしれません。

海外の取引所は当然このような報告書は提供してくれませんので、海外の取引所の利用が多い人は役に立たないと思います。

また、後述するように、移動平均法の方が通常は有利になるため、移動平均法を使用する人にはこの報告書はあまり役に立ちません。

 

10 年間取引報告書の記載内容

仮想通貨交換業者から年間取引報告書が送付されましたが、この年間取引報告書には、何が記載されているのですか。

 

年間取引報告書の各欄には、次の事項が記載されています。

  1. 年始数量 :その年の1月1日現在の仮想通貨の保有数量
  2. 年中購入数量:その年の仮想通貨の購入数量
  3. 年中購入金額:その年の仮想通貨の購入金額
  4. 年中売却数量:その年の仮想通貨の売却数量
  5. 年中売却金額:その年の仮想通貨の売却金額
  6. 移入数量:その年に購入以外で口座に受け入れた仮想通貨の数量
  7. 移出数量:その年に売却以外で口座から払い出した仮想通貨の数量
  8. 年末数量:その年の12月31日現在の仮想通貨の保有数量
  9. 損益合計:その年の仮想通貨の証拠金取引の損益の合計額
  10. 支払手数料:その年に仮想通貨交換業者に支払った支払手数料の額

※ 仮想通貨の売却・購入などを外貨で行った場合には、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額に基づき、各事項が記載されています。

なお、次の取引をした場合における各欄の表示内容は、次のとおりです。

1 仮想通貨交換業者から無償で仮想通貨の交付を受けた場合
「年中売却数量」: –
「年中売却金額」:交付を受けた仮想通貨の価額(時価)
「年中購入数量」:交付を受けた仮想通貨の数量
「年中購入金額」:交付を受けた仮想通貨の価額(時価)

2 仮想通貨で決済を行った場合
・ 仮想通貨交換業者で円転して決済を行った場合
「年中売却数量」:円転した仮想通貨の数量
「年中売却価額」:円転した仮想通貨の価額(時価)
・ 仮想通貨そのもので決済を行った場合
「移出数量」:決済で使用した仮想通貨の数量

3 仮想通貨交換業者でA仮想通貨とB仮想通貨を交換した場合
A仮想通貨の「年中売却数量」:交換したA仮想通貨の数量
A仮想通貨の「年中売却金額」:取得したB仮想通貨の価額(時価)
B仮想通貨の「年中購入数量」:取得したB仮想通貨の数量
B仮想通貨の「年中購入金額」:取得したB仮想通貨の価額(時価)

年間取引報告書の様式例は、次ページに掲載しています(仮想通貨交換業者により、様式が 異なる場合があります。)。

【関係法令等】

年間取引報告書の様式例

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

特にコメントはありません。

 

11 仮想通貨の取得価額の計算方法の変更

昨年の申告では、売却した仮想通貨の取得価額を移動平均法で計算していましたが、計算
が困難なため、本年の申告から総平均法に変更することはできますか。

 

今後の申告において「総平均法」を継続することを前提に、売却した仮想通貨の取得価額の 計算方法を変更することができます。

売却した仮想通貨の取得価額は、「移動平均法」で計算するのが相当ですが、継続して適用 することを要件に「総平均法」で計算しても差し支えないこととしています。

したがって、売却した仮想通貨の取得価額を「移動平均法」で計算している方は、「総平均 法」に変更することができます。

なお、ご質問のように、「移動平均法」から「総平均法」に変更する場合は、本年の売却した 仮想通貨の取得価額の計算における「年始の仮想通貨の数量・取得価額」は、「移動平均法で 計算した前年末の仮想通貨の数量・取得価額」を使用することになります。

 

【関係法令等】

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

以下はVersion1からのコメントです。

FAQでは移動平均法と総平均法(継続適用が条件)が認められており、移動平均法が「相当」とされています。

しかし、原価の計算方法には移動平均法と総平均法以外にも相当とされるものはあります。

先入先出法、個別法などがそれです。

アメリカでは仮想通貨の取得原価の計算方法としては先入先出法がベースです。

取引記録の整備や取引の対象となった仮想通貨自体を特定できることを条件に個別法も認められています。

ビットコインなどUTXO (Unspent Transaction Output) をベースにした仮想通貨は取引の対象となった仮想通貨を個別に特定することができます。(Ethereumはアカウントベースであり、UTXOはなく、取引の対象となったETHを個別に特定することはできません)

取引の対象となった資産を個別に特定できる以上、個別法が最も正確に原価を表し、原価計算方法として最も相当する、と言えるはずです。

ビットコインは今までになかった全く新しい性質を持った資産です。

既存の資産に対する枠組みをそのまま当てはめるのではなく、今までの資産になかった性質を踏まえて取引の実態を表す処理を議論するのがいいと思います。

それ以外で気になった点としては「取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。」とされている点です。

原価が上がるとその分利益は少なく計算されるので端数は切り上げた方が有利という結論になります。

移動平均か総平均のどちらが有利かはケースバイケースです。

結果が明確な場合を除き、端数切上げのことを考えると移動平均をそのまま採用するのが良さそうです。

 

12 仮想通貨の購入価額や売却価額が分からない場合

本年中に仮想通貨取引を行いましたが、取引履歴を残していないため、仮想通貨の購入価
額や売却価額が分かりません。これらの価額を確認する方法はありますか。

 

次の区分に応じて仮想通貨取引の購入価額や売却価額を確認することができます。

1 国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨取引

平成 30 年1月1日以後の仮想通貨取引については、国税庁から仮想通貨交換業者に対し
て、次の事項などを記載した「年間取引報告書」の交付をお願いしています。

  • 年中購入数量:その年の仮想通貨の購入数量
  • 年中購入金額:その年の仮想通貨の購入金額
  • 年中売却数量:その年の仮想通貨の売却数量
  • 年中売却金額:その年の仮想通貨の売却金額

お手元に年間取引報告書がない場合は、仮想通貨交換業者に年間取引報告書の(再)交付
を依頼してください。

(注) 平成 29 年以前は、年間取引報告書が交付されない場合があります。その場合は下記2により、ご自身で仮想通貨の購入価額や売却価額を確認してください。

2 上記1以外の仮想通貨取引(国外の仮想通貨交換業者・個人間取引) 個々の仮想通貨の購入価額や売却価額について、例えば次の方法で確認してください。

  • 仮想通貨を購入した際に利用した銀行口座の出金状況や、仮想通貨を売却した際に利用 した銀行口座の入金状況から、仮想通貨の購入価額や売却価額を確認する。
  • 仮想通貨取引の履歴及び仮想通貨交換業者が公表する取引相場(注)を利用して、仮想通
    貨の購入価額や売却価額を確認する。

(注) 個人間取引の場合は、あなたが主として利用する仮想通貨交換業者の取引相場を利用してくださ い。確定申告書を提出した後に、正しい金額が判明した場合には、確定申告の内容の訂正(修正申告 又は更正の請求)を行ってください。

 

【関係法令等】

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

特にコメントはありません。

 

13 仮想通貨取引で損失が生じた場合の取扱い

仮想通貨取引による所得を計算したところ、損失が生じました。この損失を給与所得などの他の所得から差し引く(通算する)ことができますか。

 

雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。

所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じた損失に限られます。雑所得については、これらの所得に該当しませんので、雑所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても、他の所得と通算することはできません。

【関係法令等】
所法69

 

コメント:

Version1と内容はほとんど同じです。

雑所得では損益通算できませんが、事業所得や譲渡所得に該当すれば損益通算できる場合があります。

 

14 仮想通貨の証拠金取引

仮想通貨の証拠金取引については、外国為替証拠金取引(いわゆるFX)と同様に申告分離課税制度の対象となりますか。

 

仮想通貨の証拠金取引は、申告分離課税の対象とはなりません。

仮想通貨の証拠金取引による所得については、申告分離課税の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります。

租税特別措置法上、申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の対象は、金融 商品取引法等に基づき行われる1商品先物取引等、2金融商品先物取引等、3カバードワラン トの取得とされています。

外国為替証拠金取引(いわゆるFX)は、金融商品先物取引等に該当しますので、申告分離課税の対象となります。

一方、仮想通貨の証拠金取引は、これらのいずれの取引にも該当しませんので、申告分離課 税の適用はなく、その取引により得た所得については、総合課税により申告していただくことになります。

【関係法令等】
所法35、措法41の14

 

コメント:

Version1と内容はほとんど同じです。

以下のコメントはVersion1のコメントと同じです。

個人的に税の特例には反対の立場です。

税率は低いに越したことはありませんが、一部の人だけを優遇する税の特例は公平とは言えません。

 

相続税・贈与税関係

15 仮想通貨を相続や贈与により取得した場合

仮想通貨を相続や贈与により取得した場合の課税関係はどうなりますか。

 

被相続人等から仮想通貨を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は
贈与税が課税されます。

相続税法では、個人が、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を相続若しくは 遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税の課税対象となることとされています。

仮想通貨については、決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することが できる財産的価値」と規定されていることから、被相続人等から仮想通貨を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されることになります。

【関係法令等】
相法2、2の2
相基通達11の2-1
決済法2⑤

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

処理に関して特にコメントはありません。

しかし、もっと大事なのは万が一の時に備えて準備は入念にしておくことです。

国内の取引所にビットコインを置いていた場合は口座の存在さえ家族が知っていれば引き渡しは無事に済むと思います。

国外の取引所の場合はそう簡単にはいきません。

そして、ビットコインはセルフ・カストディ、自分で管理が原則です。

取引所にビットコインを置いたままにすることは推奨されません。

取引所がHackされた場合はビットコインは戻ってきませんし、実際に取引所は何度もHack、あるいはビットコインを流出しています。

ウォレットの保管場所、使用方法、など、万が一のことを想定して家族に無事にビットコインが渡るよう、対策しておくことが重要です。

 

16 相続や贈与により取得した仮想通貨の評価方法

相続や贈与により取得した仮想通貨の評価方法について教えてください。

 

活発な市場が存在する仮想通貨は、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換 業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。

仮想通貨の評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の 定めのない財産の評価))の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。

この場合、活発な市場が存在する(注1)仮想通貨については、活発な取引が行われることに よって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格(注2、3、4)によって評価します。

なお、活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が
成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し、個別に評価します(注5)。

(注)

  1. 「活発な市場が存在する」場合とは、仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
  2. 「仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格」には、仮想通貨交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含みます。
  3. 仮想通貨交換業者(仮想通貨販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、納税義務者が仮想通貨を仮想通貨交換業者に売却する価格(売却価格)で評価して差し支えありません。
  4. 納税義務者が複数の仮想通貨交換業者で取引を行っている場合には、納税義務者の選択した仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価して差し支えありません。
  5. 例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが考えられます。

【関係法令等】
評価通達4-3、5

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

活発な市場とは十分な数量及び頻度で取引が行われている市場とされていますが、十分なが定義されていないのであまり役に立たない定義になっています。

取引所の取引画面を見ると画面がチカチカ動いていて、活発に取引が行われているように見えます。

しかし、ほとんどは業者(流動性提供者、Liquidity Provider)による取引です。

仮想通貨はまとまった金額を売ろうとすると価格は大きく下がります。

まともな流動性があってまとまった量を市場価格を動かさずにさばけるのはビットコインくらいです。

ある程度の金額規模の仮想通貨を評価する場合はこの流動性ディスカウントを反映できないか、専門家に相談するのがいいと思います。

 

源泉所得税関係

17 仮想通貨による給与等の支払

当社は、従業員からの要望を受け、労働協約で別段の定めを設け、月々の給与等の一部を 取引所で売買可能な仮想通貨で支払うことにしました。この場合の給与に係る所得税の源泉 徴収をどのように行えばよいですか。

(例) 10月10日 従業員の9月分給与について、200,000円を現金で支払い、一部を当社が保有する仮想通貨(給与支給時の取引価格は50,000円)で支払った。

 

従業員の給与の支給額は、現金200,000円と仮想通貨の価額50,000円を合計した250,000円となりますので、250,000円を給与の支給額(月額)として源泉徴収税額を計算することになります。

給与は、金銭で支給されるのが一般的ですが、お尋ねのケースのように、労働協約で別段の 定めを設け、給与の一部を仮想通貨で支給する場合、その仮想通貨による支給分も給与所得の 収入金額に該当します。

したがって、源泉徴収義務者である貴社は、給与の支払の際、仮想通貨の支給分も合わせて 源泉徴収税額の計算を行うことになります。

なお、現金以外の現物給与については、その経済的利益を評価する必要がありますが、仮想 通貨の場合は、その支給時の価額で評価することになります。

【関係法令等】
所法28、36、183

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

給与をビットコインで受け取る場合、法定通貨で決まっている給料を法定通貨でもらう代わりにビットコインでもらうのが一般的だと思います。

しかし、ビットコイン建てで報酬を決めている人も実際にいます。

1時間、0.01BTC、のようにです。

ビットコイン建てで物の価値を測る人が増えるほど、ビットコインは通貨として受け入れられていくようになります。

 

消費税関係

18 仮想通貨を譲渡した場合の消費税

当社は、国内の仮想通貨交換業者を通じて、保有する仮想通貨を譲渡しました。この場合 の消費税の課税関係を教えてください。

 

国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨の譲渡には、消費税は課されません。

消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は非課税とされています。

国内の仮想通 貨交換業者を通じた仮想通貨の譲渡は、この支払手段等の譲渡に該当し、消費税は非課税とな ります。

また、消費税の確定申告を一般課税により行う場合には、仕入控除税額を計算する際、当課 税期間の課税売上高、免税売上高及び非課税売上高を基に課税売上割合を算出することとなりますが、支払手段等に該当する当該仮想通貨の譲渡については、課税売上割合の算出に当たって、非課税売上高に含めて計算する必要はありません。

(参考)

  1. 仮想通貨交換業者に対して仮想通貨の売買に係る仲介料として支払う手数料は、仲介に係る役務の提供の対価として支払うものですので、課税対象になります。 なお、仮想通貨の売買を目的とした購入に係る手数料は、消費税の申告において個別対応方式を採用
    する場合、課税資産の譲渡等以外にのみ要する課税仕入れ(いわゆる非課税売上げに対応する課税仕入れ)に該当することとなります。
  2. 平成29年6月以前に国内において行った仮想通貨の譲渡は、消費税の課税対象となります。なお、消費税の課税事業者に該当する方が、平成29年6月以前に国内において行った仮想通貨の購入に係る課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けるためには、取引の相手方の氏名等一定の事項 が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となりますが、仮想通貨交換業者などの媒介者を介して行われる仮想通貨の購入に関し、取引の相手方又は媒介者から請求書等の交付を受けられないなど、やむを得ない理由がある場合には、帳簿にその旨と媒介者の氏名等を記載して保存することとなります。

【関係法令等】
消法6①、30、別表1二
消令9④、49
決済法2⑤

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

仮想通貨の譲渡が消費税の対象にならないのは本当に良かったと思います。

金(ゴールド)の譲渡には消費税がかかります。

その分日本の価格と海外の市場価格と差が生じます。

海外で金を買って日本で売れば消費税分の利益を得ることができます。

金の場合は日本に持ち込む際に税関で課税されますが、仮想通貨はボーダーレスです。

海外との価格差がどのような結果を生むかは分かりませんが、たとえ短期的だったとしても自然な価格形成を阻害する可能性がある要因が減ったのはいいことだと思います。

また、ビットコインは未来のお金になろうとしています。

譲渡の際に消費税がかかっていたのでは取引記録の維持が複雑になりすぎて決済手段として機能しません。

その点においても非課税として整理されたのはいいことだと思います。

 

法定調書関係

19 財産債務調書への記載の要否

国内外の仮想通貨取引所に仮想通貨を保有しています。仮想通貨は財産債務調書の対象に
なりますか。

 

財産債務調書の対象になります。

決済法第2条第5項に規定する仮想通貨などの財産的価値のある仮想通貨を 12 月 31 日において保有している場合、財産債務調書への記載が必要になります。

仮想通貨は、財産の区分のうち、「その他の財産」に該当しますので、財産債務調書には、仮想通貨の種類別(ビットコイン等)、用途別及び所在別(注)に記載してください。

仮想通貨を預けている仮想通貨取引所の所在が国内か国外かについては、財産債務調書への記載の要否に影響はありません。

(注) 仮想通貨の所在については、国外送金等調書規則第12条第3項第6号及び第15条第2項の規定により、その財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在となります。

【関係法令等】
国外送金等調書法6の2①
国外送金等調書令 12 の2⑥
国外送金等調書規則 12③六、15①②、
別表3 決済法2⑤

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

取引所にはなるべくビットコインを置いたままにしないほうがいいという点以外には特にコメントはありません。

なお、財産債務調書の提出要件は以下のとおりです。

財産債務調書の提出が必要となる方は、

所得税等の確定申告書を提出しなければならない方

または

所得税の還付申告書(その年分の所得税の額の合計額が配当控除額および年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える場合におけるその還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、

次の1および2のいずれにも該当する方です。

1 その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超えること

各種所得金額の合計額は、申告分離課税の所得がある場合には、それらの特別控除後の所得金額の合計額を加算した金額です。ただし、(1)純損失や雑損失の繰越控除、(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除、(3)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除、(4)上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、(5)特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除、(6)先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けている場合は、その適用後の金額をいいます。

2 その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産またはその価額の合計額が1億円以上である国外転出特例財産を有すること(相続開始年に相続または遺贈により取得した財産については、合計額の判定から除くことができます。)

ここでいう「財産の価額」とは財産の価額の総額をいい、財産の価額から債務の金額を差し引いた金額ではありません。

また、「国外転出特例対象財産」とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等ならびに同条第2項に規定する未決済信用取引等および同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいいます。

(注) 令和5年分以後の財産債務調書については、上記のほか、「その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者」の方が対象となります。

タックスアンサーへのリンク

 

20 財産債務調書への仮想通貨の価額の記載方法

仮想通貨の価額は、どのように記載すればよいですか。

 

仮想通貨の価額については、活発な市場が存在する場合には、財産債務調書を提出される方が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格を時価として記載します。また、時価の算定が困難な場合には、その年の12月31日における仮想通貨の状況に応じ、その仮想通貨の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額を見積価額として記載します。

活発な市場が存在する(注1)仮想通貨については、活発な取引が行われることによって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、財産債務調書を提出される方が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格(注2、3、4)を時価として記載します。

(注)

  1. 「活発な市場が存在する」場合とは、仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
  2. 「仮想通貨交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格」には、仮想通貨交換業者が財産債務調書を提出される方の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含みます。
  3. 仮想通貨交換業者(仮想通貨販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、財産債務調書を提出される方が仮想通貨を仮想通貨交換業者に売却する価格(売却価格)を記載して差し支えありません。
  4. 財産債務調書を提出される方が複数の仮想通貨交換業者で取引を行っている場合には、財産債務調書を提出される方の選択した仮想通貨交換業者が公表するその年の12月31日における取引価格によって記載して差し支えありません。

また、財産債務調書に記載する財産の価額は、その財産の時価による算定が困難な場合、見積価額を算定し記載しても差し支えありません。

仮想通貨の見積価額は、例えば、次のような方法により算定された価額をいいます。

  1. その年の12月31日における売買実例価額(その年の12月31日における売買実例価額が
    ない場合には、その年の12月31日前の同日に最も近い日におけるその年中の売買実例価額)のうち、適正と認められる売買実例価額
  2. 1による価額がない場合には、その年の翌年1月1日から財産債務調書の提出期限までに その仮想通貨を譲渡した場合における譲渡価額
  3.  1及び2がない場合には、取得価額

【関係法令等】
国外送金等調書法6の2③
国外送金等調書令12の2②
国外送金等調書規則12⑤、15④

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

特にコメントはありません。

 

21 国外財産調書への記載の要否

国外の仮想通貨取引所に仮想通貨を保有しています。仮想通貨は国外財産調書の対象になりますか。

 

国外財産調書の対象にはなりません。

仮想通貨は、国外送金等調書規則第12条第3項第6号の規定により、財産を有する方の住所
(住所を有しない方にあっては、居所)の所在により「国外にある」かどうかを判定する財産に該当します。また、国外財産調書は、居住者の方(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非永住者の方を除きます。)が提出することとされています。
したがって、居住者の方が国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は、「国外にある財産」とはなりませんので、国外財産調書の対象にはなりません。

【関係法令等】
国外送金等調書法5 国外送金等調書令 10⑦
国外送金等調書規則 12③六

 

コメント:

これはVersion2で新規に登場した項目です。

取引所にはなるべくビットコインを置いたままにしないほうがいいという点以外には特にコメントはありません。

なお、国外財産調書の提出義務の詳細は下記のとおりです。

対象者
国外財産調書の提出が必要となる方は、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産(相続開始年に取得した相続国外財産については、その合計額の判定から除くことができます。)を有する「非永住者以外の居住者」である方です。

ここでいう「居住者」および「非永住者」は、所得税法に規定する居住者および非永住者をいい、居住者であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況により判定します。

所得税法に規定する「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、「非永住者」とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

対象物
その年の12月31日において保有する国外財産が対象となります。

国外財産とは、「国外にある財産をいう」とされ、「国外にある」かどうかの判定は、財産の種類ごとに、その年の12月31日の現況で行います。

また、国外財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされており、その邦貨換算は、同日における「外国為替の売買相場」によることとされています。

タックスアンサーへのリンク

 

まとめ

Version2はFAQの項目が9個から21個に大幅に増えました。

しかし、印象としてはVersion1と変化はありません。

下記はVersion1のときのまとめをそのまま引用しています(FAQの項目名称だけVersion2に合わせました)。

ビットコインは今までになかった全く新しい性質を持った資産です。

そんなビットコインを分かりやすくするために既存の物がアナロジーとして使われます。

アナロジーは物事を分かりやすくするという効果はあるものの、必ずしも実態を正確に表しているとは限りません。

ビットコインは「コイン」と名称にありますが、実際にコインが存在するわけではなく、発行者も管理者もいません。

ビットコインを「送金」「交換」すると言いますが、何かが物理的に移動することはありません。

ビットコインを「ウォレット」に送ると言いますが、ウォレット自体にビットコインが存在するわけではありません。

アナロジーをそのまま会計や税金計算に当てはめてしまうと実態を表さない結果になるリスクがあります。

今回のFAQで言えば、特に以下の項目は実態を表すように再考すべきと考えます:

3 仮想通貨同士の交換を行った場合 => 法定通貨への交換時に課税対象とする
5 仮想通貨の分裂(分岐)により仮想通貨を取得した場合 => 法定通貨への交換時に課税対象とする
6 仮想通貨をマイニングにより取得した場合 => 法定通貨への交換時に課税対象とする
7 仮想通貨の所得区分 => 原則雑所得ではなく原則譲渡所得

法定通貨への交換時に課税対象とすることは実態をより正確に表すとともに以下の効果があります:

  • 課税所得計算の簡素化(納税者・当局、両方にとってメリット)
  • 税金の捕捉率・捕捉効率の向上(当局にとってメリット)
  • 新技術の研究・応用・改善の活発化(国全体にとってメリット)

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Kensaku Kimura